「美しい」はずのiPhone 4ですが...
iPhone 4、溺愛しています。美しいです。舐めたいくらいです。でも、工業デザインとして、どうなんでしょうか?
続きで、この疑問を追及してみます。
初めて会ったその日から、恋に落ちました。でも、実際手にして見て、様々な問題を突きつけられてからは、やはり事実は事実として認めなくてはならないと思ったのです。
iPhone 4は、工業デザイン的に問題があるのです。というのは、美しさ、スピード、スマートフォン最強のソフトウェアを兼ね備えているにも関わらず、ディーター・ラムスによるグッド・デザインのガイドラインを踏襲していないのです。アップルのデザイン責任者であるジョナサン・アイブ氏は、機能主義を唱えたラムスの影響を大きく受けていると言われており、iPadのときはあまりにもガイドライン通りだったのに...。
まず、良いデザインは長持ちしなくてはいけません。優れたデザインとは、美的にも物理的にも時間の経過に耐え、使う人に対して完ぺきかつ正確にその機能を提供しなくてはなりません。形状は、最後の最後までその機能に尽くすべきなのです。
そしてiPhone 4の機能とは、まず電話をきっちりできること、ビデオチャットで笑顔も涙も伝えられること、新聞記事を極力迅速に伝えることです。そのためには、安定して強い電波が必要です。ある持ち方をすると、電波が弱くなるなんてだめです。しかも、ユーザーにとって自然な持ち方のときに電波が落ちるなんて。電波は携帯電話の命であり、つねに最優先されるべきなんです。形は、機能に忠実であるべきなのです。
だからiPhone 4は、工業デザインの上で、優れているとは言えないのです。
・素材の問題iPhone 4、キラキラに輝いているのは良いのですが、素材として使われているガラスは、iPhoneのような製品には不向きです。つねに動き回り、ストレスにさらされ、ユーザーが手で持つような製品だからです。ガラスは壊れます。だからガラスは、どうしても透明でなくてはならない場合以外、普通は使われないのです。
iPhone 4ではアルミノケイ酸ガラスを使っていますが、強化ガラスだからって例外ではありません。実際、アップルのように傷予防のためにガラスを強化すると、衝撃を受けたときにむしろ粉々になりやすいのです。なぜなら、アルミノケイ酸ガラスは、通常のガラスよりも強く内部の張力が働いているためです。強いがゆえに、もろいのです。
すでに、iPhone 4がちょっとしたことで壊れてしまったというケースが報告されています。ギズモードのインターン、サレルノ記者はテスト中にうっかりiPhone 4を落として、壊してしまいました。これは前世代でも同じことです。僕だってこれまで、iPhoneのディスプレイは2回も壊しています。てか、誰だって遅かれ早かれ、携帯電話を落とすんです。
でも、他と違うのは、iPhone 4は前面も背面もガラスなんです。他の電話なら、壊す可能性があるのは前面だけなので、五分五分の確率です。でもiPhone 4では、落ち方がどうであろうと、リスクがつねにあるのです。背面までガラス素材であるために、通常よりも危険にさらされているのです。
壊れてもいい、と言う人もいます。大事なのは、ガラスが傷つかないことだ、と。でも、ガジェットサイトGDGTエディターのライアン・ブロック氏が言うように、全く傷つかないというわけでもないのです。彼はうっかりiPhone 4に傷を付けてしまったのですが、そのときは気付きもしなかったそうです。
なぜ、こうなんでしょう?ある専門家が匿名で説明してくれてます。
iPhone 4の傷についての記事、読みました。僕は(某有名腕時計会社)で働いていて、(アップルと)同じ中国の工場を使っています。我々は、その業者が製造した、同様の「化学処理」ガラスに関して、大問題を経験しました。
そのガラスは我々の全テストを通過していました。落下テスト、鉄球による衝撃テスト、などなど。が、製品のガラスは割れ始め、私たちにはその原因がわからなかったのです。
その後結局、そのガラスは、同じ強度のガラス片にぶつかったときにお互いに簡単に割れてしまうことがわかりました。賭けてもいいですが、仮にiPhone 4を2台用意して、両方のガラス部分の端を軽~中度の力で打ち合わせたら、すぐに割れてしまうことでしょう。全く同じ問題が、我々の腕時計がガラスのコーヒーテーブルにぶつけられたとき、またはお店に入ろうとしてガラスのドアにぶつかったときに発見されたのです。
アップルにとっては大問題になりえるでしょう。私たちはこの問題に対処するために生産停止に追い込まれ、ガラスの端が露出しないようにデザイン変更しなくてはならなかったんです。
