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レストラン「Alinea」を通してテクノロジーと食について考えてみる。(動画あり)

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    レストラン「Alinea」を通してテクノロジーと食について考えてみる。(動画あり)

    食欲の秋ですね。

    ということで、僕Nick Kokonasとアメリカン・モダン・キュイジーヌの新星Grant Achatzが立ち上げたレストラン「Alinea」について、誕生秘話を含め、いろいろ語りたいと思います。

    Alineaがどんなレストランかというと?動画を観てもらえれば、なんとなく分かるかもしれないけど、食べ物を凍らせたり、材料を蒸留してエッセンスを蒸気にしたり、科学の力を使った「分子料理法」を追及しているレストランなんです。

    まず、僕がAchatzの料理と出会った時のお話をすることにします。少し歴史とは違うかもしれないですけど、1948年22歳のMiles Davisがニューヨークの小さなクラブで演奏していたとします。彼は一部では有名だったけど、まだそこまで有名ではありません。そして、あなたは、大のJazz好きでニューヨーク、パリ、シカゴ、ヘルシンキなどのクラブを回って椅子に座りjazzを聞く。そんな時、今までとは違う色、違うリズム、同じようで同じじゃない、新しいけど、とっつきやすい未来のjazzに出会った。

    例えが分かりずらいかもしれませんが・・・、まさにGrant Achatzの料理を初めて食べた時、僕は同じような種類の感覚を覚えたんです。それからというもの、私は金曜日にランチをしにシカゴ郊外にあるTrioというレストランに行ったんです。そして、翌週の水曜日に夕食をしにTrioを再び訪れ、その後1年で15回以上僕はTrioで食事をしました。もう病みつきなんです。Grantは、新しいレベルに達していました。それは、料理の美味しさだけじゃなくて、モダンで、革新的で、知的刺激を与える料理なんです。

    2004年の1月Gantと僕とで、レストランを一緒に作らないか?と話し合いをしました。もし、あなたが、才能ある若いMiles Davisに出会ったら、世界の舞台に彼を引き上げるために、援助しますよね?もし、そうしなかったらきっとその後50年、自分のふがいなさに後悔することになりますから。

    2004年5月4日、僕たちは、協力してくれそうな投資家、建築家、インテリアデザイナーを僕の家に招待して夕食会を開きました。そして、2005年5月5日、僕たちはレストランをオープンしました。ちょうど1年と1日でした。僕の父は、昔から素晴らしいアイディアがある時、それを達成するために世界が助けてくれると言っていましたが、今回のは、ちょっとそんな力が働いた気がしました。2006年10月、Gourmet MagazineがAlineaをアメリカで1番のレストランと評価し、更に同年イギリスのRestaurant Magazineでは世界で10番目と評価してくれました。

    Grantの経歴には基礎と古典があります。彼は両親がミシガン州のSt.Clairで経営するダイナーで料理をしながら育ちました。そして、料理学校Culinary Institute of Americaに通い最高のシェフThomas Kellerから高級料理の真髄を学びました。そして、スペインのRosesにあるEl BulliでFerran Adriaから、古典的な技術を奇抜でインテリジェンスでクリエイティブでテクノロジーでテーブル上の実験に適用する事を教えてもらいました。GrantはEl Bulliで数日を過ごし帰国してからは、当時では想像できない方法で革新し始めました。

    ちなみに、僕は料理のプロでもなければ、レストラン業界に詳しくもありません。私は、哲学のBAを持っていて、AppleⅡのプログラムを作るのに青春を費やしていました。僕の主要なキャリアはウェブを拠点とする科学技術の会社に小さな投資したり金融派生商品の取引をしたりしていました。でも、僕にはわかったんです。Grantのすごさが。

    僕たちが、Alineaを作る時に大切にしたのは味だけじゃありません。メニューは、まるで交響曲を作曲するように、食事する人達にチャレンジする気持ちで、彼らに幸福、悲しみ、ノスタルジア、

    ユーモアなどなど、最大限の人間らしい感情を感じてもらえるよう組み立てました。

    それでは、ここで一息。Grantの芸術的なメニューを目でご堪能ください。

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    食べ物とテクノロジー・・・。最近では、あまり仲の良い友達関係ではないですよね。Fast Food NationやOmnivore's Dilemmaといった本やFood Inc.のドキュメンタリーを見ていると、どんな時でもテクノロジーが食に適用されると悪い事が起きるという感覚があります。遺伝子を組み替えた野菜、農薬漬けのトウモロコシを食べる牛達、アメリカで愛され続けてるお菓子Twinkieが50年腐らないとか・・・体にいい食べ物なわけがないですよね?

    ここで言いたいのは、食にテクノロジーが関係しても悪いことばかりではないということ。革新的なアイディアが食べ物に適用される事で良いこともあるんです。新しいってことは、より良くなり、豊富になって、美味しくなるってこともあるんです。テクノロジーを成分、環境、消費者に対して敬意を持って適用すれば良いのです。Grantは、新しい味や質感を作りだすのに必要な時には、エクノロジーや科学を使い、新しい食体験を提供することもあります。

    そして、何人かの食評論家と食通の人達は、Grant Achatzといえば「分子料理法」としていますが、僕たちはそのタグがあんまり好きじゃありません。なんか、制限があるように感じるし、短絡的で、多くの場合なにか間違ったイメージにつながるから。ほとんどの場合、ローテクで十分なんです。ナイフでできる作業を、なんでレーザーで切ったりしないですよね?残念ながら、今日の分子料理法では、本来の動きの目的よりもショーマンシップ的な部分が注目されてしまっています。

    80年代には、フランスの分子ガストロノミーの専門家Herve Thisが料理のコツや主婦の知恵といったものを集め、実験しどれがダメか?を研究していました。

    Alineaのキッチンでも、全てに疑問を持ち、新しいテクノロジーを試し、常に食体験をよりよいものにしていこうと挑戦し続けているんです。Alineaには60人のスタッフとその理念に賛同する人達がいます。そして、その志は、毎日Gizmodoで良い製品とテクノロジーを取り上げているのと同じ事。ただ違うのは、Alineaのは食べれるってとこかな。

    Achatzとスタッフが日々研究・発見しながら創りだす楽しくて、美味しい食体験、皆さんにも体験してみたくなりました?

    まん中の二人が、AlineaのキッチンにいるNickとGrantです。

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    [Alinea's home page]

    -Nick Kokonas(原文/junjun )