そして『Den of Wolves』はただの類似作品に収まらない。10 Chambers独自の哲学と『GTFO』で培った経験が融合し、強盗ゲームの新たな地平を切り開こうとするものとなっている。
ロサンゼルスで開催されたプレスイベントにて、10 Chambersの共同設立者でありAudio & Music Directorを務めるSimon Viklund氏に独占インタビューを敢行。彼が語った内容から、『Den of Wolves』の開発秘話、ゲームデザインの哲学、そして未来への展望を深く掘り下げよう。
ゲーム概要
Den of Wolves: ハイテク強盗が繰り広げられる2097年が舞台
2030年にハッカーがAIを駆使した大規模サイバー攻撃を行い経済は大混乱に陥り、ありとあらゆる虚構と偽情報が世界を戦争へと導いた。
2035年、企業が存続をかけて“Project Hoplon”を実行し、ミッドウェー環礁に都市を作り上げ、そこにいる人間は脳を電脳化しデータシステムとリンクすることでデータ転送・保存が可能となり、世界で唯一安全なミッドウェーで独自の証券取引所が設立。 この都市はミッドウェイシティと呼ばれる。
クラス制なし:仲間と相談して最適な装備を持ち寄れ
今回公開されたトレイラーではアサルトライフルやSMGにショットガンといった銃、そして金庫を破るスパイダー型ドローンや設置シールドなどのガジェットがで出てきたが、実はトレーラーで観た内容以外は筆者も分からない。大まかな骨組みは仕上がっているがまだまだ開発中で、アーリーアクセスまでにどのような変更があるかは不明だ。 そのため現時点での『Den of Wolves』が最終形態ではないことに留意していただきたい。
開発自らが語った内容から読み解く『Den of Wolves』の設計思想
ハードコアから強盗へ:進化の系譜と新たな挑戦
実は10 Chambersは創設メンバー9人中3人が、強盗FPSの代表的作品である『Payday』と『Payday 2』の開発に関わっている。そもそも10 Chambers CEOのUlf Andersson氏と今回のインタビュー相手のViklund氏は、『Payday』シリーズを作ったOverkillの創設者。いわば『Payday』の生みの親なのだ。そんなメンバーが立ち上げた10 Chambersには当然、PaydayのDNAが深く刻み込まれているのである。つまりジャンルとしては先祖返りとも言える。
『Den of Wolves』はかつて自らが生み出した『Payday』への挑戦となる。
「計画」の真価:Payday を超える戦略性
「多くの強盗ゲームではミッション開始後に計画を変更したり、臨機応変に対応することができます。実は私はこの点を『Payday 2』で犯した過ちとも捉えています。 臨機応変に対応できるということは、行き当たりばったりで進んでチームが分散して崩壊するというシーンが多々ありました。 途中参加した場合は何が起きているのか把握するのも困難です。
しかし、『Den of Wolves』では事前に立てた計画が絶対的なルールとなります。開始前に綿密な打ち合わせを行い、全員が納得するまで議論を重ねることが重要です。この計画フェーズこそが『Den of Wolves』のゲームプレイを Payday シリーズから差別化する重要なポイントとなると考えています。」
たとえば全員がステルス重視のゲームプレイで同意した場合、マップの作りがステルス用マップに生まれ変わる。 強行突破ルートだと使えた扉が使えなくなっていたり、ステルスだけアクセスできる金庫があるといったように、事前の打ち合わせがゲーム攻略の鍵を握る。
ちなみに、もしロビーで打ち合わせが破断となった場合に別のロビーに繋がるようになるかも尋ねてみたが、現時点ではまだ開発中なのでどのようなシステムに仕上がるかは断言できないともViklund氏は語った。
コミュニケーションの進化:言語の壁を越える、共闘の未来
さらにミッションの目的や進行状況もリアルタイムで共有されるため、プレイヤーは常に状況を把握しながらプレイできる。ボイスチャットももちろん利用可能だが『Den of Wolves』ではボイスチャットに頼らずとも協力プレイが楽しめるようデザインされている。
近未来都市ミッドウェイシティ:テクノロジーと欲望が交錯する舞台
「ミッドウェイシティは近未来のサイバーパンクとディストピア的な世界観を融合させた独特の雰囲気を持つ都市です。眩いネオンが輝く一方で裏路地では犯罪が蔓延しています。高度なテクノロジーが生活を豊かにする一方で人々の倫理観は崩壊しつつあります。そんなミッドウェイシティのリアルな描写に私たちはこだわりました。」と Viklund氏は語る。
「各地区は、独自の文化、建築様式、そして支配する企業の特色を反映した個性的な景観を有しています。例えば、ハイテク企業が支配する地区は近未来的な高層ビルが立ち並び、最新鋭のセキュリティシステムが張り巡らされています。一方、犯罪組織が暗躍する地区は薄暗い路地裏や怪しげなナイトクラブが密集し、常に危険と隣り合わせです。プレイヤーはこれらの地区を探索しミッションを遂行する中で、ミッドウェイシティの多様な側面に触れその奥深い世界観に没頭していくことになります。」
