教育の特色 Characteristics カリキュラム Curriculum
教員 Faculty Member 博士論文 Doctoral Theses
博士後期課程の特徴
Doctoral Program in Heritage Studies
世界遺産学学位プログラムは、遺産保護に関わる多くの問題や課題に取り組む高度専門家や研究者養成を目的とする世界で初めての世界遺産研究の博士課程です。
遺産の保護には、個々の遺産やサイトに関する学術的調査・分析・評価および保存修復技術の研究や開発はもちろんのこと、遺産を巡る諸条件、持続的保護へ向けての管理運営が不可欠です。また、開発途上国や紛争・経済的問題を抱える地域では、文化遺産の保護の実現は国際協力に頼らなければならないのも事実です。UNESCOは、大きな努力をこうした途上国の遺産保護活動に傾注していますが、危機的状況への国際的対応は決して十分とは言えません。
このように遺産の保護に関わる状況は複雑にして多面的であり、世界遺産保護の専門家として、アジアをはじめ広く国内外で活躍するためには、理論と技術の両面において、既設の博士前期課程(修士)「世界遺産専攻」修了後さらに高度な専門的知識と研究能力を修得する必要がある、との認識から、博士前期課程と同様に文化庁の協力を得て開設が実現しました。
ユネスコ・世界遺産センターでのインターン実施(選抜制)、ドイツ連邦共和国ブランデンブルク工科大学コットブス校との交流協定、ユネスコ、イクロムの指導によって運営されているアジアン・アカデミーへの参加など、国内外の関連機関と連携しながら行われる特色ある教育プログラムにより、博士課程では、まず、文化遺産領域での専門研究が進められます。世界遺産保護に教育・研究機関としての大学が果たす役割は大きく、博士課程から世界遺産保護の未来を担う専門家が育ち、多彩な活動が展開されることを願ってやみません。
In response to the social and international appeals for the protection of the World Cultural Heritage, “World Cultural Heritage Studies” is aimed at training advanced researchers and specialists engaged in the identification, protection and preservation of heritage around the world with sophisticated expertise. “World Cultural Heritage Studies” was inaugurated in April 2006 as the first and only doctoral program in the world particularly relating to the studies of the world cultural heritage. It is organized according to the following sections: Conservation Philosophy, Policy and Administration in Heritage Conservation, Project Management and Tourism, Heritage Landscape, Architectural Heritage, History and Heritage of Art and Conservation Science. Students of this doctoral program are expected to develop, widen, or deepen their academic experience in the “Heritage Studies,” a two-year master’s program in the Graduate School of Art and Design, or other institutions of similar specialty and standard.
博士の学位
Doctoral Degree
博士(世界遺産学) Doctor of Philosophy in Heritage Studies
主な進路
Career Paths
教育機関:
筑波大学,山梨大学,鳥取大学,秋田県立大学,第一工業大学,カセサート大学,東南大学,西南交通大学,湖南師範大学
国・公共団体:
パナマ政府,茨城県,富岡市,白川村 など
公的機関:
独立行政法人東京文化財研究所,独立行政法人奈良文化財研究所,国立民俗博物館,橿原考古学研究所,根津美術館,公益財団法人自然保護助成基金 など
コンサルタント関連企業他:
株式会社文化財工学研究所 など
カリキュラム
Curriculum
世界遺産学学位プログラムは,世界遺産の保護に関する社会的,国際的ニーズに応えるため,遺産保護に関する高度な研究を行う研究者及び国内外の遺産保護現場,国際機関等で高度の学識と専門的能力をもって遺産保護に従事する博士を養成することを目的としています。本学位プログラムは,世界遺産の教育・研究を目的とする世界で初の博士課程であり,以下に示される10名の教員により構成されています。既設の博士前期課程「世界遺産学学位プログラム」が自然遺産を含めて世界遺産全体にかかわる基礎的,総合的,技術的教育を行うのに対し,博士後期課程「世界遺産学学位プログラム」は,世界遺産の理念と課題をより専門的,学術的に考究する課程で,海外留学や海外研修にも力をいれた教育を行っています。
講義内容については,シラバスを参考にしてください。
世界遺産学学位プログラム履修ガイド(2024年度) / Syllabus in 2024
インターンシップ書式やコンピテンス達成度評価表ファイルは、以下のページに掲載されていますのでご利用下さい。
各種書式 / Documents
筑波大学教育課程編成支援システム(オンラインシラバスKdB) / Curriculum Scheduling Support System (online Syllabus, KdB)
世界遺産学学位プログラムにおける各教員の教育・研究内容/ Educational and Research Territories of the Faculty Member in Heritage Studies Degree Program
世界遺産学学位プログラム(博士後期)では,10名の専任教員が以下の教育・研究を担当します。
In the Doctoral Program of Heritage Studies, the following academic staffs with the wide range of academic backgrounds will give you an individual instructions. During the three-year program, student will be required to get at least three credits.
