弓だけでなく音楽にも柔軟性を。
1500年代に今の形になってから、ずっと変わらぬままだったという楽器、ヴァイオリン。それは弦を弾く弓も同じでした。しかし近代になり、親指の操作で馬毛がダランと弛む弓が作られたことで、これまでせいぜい2本しか同時に弾けなかった4弦もしくは5弦すべてを一気に弾けることになりました。かつては認められなかったというマイナーな弓だったのですが、これは商業化しようと再発明した男性が現れました。
湾曲した指板の形状に合わせる
この弓は、考案者のチャーリー・マッカーシーさんにより「Polycorde Bow」と名付けられました。ヴァイオリンの弓が、2本か、頑張っても3本しか同時に弦を奏でられないのは、指板が湾曲しているからです。しかし弓をその湾曲に合わせれば、5弦すべてを奏でるコード弾きが可能になるのです。
こんなダルダルでもちゃんと弾けるもんなのですね。弓のテンションを瞬時に変えられるので、自在な演奏ができてしまいます。慣れれば狙って3本~5本の弦を同時弾きするよう親指で調節できそうです。
続いてのデモ演奏では、予め録音されたメロディーに、伴奏としてコード弾きを被せています。初心者でも簡単に弾けそうな印象です。
とにかく馬毛が弦をこすれば音が鳴る
弓の馬毛はピンと張られていないといけない、という固定観念を覆し、ヒンジひとつでこんなに音を豊かにする、まさにコペルニクス的転回ではないでしょうか? 20世紀後半にもバッハ弓という同じコンセプトのものが作られましたが、極めた人が辿り着く答えがこれなのでしょうね。ヴァイオリンはクラシック音楽だけなく、カントリー、ブルーグラス、欧州諸国の民謡などでも使われるので、各ジャンルの演奏者たちからも歓迎されそうです。
NEW ATLASによりますと、「Polycorde Bow」のお値段は2,200豪州ドル(約16万円)とのこと。少々お高めですが、この手の道具はピンキリなので一概に高い!ともいえなさそうです。現在はヴィオラ、チェロ、コントラバス用も作っているとのことなので、奏者の方々は続報を気にしてみては?
Source: Polycorde Bow, YouTube (1, 2) via NEW ATLAS
訂正[2020/03/05]初出時、タイトルおよび記事内の表現が誤っていたため、修正しております。