もしかしたらこの問題のせいで、iPhone 4ではガラス部分の端がプラスチックで囲われているのかもしれません。でも、上の情報が仮になかったとしても(何しろ、この情報で言われているのがiPhone 4と同種のガラスかどうかもわかりませんので)、現実に僕らは、iPhone 4のガラスに傷がついたり、割れたりしているのを知っています。ガラス素材は、携帯電話に適していないのです。
・持ち方の問題素材のために、持ち方にも影響が出ています。全ガラスの表面はつるつるして滑りやすく、iPhone 3Gを含め他のスマートフォンより持ちにくいです。米Gizmodoのブキャナン記者やウィルソン記者とも話してみましたが、彼らも同意見です(二人ともiPhone 4を持っています)。ブキャナン記者は、iPhone 4はiPhone 3Gより滑りやすいと言い、ウィルソン記者は、エッジがシャープで持ちにくいと言っています。後者の意見は僕のと違うのですが、アリだとは思いますし、他にも同意見の人がいることがわかっています。
iPhone 4の滑らかな表面や形状のシャープさからは、ドイツ風ミニマリズムの飽くなき追求を感じます。でもその中で、iPhone 3GSにあった、チープでともすると野暮なのだけど、有機的な、人間への優しさを失ってしまったのではないでしょうか。
・代替素材はないのか?前面はガラスにせざるを得ないとして、背面には違う素材を使うこともできたんじゃないでしょうか。スチール、アルミ、セラミック、テフロン加工素材、木もありうるかもしれません。もっと丈夫で、同じくらい美しいものがあると思います。
アップルでは、電波問題への解決策のひとつ、または傷対策として、ケースをつけろと言っていますが、そんなのは解決策になっていません。ケースが必要なら、どうしてそもそもゴム引きとかにしておかないんでしょうか?ゴム素材だって、見栄えの良いものがいくらでもあるはずです。
ガラスと同様、こうした代替素材には傷がつきます。でも、ガラスとは違って、これらの素材は時間が経っても美しいです。スチールとか木についた傷は、時間とともに独特の味になっていきます。ガラスについた傷は、いつまで経ってもただの傷です。
ディーター・ラムスとハンス・グジェロによるこのデザインをみてください。1956年のBraunのSK-4レコードプレイヤーと、ラジオです。
iPhone 4のように、このデザインは22世紀になっても美しく、タイムレスなままでしょう。iPhone 4と違うのは、SK-4は万一ウッドパネルに傷がついたとしても、時間とともに美しくなるだろうということです。
・アンテナの問題iPhone 4のもうひとつの大問題、それはアンテナです。電波受信強度です。これもデザインの犠牲にされています。ある持ち方をすると、感度が異常に悪くなり、完全に受信できなくなることすらあるのです。これはAT&Tのせいではありません(AT&Tの電波も決して良くはないですが)。問題は、iPhone 4のアンテナの役割を果たしている、側面のスチール部分です。アップルによれば、このアンテナは通信を強化するはずのものです。でも実際は多くの人が、アップルが広告やWebでやって見せている持ち方で持っているにもかかわらず、電波が弱くなる現象に遭遇しています。
ユーザーからの質問に対し、アップルの回答は簡単でした。「持ち方を変えてください。」iPhone 4最大の機能的欠陥たりえるこの点について、業界ご意見番のデービッド・ポーグ氏らはさほど問題でないかのように、「原因は手の汗にある」「絶縁効果のあるケースを使え」と言っていて、アップルもそれを繰り返しています。
そんなのは回答になりません。工業デザイン、そして製造上での判断を誤ったことに対しての下手な言い訳です。間違っているのはユーザーでも、使い方でもありません。これはラムスのガイドラインに完全に反しています。デザインはユーザーを助けなくてはならないし、経験を拡大させなくてはいけません。優れたデザインは、慎み深いんです。ユーザーの行動を制限してはならないし、ましてユーザーに特定の行動をとらせるべく強制するなんて、論外です。デザイン責任者のアイブ氏に聞きたいんですが、ディーター・ラムスが、彼の作品T1000ワールドレシーバーを、電波受信感度が良くなるように、家の特定の場所に置くようになんて言ったでしょうか?
T3ポケットラジオを、ビートルズが最高音質で聞けるように、決まった持ち方をしろなんて言ったでしょうか?いずれも、答えはノーです。
アップルのデザインチームは、iPhone 4 において、現在最良のスマートフォン、そして彼らの歴史上ももっとも美しい物体を作り上げたにも関わらず、失敗したのです。今回は、ディーター・ラムスも納得しないでしょう。そして、iPhone 4の背面が割れたり、持ち方によって電波が悪くなったりしたユーザーも。
Jesus Diaz(原文/miho)