この設定は単なる舞台背景以上の意味を持つ。『Den of Wolves』ではいわゆるストーリーキャンペーンは存在せず、ミッションをプレイすることで『Den of Wolves』の世界観が物語られる。 さらに、選んだミッションの地区によってミッション内容や入手できるアイテムが変わるなど様々な要素に影響を与える。プレイヤーはゲームをプレイすることでミッドウェイシティの複雑なパワーバランスを理解し、それぞれの地区の特性を活かした戦略を立てる必要があるのだ。
進化を続けるレベルデザイン:戦略と自由度の果てしない融合
「『GTFO』の開発経験から、私たちはプレイヤーに思考と工夫の余地を与えることの重要性を学びました。『Den of Wolves』では、単に敵を倒すだけでなくどのように目標を達成するか、その過程そのものに面白さがあると信じています。そのためレベルデザインには特に力を入れており、プレイヤーの戦略的思考を刺激するような仕掛けを多数用意しています。」と Viklund氏は説明する。
「敵の行動パターンを読み解き弱点を見つける。そして、チームメイトと協力して敵の包囲網を突破する。そのプロセスこそが『Den of Wolves』の醍醐味と言えるでしょう。」
アーリーアクセスという名の共創:コミュニティと共に未来を築く
10 Chambersにとってアーリーアクセスは単なるテストプレイの場ではなく、コミュニティと共にゲームを磨き上げ、共に未来を築くためのかけがえのない機会なのだという。Viklund氏はプレイヤーからのフィードバックこそが『Den of Wolves』を真に完成させるための鍵だと考えている。
10 Chambersはプレイヤーからのフィードバックを効率的に収集・管理するため、専用のプラットフォームやフォーラムを設立する予定だ。開発チームとプレイヤーが直接意見交換できる場を設けることで、双方向のコミュニケーションを促進しゲーム開発に活かしていく。
テンセントとの協力体制:独立性を保ちつつ、世界市場へ
Viklund氏は「テンセントは私たちに開発の自由を与え情熱を注げるゲームを作ることを応援してくれています。」と明言した。
テンセントは10 Chambersの独立性を尊重し開発への介入を最小限に抑えているという。彼らはスタジオのビジョンと創造性を信頼し、『Den of Wolves』の開発を全面的にサポートしているのだ。これは小規模スタジオと大手パブリッシャーの理想的な協業関係と言えるだろう。
「彼らからのサポートはゲームの開発規模を拡大し世界中のプレイヤーに届ける上で大きな力となっています。ローカライズやマーケティング、QAテストなど、様々な面で テンセントのサポートを受けることで、私たちはゲーム開発だけに集中しよりクオリティの高い作品を生み出すことができるのです。」
筆者はこれまでもテンセントと提携した様々なゲームスタジオとインタビューをしてきたが、やはりどこも開発の自由を妨げることはないという印象だ。 テンセントの資金力とグローバルなネットワークは、10 Chambersのような小規模スタジオにとって世界市場への扉を開く重要な鍵となる。
音の魔術師、Viklund氏の創造性:五感を刺激するサウンドスケープ
これらのサウンドはプレイヤーの恐怖心を煽り、没入感を高める効果的な演出として機能していた。
一方で『Den of Wolves』はホラーではなく協力プレイゲームなので全く違うアプローチが必要だろう。 一体どのようなサウンドデザインを目指しているのか? オーディオ&ミュージックディレクターであるViklund氏は誰よりもこの点について把握している。
「『Den of Wolves』の音楽は、プレイヤーに「最高だ!」と感じてもらえるような、高揚感と興奮を掻き立てるサウンドを目指しています。同時に、ゲームの世界観に合わせたSF的な要素も加え独特の雰囲気を作り上げています。近未来的な世界観を表現するために、SF的なサウンドエフェクトやシンセサイザーなども積極的に取り入れています。また、民族楽器の音色を取り入れることで、独特のリズムとグルーヴを生み出しています。」
「この曲は、まさに『Den of Wolves』のテーマソングと言えるでしょう。プレイヤーが強盗に成功し大金を手にした時の高揚感を表現しています。同時に、近未来的な世界観を感じさせる独特の雰囲気も漂わせています。」
Viklund氏はサウンドデザインへの飽くなき探求心とプレイヤー体験を最大限に高めたいという情熱を胸に、『Den of Wolves』のサウンドを作り上げている。彼の創り出す音の世界はプレイヤーの五感を刺激し、ゲーム体験をより深くより豊かなものへと昇華させるだろう。
未来への狼煙:進化を続ける『Den of Wolves』と10 Chambersの挑戦
Viklund氏はライブサービスという形態を通して『Den of Wolves』を進化させ続け、プレイヤーに長く愛される作品に育てていきたいと語る。
「私たちは『Den of Wolves』を単なるゲームではなく、プレイヤーの皆様と共に成長していくプラットフォームとして捉えています。アーリーアクセス、そして正式リリース後も、コミュニティとの対話を大切にし、常に進化を続けるゲームを目指していきます。」
『GTFO』で培ったハードコアなゲーム性と、『Payday』シリーズの系譜を受け継ぐ強盗アクション。そして、テンセントの強力なサポート。『Den of Wolves』はこれらの要素が融合し、新たな強盗ゲーム体験を生み出してくれるかもしれない。
3月にはついにゲームプレイを体験できるメディアツアーをグローバルで行うとのことだ。東京でも開催するとのことなので待望のゲームプレイに期待をよせて3月を待とう。