研究分野 | 教員名 | 研究内容 |
持続的遺産保全 |
飯田 義彦 | 自然-人間系における持続可能な遺産の保全管理に関する研究を行う。とくに持続可能性、生物文化多様性、地球環境学の観点から実践的に考究する。 |
現代社会の文化芸術研究と都市遺産,創造性と市民参加 | 池田 真利子 | ドイツを中心とした中央・西ヨーロッパの都市遺産の市民参加型保存・活用のほか、世界あるいは日本の現代社会における有形・無形の文化の保存・継承・変容と創造性・文化創造産業の役割に関して、人文学的・地理学的観点に基づく理論・実証的研究を行う。 |
開発観光計画 |
伊藤 弘 | 地域の特徴を形成する自然と文化を,持続的に活かし続ける観光および地域のあり方と,その実現方策に関する研究を行う。 |
遺産整備計画 | 上北 恭史 | 遺跡、建造物の保存手法、地域再生事業などの活用計画について研究し、地域の自然環境とともに継承されてきた木造建造物や伝統的集落の調査や保存体制の構築、防災への対策、保存活用計画策定など遺産の保存に関わる計画的手法を考究する。 |
文化的景観 |
黒田 乃生 | 人と自然の関わりが生み出した文化的景観について保護制度,景観の変遷と住民とのかかわりに関する研究を行う。 |
建築遺産 | 下田 一太 | 伝統建築、歴史的地区、考古学サイトの歴史・意匠・構造・技法等の学術的評価や、保存・修復・活用にかかる研究を行う。 |
文化史 | 肥後時尚 | エジプトを中心とする古代の文化遺産の背景にある古代社会の歴史や文化、思想を明らかにすることで、文化遺産の評価にかかる研究を行う。 |
保存科学 | 松井 敏也 | 遺産や博物館資料等の保存と活用のために,自然科学的手法を用いてそれらの劣化の解明や,予防技術,修復材料などの研究を行う。 |
自然保護地域管理学 | 三ツ井 聡美 | 世界自然遺産や国立公園の保全と利用の両立のために、管理に携わるステークホルダーの意識や行動について科学コミュニケーションの観点から研究を行う。 |
美術遺産 | 八木 春生 | 本研究分野では,中国を中心とする仏教美術作品が,いかなる目的で造られ,それをどのように見せようとしたかを明らかにすることで,それぞれの評価をおこなう。 |
Field of Research | Faculty | Detailed Description of Research Field |
Sustainable Heritage Conservation | This research field aims to consider practically on sustainable heritage conservation in the nature-human systems from the view point of sustainability, biocultural diversity and global environmental studies. | |
Research on Culture and Art as Urban Heritage in Contemporary Society, Creativity and Citizen Participation | IKEDA Mariko |
In addition to the citizen-participatory preservation and utilization of urban heritage in Central and Western Europe, particularly in Germany, the role of creativity and the cultural and creative industry in the preservation, inheritance and transformation of tangible and intangible culture in contemporary society in the global cities, based on the theoretical and empirical research with perspectives and methodologies in humanities and geography. |
Development / Tourism Planning | ITO Hiromu |
Research on the ideal tourism and the status of local areas vitalizing nature and culture. |
Project Management of Heritage Sites |
UEKITA Yasufumi |
This course covers a wide range research scope of project management that plans conservation projects of architecture buildings, historic districts and archaeology sites. The case studies offered in this course are useful for the researches which investigate historic building evaluation, disaster preventions and regional revitalization plans. |
Cultural Landscape | KURODA Nobu | Research on cultural landscape which is combined works of nature and humankind from perspectives of history, management and community participation. |
Architectural Heritage | SHIMODA Ichita |
Evaluate the history, design, structure, and construction techniques of historical/traditional buildings, and the research on these preservation, restoration and adaptive reuse of architectural heritages, historic districts and archaeological sites. |
Cultural History |
Evaluating the cultural heritage in the ancient world, including Egypt, by understanding the heritage’s purposes and historical/ cultural backgrounds from the viewpoint of cultural history. | |
Conservation Science |
Research on preventive technologies, restoration materials, and damage detection using natural science methods for the conservation and utilization of heritage and museum collections. |
|
