「Grand Theft Auto(GTA)IV」がリリースされると同時に、メディアや政治家からはこのゲームをモラルのない文化の破壊者と非難する声が上がり、多くはこのゲームを禁止するよう求めている。この人たちにはGTAや類似のゲームを嫌悪していることのほかに、もう1つ共通点がある。GTAを一度もプレイしたことがない上に、ソリティアやオンラインのScrabbleゲーム以外にまったくビデオゲームをやっていないということだ。
一介のテクノロジー好きとして、わたしは、知りもしないでテクノロジーを批判する――最悪の場合、技術の進歩を阻む愚かな法律を通そうとする――人には慣れている。だがビデオゲームとなると、体験したことのない人からの攻撃や批判は、ほかのテクノロジー分野よりも多い。
わたし自身はビデオゲームが好きだ。わたしが自宅に最新の強力なシステムを置いている一番の理由は、最新のゲームをプレイするためだったりする。テレビかゲームを選べと言われたら、たいていはゲームを選ぶ。言っておくと、40男のわたしだが、GTAの最初の3作はプレイしたことがあるし、楽しめた。
人には嫌いなものを批判する権利があると思う。でも、批判するなら実際にある程度体験してみるべきだし、偽善的になってはいけない。
今日のBoston Globe紙で見かけた論説は、GTA IVを忌まわしいと言い、このゲームをおそらく禁止できないであろうことを嘆いていた。おもしろいのは、「パルプ・フィクション」と「ディパーテッド」を絶賛しているのと同じ新聞が、似たような形態のメディアをたたいていることだ。
「パルプ・フィクション」も「ディパーテッド」も、いろいろな点で犯罪を美化して描いた非常に暴力的な映画だ。実際、多くの点でこれら映画の暴力の方がひどい。「パルプ・フィクション」を見ているときに、ブルース・ウィリスがジョン・トラボルタを撃つのを止めることはできない。GTAでは、主人公に殺さないように、盗まないように指示することができる。
くだらないゲームをマーティン・スコセッシの「ディパーテッド」のようなアカデミー賞作品と比べられるわけがない、と言う人もいるだろう。もちろん、そういう意見は前にもあった。かつてはこう言われたものだ。ビートルズをベートーベンと比べられるわけがない。あるいは、アルフレッド・ヒッチコックをエドガー・アラン・ポーと比べられるわけがない、と。
最近ではこういう比較もそれほどばかげたものには見えないし、願わくは、遠からず最高のゲームが最高の映画と同じレベルで芸術として扱われるようになってほしいものだ。わたしの経験では、この10年間、「System Shock」シリーズのような素晴らしいゲーム並みの凝った筋書きと深みのあるキャラクターを持った映画はわずかだった。
もちろん、ビデオゲームをやったことがない人が持ち出してくるもう1つの言い分は、映画も暴力的だが、ゲームではプレイヤーが直接誰かを殺す、というものだ。
これはおかしい。誓って言うが、GTA IVの主人公は東欧人だ。ほとんどのプレイヤーは自分をこの主人公と同一視することはないだろう。「トゥーム・レイダー」の数百万人のプレイヤーが、自分を冒険好きの英国女性だと思わないのと同じだ。
もちろん、ゲームのキャラクターと自分自身を過度に同一視する危ない人もいるかもしれない。「マトリックス」のネオや「ライ麦畑でつかまえて」のホールデン・コールフィールドと自分を混同してしまった危ない人がいたのと同じように。
GTAのようなゲームや、この手のゲームが支持するものを嫌うのは自由だ。わたしにも嫌いなものはたくさんある。ここ数年人気が出てきている拷問だらけのホラー映画とか。
だが、わたしはこういう映画を禁止するべきだとか、見るのも違法にするべきだとか主張したことはない。それに念のため言っておくが、ちゃんと自分で何本か見てみた。熱心な議員が未成年への暴力ゲーム提供を禁止する法律を提案しているのは興味深い。では、ボビーの兄さんがボビーにGTAを買ってあげるのは違法だが、ボビーを映画「ユースホステルのノコギリ殺人魔3」に連れて行くのはまったく問題ないというのだろうか?
わたしにとっては、直接体験したことがない、あるいは理解していないのにGTA IVのようなゲームを攻撃して禁止したがっている人は、見もしないでモンティ・パイソンの「ライフ・オブ・ブライアン」に反対してピケを張った人や、読んだこともないのに「ハリー・ポッター」は黒魔術を助長すると攻撃する人と何ら違いはない。
だから、もしもゲームを攻撃したいならそれでもいいが、実際の体験や知識に基づいてやってほしい。それが嫌なら、わたしが以前聞いた賢明な助言に従うのがいいかもしれない。
自分が話題にしているもののことを知らないのなら、何も言わないのがたぶん一番いい。
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