古代祐三氏による音楽も大きな話題に
1990年(平成2年)12月16日は、スーパーファミコン用ソフト『アクトレイザー』が発売された日。本日で大きな節目である発売30周年を迎えることとなった。
そこで今回は、30周年を記念するスペシャル企画として、いつもの記事にプラスして音楽を担当した古代祐三氏から特別にコメントをいただいている。お見逃しのないように!
『アクトレイザー』は、エニックス(当時)から発売されたスーパーファミコン初期の名作。魔物を倒していく横スクロールのアクションゲームパートと、人々を導き人口を増やして街を発展させていくクリエイションパートに分かれているのが大きな特徴となっている。
本作の発売当時、PC界隈では『ポピュラス』などの神の視点でゲームをする天地創造系のシミュレーションが非常に話題を呼んでいた。そのため、流行に敏感なゲームファンは本作のクリエイションパートにもいち早く注目。筆者もエニックスが作る流行の最先端ゲームがどんな風になっているのか大いに気になっていたことを覚えている。
ゲームを開始したユーザーの多くが真っ先に衝撃を受けたのは、やはり作曲家、古代祐三氏が手掛けた音楽だったのではないだろうか。大げさな表現ではなく、最初に降り立ったフィルモアで耳に飛び込んできた瞬間から、そのサウンドに心を奪われてしまった人も多かったはず。
オーケストラ調で展開する物語の壮大さを感じさせる楽曲は、ファミコンサウンドとは根本から異なるもので革新的。『アクトレイザー』の登場がスーパーファミコン本体の発売から間もない初期だったこともあり、筆者などはファミコンからいきなり本作の音楽を聴いてかなり面食らってしまった記憶がある。いま思えばゲーム音楽が新たなステージへと突入した瞬間だったのかもしれない。もちろん、ゲーム業界内部でも相当話題を呼んでいた模様。有名なエピソードとしては、『ファイナルファンタジー』シリーズでおなじみの作曲家、植松伸夫氏が『ファイナルファンタジーIV』の開発中に『アクトレイザー』の楽曲を聴き、「この音には勝てない」と、すでにできあがっていた曲を再サンプリング。だが、それでも『アクトレイザー』には勝てなかった、と植松氏が語った逸話がある。
前述のクリエイションパートも評価が高く人気の要素。プレイヤーは天界からエンジェルに指示を出し、男女ふたりの人間から人口を増やしていくのだが、自身が神ゆえにスケール感がデカくておもしろい。いかづちを落として森を焼き、道を引いて家や畑を作らせる。発展を妨害する魔物が現れればこれをエンジェルで撃退し、ときには魔物の巣を人間たちの手で封印させたりと、とにかく大忙し。いまで言うところのリアルタイムストラテジーのような感覚で遊べ、難しすぎない難度も好印象だったのではないだろうか。人間たちの繁栄がアクションパートでの強さにも連動している部分もあり、プレイのモチベーションにも繋がるのがよかった。
1993年10月29日には、続編となる『アクトレイザー2 沈黙への聖戦』が発売。こちらはクリエイションモードがない純粋な横スクロールアクションゲームとなっていた。
と、いつもなら記事はここで終わりだが、今回は30周年という、ひとつの大きな区切りを迎えたことを記念するスペシャル企画。作曲家の古代祐三氏のミニインタビューもお届けしよう。
「スーファミの音源はもっと凄いことができるはずだ……と研究に研究を重ねた」(古代祐三氏)
――スーパーファミコン版『アクトレイザー』が発売され、本日2020年12月16日で30周年を迎えました。30周年を迎えて、どういった想いでしょうか?
古代たいへん感慨深いです。『アクトレイザー』はいまでもゲームのみならず、音楽に対するたくさんのよい評価をいただいております。
自分の作品の中でも有名なもののひとつですし、長く聞いていただけるのはありがたいですね。
皆さんがよくご存じの、植松伸夫さんからいただいたコメントのおかげでもありますね(笑)。
――当時、楽曲を作られるにあたって印象に残っている思い出などはありますか?
古代印象に残っていることはたくさんありますね。全部話すと日が暮れてしまうのでとくに印象的なこと……。
スーファミが発売してすぐだったので、当然音楽を作ることは初めてだったのですが、機能を見てとても驚いたんですよね。
それまではFM音源などがゲーム音楽の主流だったのですが、当時最先端のPCM音源が8チャンネルも使える、ということでとても興奮しました。
ところがゲームをいくつか遊んでみて、期待していたほど凄いびっくりするような音を鳴らしているものがなかったんですよ。
スーファミの音源はもっと凄いことができるはずだ……と研究に研究を重ねて、プログラマーの橋本さんとともに提供されていたサウンドドライバーを改良しました。
その結果、メモリの制約を大きく超えたサウンドが実装できることとなり、リアルなオーケストラサウンドが再現できたのです。
楽曲は納期ギリギリまで作り込んでいて、エンディングテーマは最終日の前日から制作して徹夜で完成させたことをとてもよく覚えています。
――いまも『アクトレイザー』の実況などを公開されている方もいます。ファンの方たちに向けてひと言いただけないでしょうか?
古代先日も人気VTuberの戌神ころねさんに取り上げていただき、それで一気に再燃しましたよね。
30年前のゲームですし、初めてゲームを見るファンの方も多かったのではないかと思います。
続編を希望される方もたくさんいらっしゃいましたし、それがかなえられるとまた『アクトレイザー』の新しいファンが増えると思いますので、そうなるように願っております。
インタビューは以上なのだが、続編を希望してくれているファンの方たちの熱意に心打たれたからなのか、30周年を記念してなのか、なんと『フィルモア』のアレンジ楽曲を提供いただいた。これは誰もが衝撃を受けたと思われる最初のステージの楽曲。当時を知る人も、そうでない人もぜひ一度聴いてみてほしい。
それにしてもアレンジ版『フィルモア』はうれしいサプライズだった。ファンの声に古代さんが応えてくれた(?)のだから、もしかしたら30年越しで新たな展開があるかもかもしれない。みんながもっとエールを送ればスクエニさんも応えてくれたり……しないだろうか?