Protected Area Management | MITSUI Satomi |
Focuses on the effectiveness of science communication with stakeholders for the implementation of management that balances use and conservation in World Heritage sites and national parks. |
Art Heritage |
YAGI Haruo |
In this research field, each evaluation is conducted by clarifying how Buddhist art works, mainly Chinese, were created for what purpose and how they were shown. |
博士論文
Doctoral Theses
修了生の博士論文タイトルをご紹介します。(著者の意向により、ダウンロードできないものもあります。)
2023 2022 2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009
2023年度 括弧内は主指導教員名
2022年度 括弧内は主指導教員名
- 明治期の煉瓦造の文化財にみられる特性と保存方法に関する研究*(松井)
- Inheritance of Intangible Cultural Heritage Kunqu Opera: Extraction of Inherited Factors as Intangible Cultural Heritage and Changing Factors for Social Change (無形文化遺産崑曲の継承に関する研究:無形文化遺産として継承される要素と社会的環境によって変化する要素の抽出)*(上北)
- Heritage policies and social participation in Peru: the case of the Qhapaq Ñan Project(ペルーにおける文化遺産政策と社会参加:カパック・ニャン・プロジェクトより)*(下田)
*専攻/学位P賞授与対象者(3月修了生)
2021年度 括弧内は主指導教員名
- The Role of ‘Sense of Place’ in Cultural Heritage Conservation: The Case of Historic Cairo, Egypt*
(文化遺産保護における「場所の意味」の役割:エジプト・カイロ歴史地区を事例に)(池田) - Preservation,R estoration and Use of ReligiousM onuments in Soviet and Contemporary Georgia: research based on the case of Bagrati Cathedra*(ソビエトと現代ジョージアにおける宗教的遺産の保存および復元バグラティ大聖堂の例に基づいて)(上北)
*専攻賞授与対象者(3月修了生)
- 産業遺産の転用に関する研究(Adaptive Reuse of the Industrial Heritage)(上北)
- 中国貴州省茘波における薬⽤⺠族植物学的研究(Ethnobotanical Studies on Medicinal Plants of Libo, Guizhou Province, China)(吉田)
- Study on the off-gassing and storage environment in the conservation of Japanese woodblock prints(浮世絵の保存におけるオフガス特性とその収蔵環境に関する研究)(松井)
2020年度
*専攻賞授与対象者
2019年度
- The Dynamics of Gender Roles in Intangible Cultural Heritage: A Case Study of Japanese Yama Hoko Yatai Float Festivals*
- 世界遺産の審査における「政治化」に関する研究-「顕著性」と「代表性」の議論を軸に*
- 雲岡石窟における中小窟龕の研究*
*専攻賞授与対象者
2018年度
-
敦煌莫高窟に描かれた規則性を備える千仏図の研究
- 国立公園指定と世界遺産登録における吉野の評価とその背景
2017年度
-
中国貴州省における少数民族の穿闘式木造民家の建設に関する研究-黔東南ミャオ族トン族自治州公納村を対象として-
-
Present and Future of Cultural Heritage Policies in Central America
2016年度
- チャオプラヤー川流域とその周辺河川における伝統的な水辺集落の価値に基づく評価と保存に関する研究
- 東日本大震災による関東の重要伝統的建造物群保存地区の町家と土蔵の地震被害の研究
- 唐代の龍門石窟に関する研究 -小窟、龕からの視点を手掛りとして-
2015年度
- The Development of Landscapes Management at Borobudur, INDONESIA since the 1970s
- Living Heritage Approach to the Conservation of Historical Wooden Churches in Ukraine
2014年度
- 中国における文化遺産としての伝統的集落の保護に関する研究 – 貴州省トン族の増沖集落を事例として-
- 農業に関する文化的景観保護とその手法に関する研究
- 十六・十七世紀の備前焼茶道具の研究
- Architectural Preservation Process in Japan: Theoretical Discourse and its Application
2013年度
- 中国歴史文化名城・名鎮における歴史建造物の地震被害と保存の研究 – 四川省広元市昭化古城を事例として –
- ベトナムの歴史地区古都ホイアンの保存に関する研究 – 文化遺産保存を目的とした日本の国際協力事例を通して –
- 中国長白山麓における井幹式民家集落の特徴と保全に関する研究
2012年度
2011年度
- スペイン植民地における建築工事制度と技術:メキシコ盆地の事例研究
- ハギア・ソフィア大聖堂モザイクの現状記録及び材料・技術に関する研究
- リビアの文化遺産保護行政に関する研究
2010年度
- フィンランドにおける二十一世紀建築遺産保護の研究
- 出土鉄製文化財の腐食における鉄還元細菌の研究
- 発展途上の島嶼国(SIDS)における持続可能な遺産観光に向けたマネージメント戦略 – ジャマイカの事例 –
2009年度
- 中国麗江世界遺産地域における民家の変化と継承 白沙集落を中心とした保存のための考察
- UNESCOの成立に関する研究 – LNとCAMEの文化遺産保護政策の継承と発展 –
- 文化財保護法の成立過程に関する研究 – GHQ/SCAP文書にみる起草の背景と草案・法案の変遷 –
- 「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」の諸課題と解決に向けた取組み
- 博物館学の視点と方法による建築遺産の公開に関する研究
- パナマと日本における文化的価値を有する木造・混構造建造物の保存修復に関する比較研究
- 中国における文化遺産としての歴史地区の持続可能な観光開発のあり方に関する研究 世界遺産「麗江古城」束河地区を事例として