トランプ大統領はPayPal Holdingsの元幹部を政府のAI担当に任命し、バイデン政権に反してAIの利用促進を強化する方針だ。AIの潜在的リスクをよそに、中国に対抗するために政策の準備を整えている。
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国際法律事務所Perkins Coieのブログ記事によると、企業は米国におけるAI政策の大幅な変化に備える必要があるという(注1)。ドナルド・トランプ大統領の下で、連邦政府はイノベーションの促進や規制障壁の削減に注力する方向へとシフトする可能性が高いためだ。
トランプ政権がAI政策にどのように取り組むかを示すサインとして、2024年12月5日(現地時間、以下同)にトランプ氏が発表した、元PayPal Holdings幹部のデイビッド・サックス氏の「AIおよび暗号資産担当責任者」への任命が挙げられる(注2)。
Perkins Coieの弁護士であるマーク・マーティン氏とミーカ・ボンディ氏、シドニー・ヴィーチ氏はブログ記事で「サックス氏はAIの潜在的なリスクに焦点を当てるよりも、より少ない制約の中でAI革新を促進し、支援することに注力するだろう」と述べた。
トランプ氏は2024年12月5日にソーシャルメディア「Truth Social」に、サックス氏はAIと暗号通貨の分野で米国を明確な世界的リーダーに導くよう注力すると投稿した。また、サックス氏は大統領科学技術諮問委員会のリーダーも務めることになると、トランプ氏は発表している。
サックス氏は、スタートアップ企業や成長企業に投資するベンチャーキャピタル会社Craft Venturesの共同設立者だ。同社のWebサイトに掲載された経歴によると、同氏は1999年に初めてテック業界に飛び込み、初期段階のスタートアップ企業Confinity(後にPayPal Holdingsに社名変更)に加わったという。そこで最初のプロダクトリーダーを経験した後、COO(最高執行責任者)を務めている(注3)。
Perkins Coieのブログ記事によると、サックス氏がAIおよび暗号資産担当責任者に選ばれたことは、新政権がAI政策にどのように取り組むかを示す「幾つかの強い兆候」の一つだという。
トランプ氏は、ジョー・バイデン大統領が2023年に発表した包括的なAIに関する大統領令を撤回した(注4)。この大統領令は、AIが安全かつ責任ある方法で開発、利用されるようさまざまな政策を求めたものだった。
バイデン大統領はこの大統領令の中で「AIを有益に活用し、その膨大な恩恵を享受するためには、AIの実質的なリスクを軽減することが必要だ」と述べている。
Perkins Coieの弁護士によると、トランプ氏は最初の任期中、2019年と2020年の2度にわたりAIに関する大統領令を発令したが、それは「非常に自由放任的」なアプローチを反映したものだったという(注5)(注6)。
偽者でありながら説得力のある動画や音声記録で個人に成り済ます「ディープフェイク技術」の使用など、AIツールの潜在的な悪用に対する懸念が高まるなか、トランプ氏はホワイトハウスに戻ることになる(注7)。同氏はディープフェイク画像の標的となった公人の一人だ。
2024年6月、YouTuberでありプロレスラーでもあるローガン・ポール氏とのポッドキャストのインタビューでトランプ氏はAIの危険性を唱え、特にディープフェイクを生成する技術に関して警告した(注8)。一方で、同氏はAIを「素晴らしい技術だ」と発言し、この分野のイノベーションにおいて米国は中国と競争する準備を整えなければならないとも述べた。
(注1)What To Expect From the Trump Administration on AI Policy(Perkins Coie)
(注2)Donald J. Trump(X)
(注3)David Sacks(CRAFT)
(注4)Biden’s AI order calls for guardrails to protect workers(CFO Dive)
(注5)Accelerating America’s Leadership in Artificial Intelligence(The White House)
(注6)Promoting the Use of Trustworthy Artificial Intelligence in Government(The White House)
(注7)AI deepfakes targeted in Biden’s State of the Union speech(CFO Dive)
(注8)The Donald Trump Interview - IMPAULSIVE EP. 418(YouTube)
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