デザインシステムを活用することで、一貫性、効率性、および拡張性を得ることができます。これらを得るためには、デザインシステムが広く使われることが不可欠です。チーム全体を巻き込むには、あなたの内なるマーケターの側面を引き出し、魅力的な導入戦略を練る必要があります。
アートワーク: Cynthia Alfonso氏
もしあなたがデザインシステムチームで働いているなら、システムに対する盛り上がりや賛同を喚起しようとして、いくつかの壁にぶつかったことがあるかと思います。おそらく、数えきれないほどのSlackメッセージを送ったり、プレゼンテーションを企画したり、参加者の少ないトレーニングセッションを開催したりしたことでしょう。数年間デザインシステムに携わってきた人間として、素晴らしいシステムを単に構築するだけでは十分ではないことはよく理解しています。システムの導入を推進するためには、その価値を積極的にマーケティングする必要があります。
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デザインシステム自体を製品として扱い、組織内で成功するために市場参入戦略が必要だと考えたらどうでしょうか? 魅力的なストーリーを作り出し、社内のスペシャリストを選定し、効果を測定するのです。そうすることで、デザインシステムチームは組織がデジタルエクスペリエンスを設計し構築するための不可欠な要素として、自らの仕事を位置付けることができます。このようにマーケティング視点で考えることで、デザインシステムをあると便利なツールから、チームにとって必要不可欠なものへと変えることができます。
構築したものが使われるためには? デザインシステムのマーケティングに関する秘訣
私がFigmaで過ごした時間の中で、システムの導入を促進し、自らの仕事の価値を証明しようとする数十のデザインシステムチームと話しをしてきました。今こそ、マーケターのように考え、戦略を立て、実行することが重要です。ここでは、デザインシステムを重要なものとして位置付けるのに役立つ、いくつかの戦術と戦略を紹介します。それは、新しいローンチや既存の取り組みの再活性化の際にも役立つでしょう。
ターゲットオーディエンスを知る
まず第一に、デザインシステムが対象とするオーディエンスのニーズに応えていることを確かめる必要があります。製品を市場に適合させるためには、探究、コミュニケーション、改良を継続的に行う必要があります。対象とするオーディエンスを細かいところまで理解することが必要です。彼らを駆り立てるもの、新しいツールに関する懸念、そして彼らがシステムの価値を日々の業務においてどのように認識しているか。これは、デザイナーや開発者、意思決定者の立場に立って、日々の実態を見る必要があることを意味します。彼らにとっての課題点だけではなく、隠れた不満や願望まで理解する必要があります。彼らを悩ませるものは何でしょうか? 彼らがまだ気付いていない、彼らにとって必要なものとは何でしょうか?
このようなレベルにまでオーディエンスを理解することは、ユーザー調査が極めて重要な製品開発の初期段階と似ています。専門職のメンバーからリーダーシップチームまで、製品設計とエンジニアリング組織全体の人たちをインタビューしましょう。各レベルの人たちが、戦略を立てるためのユニークな視点を提供してくれるでしょう。デザインシステムに関する詳細について話す前に、既存のプロセス、障害となるもの、目標について話し合いましょう。
キャンペーンストラテジストのように考える
開発者、デザイナー、プロジェクトマネージャー。彼らは皆、同じ言語の微妙に異なる方言を話します。各グループの特定のニーズや懸念に合わせてピッチを作成し、微調整することで、デザインシステムの提案をはっきりと伝えることができます。
- デザイナーに対しては、システムがクリエイティビティを促進し、同時にブランドの一貫性を確保するということを強調しましょう。
- 開発者はおそらく再利用性や効率の向上に関心を持つでしょう。システムがいかに再利用性や標準化を促進し、デザインとコードの間で摩擦のないワークフローを可能にするかを共有しましょう。
- 意思決定者に対しては、市場投入までの速度が加速し、技術的負債が減ることによる投資利益(ROI)を強調しましょう。
これは、ためらいや懸念に対し、あらかじめ対処しておくことを意味します。なぜ一部の人がデザインシステムの採用や投資に懐疑的なのかを理解しましょう。例えば、柔軟性、技術的制約、実装にかかる負荷などの懸念があるのかもしれません。これらの反対意見に対処するメッセージを考え、懐疑心を熱意に変えられるようにしましょう。
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告知と市場への参入
Martin Hardee氏は、大規模な組織における大きなデザインの転換を支援しており、同様のことをしようとする人々にアドバイスを提供しています。
この段階では、それぞれのオーディエンスに最適なチャンネルとフォーマットを慎重に考慮する必要があります。デザインシステムの核となる価値と機能を、興味を引きつけつつ困惑させない形で伝えましょう。必要に応じて、より詳細なリソースへのリンクを提供すしましょう。以下は、メッセージを伝えるためのいくつかの戦略です:
システムの展開を学びの機会と捉えましょう。Spotifyでは、デザインシステムの実装を見直す際に、チームはコラボレーションとフィードバックループを優先しました。ユーザーフィードバックに対する柔軟な対応は、システムの改善だけでなく、信頼を築き、抵抗を減らすのに役立ちます。
- 参加者が楽しく参加できる実践的なワークショップやFigJamセッションを開催する
- 分かりやすくて簡潔なドキュメントを公開する
- 実際の使用事例や利点を強調した短いビデオを作る
- 関連するチーム会議やイベントでプレゼンテーションを企画する
News UKは、カスタムリソースを活用してデザイナーのオンボードやアドボケートの支援を行い、マルチブランドデザインシステムを導入しました。
タイミングが極めて重要です。会社の全体会議や四半期の計画セッションなどのモーメントを利用して、メッセージを強調しましょう。金曜日の午後遅くや休日の前後、会社のイベント、オーディエンスが関わっている製品ローンチの時期などは、オーディエンスが他のことに気を取られている可能性があるため、避けましょう。そして忘れてはいけないことは、認知度を高める作業は、継続的な取り組みであるということです。すぐに成果が見られなくても大丈夫です。企業はローンチだけでなく、継続的にマーケティングのモーメントを作り出すものです。アップデートやエバンジェリズムを行う際も、同じアプローチを利用することができます。
アドボカシーを通じて影響を与える
社内アドボケートや影響力を持つメンバーにシステムの専門家となってもらい、他の人々を団結させることが重要です。システムの潜在的な可能性を認識し、影響力を持つシニアデザイナーや周りから尊敬される開発者、または製品リーダーがこれを担うとよいでしょう。パフォーマンスレビューを通じて彼らが支援を行うことを正式化したり、新しいコンポーネントの作成、トレーニングセッションの開催、教育コンテンツの執筆などの貢献に対してメンバーが表彰されるプログラムを検討してみてください。そうすることで、システムの重要性と影響が強調される文化が育まれるでしょう。
マーケティングにおけるフライホイール効果とは、成長と改善の自己持続サイクルを作る戦略を指します。顧客を巻き込み、満足させるための最初の取り組みが、速度を増すフライホイールのように、さらなる顧客獲得と成長をもたらす勢いを生み出すという考えに基づいています。
社内の専門家チームを力強く支援し、インセンティブを形式化することで、地道なプロモーション、エネーブルメント、そして持続的な導入の力強いフライホイール効果を生み出します。これにより、時間の経過とともにより広いオーディエンスを引きつけ、維持することができます。コミュニティは、システムの現在のユーザーだけでなく新しいユーザーも受け入れるので、フィードバックが継続的な改善を推進するダイナミックな環境を作り出します。
効果測定
デザインシステムの導入、参加、および満足度に関する明確な成果指標を設定しましょう。これは、実際にシステムを使用している人数にスコアをつけるゲームのようなものです。ワークショップに参加する人数や、システムをさらに良くするために協力してくれる人数などを計測しましょう。成功のための明確な目標を設定することが重要です。たとえば、デザインチームや開発チームのほとんどがシステムを定期的に使用すること、トレーニングに参加する人数が多いこと、そして活気あるコミュニティを構築することなどです。追うべき具体的な指標には以下が含まれます:
- デザインシステムを使用しているチームやプロジェクトの数
- 貢献率:コンポーネントを作成または更新する人数
- トレーニング、ワークショップ、コミュニティイベントへの参加者数
- システム利用度:コンポーネントの挿入および切り離し、ライブラリの使用など
大胆でありながらも達成可能な目標を設定しましょう。例えば、プロダクトチームの70%が6ヶ月以内にシステムを使用すること、などです。進捗をモニタリングし、達成した目標を共有しましょう。活性化されたコミュニティは、デザインシステムをますます重要なアセットに進化させるためのフィードバックループを提供してくれるでしょう。
マーケティング視点で考える
デザインシステムは、クリエイティブビジョンを統一し、プロセスをスムーズにし、素晴らしいユーザーエクスペリエンスを効率的に構築する力をチームに与えてくれるものです。しかし、このインパクトを最大限に引き出すためには、デザインシステムチームが「作れば使ってくれる」という考え方の一歩先を行く必要があります。導入を推進するには、マーケティング的思考でプランを立て、実行することが不可欠です。
マーケティングの観点から考えるべき時が来ました。積極的に認知度を高め、アドボカシーを構築し、効果を証明しましょう。そうすることで、デザインシステムを、組織が素晴らしいデジタル体験を創造するための中心的かつ不可欠なものに変革させることができます。これは簡単なことではありませんが、熱心に受け入れられたデザインシステムがもたらしてくれるものは、努力に十分に値するものとなるでしょう。