では、なぜ要求定義なるものが難しいのでしょうか? 思い付くままに挙げてみようと思います。それには以下のような要因が考えられるのではないでしょうか。
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この手の話は枚挙にいとまがありません。こうして挙げてみただけでも、要求定義には実にさまざまな立場の人々のさまざまな思いが複雑に絡み合っており、さらに要求自体が時間や環境とともに変化していくものだとすれば、そうした中から真に必要な要求を抽出するのは至難の業のようにさえ思えてきます。このように、要求を定義することが難しいことを述べるのは、とても簡単です。
しかし、そのままでは問題は何も解決しません。
NTTデータは、この要求定義の問題に対して、MOYA(Model-Oriented Methodology for Your Awareness)という方法論を定義しました。 この方法論は、要求工学のプロセスを基盤としつつ、要求定義の品質を向上させるための多くのタスクや成果物から構成されています。
MOYAのプロセスは、大きく2つのSTEPから成っています(図1参照)。 一般に、要求を定義するプロセスは「要求の抽出」「要求の分析・合意の形成」「要求の仕様化」「要求の確認」となっています。
最初のSTEP1は「要求の抽出」「要求の分析・合意の形成」に当たり、STEP2は「要求の仕様化」「要求の確認」に当たるということになります。
STEP1では「さまざまなステークホルダが持っているさまざまな要求を、目に見えて理解できる形に構造化する」こと、つまり、要求を探索し、見える形、理解できる形に構造化することを目的としています。
STEP2では、STEP1で構造化したさまざまな要求に対して、仕様化に向けた準備を行うことを目的としています。
本連載では、タイトルのとおり「隠れた要求を見極める」ために、MOYAの手法をどう活用していくかについてご紹介していきたいと思っています。
隠れた要求を見極めるためには、その局面での課題とその背景に潜む「思い」を深く掘り下げて考えることが必要です。MOYAのプロセスとプロセス支援ツールが、「隠れた要求」を明らかにしていく様子を感じ取ってもらえればと思います。
読者の皆さんが抱えるプロジェクトが、お客さまに本当の意味で満足してもらえることに貢献したい。これが本連載のゴールです。そのために、お客さまの要求を見極めるためのノウハウを次回以降お伝えしたいと思います。
平岡 正寿(ひらおか まさとし)
株式会社NTTデータ 技術開発本部 ソフトウェア工学推進センタ 課長
筑波大学大学院教育研究科修了。
SIerやコンサルティング会社を経て、2004年NTTデータに入社。
当初、アーキテクト部隊に所属していたが、SIerにおける上流工程の重要性を強く意識し、MOYAのチームに参加。以降、MOYA自体をブラッシュアップするとともに、多くの現場で実践を続けている。
MOYAポータルサイト: http://www.nttdata-moya.jp/
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