経済産業省が4月30日に公開した「ベンチャー企業の経営危機データベース」が面白い。テクロノジ・ベンチャーにありがちな経営上の失敗が分析されていて、これから事業を起こすことを考えている人は参考にできるだろう。
経営危機データベースは、「ベンチャー企業の多くは、起業して成長していく過程において、同じような失敗やトラブル、ヒヤリとした経験をしている」(経産省)という認識から、ベンチャー企業の「転ばぬ先の杖」として83件の実際に経営危機に陥った事例をインタビュー調査で集めた。事例は業種やその企業の成長ステージ、失敗の原因から検索することができる。
ITエンジニアが関係しそうな「情報通信業」では11件が登録されている。失敗原因で目立つのは優れた技術力を持ちながらも、市場のニーズと合わなかったり、社内の組織体制が整わずに失敗するケースだ。
「エンジニア体質から、技術重視の開発に走り顧客の要望を汲み取ることが出来ずクレームが発生」というケースでは、顧客の要望に沿ったシステム開発ができずにトラブルに発展した。原因は、「エンジニア集団としての企業体質があり、顧客サイドの経営課題やニーズなどを十分把握せずに技術的な面でのクオリティ重視に偏向していた」と分析され、「顧客の真の要望を見抜けない、仕様鵜呑みのエンジニア体質」が失敗要因と指摘している。
原因、要因だけでなく、経営危機データベースは得られた教訓も掲載している。この事例では「営業担当者が顧客と十分な意志の疎通を行い、開発サイドと認識を共有し、管理者がお互いの認識・意見のズレを無くす努力をすればトラブルの発生は少なくなる」などとまとめている。
無料インターネットプロバイダーサービスと企業広告を組み合わせた「ハイパーシステム」を開発したものの、市場規模を見誤り、広告受注の伸び悩みなどから株式公開の見送りを証券会社から迫られ、それを機に金融機関の貸しはがし、資金ショートで破産という事例も掲載されている。
原因としては「市場の読み間違いと外注システムトラブル」が挙げられていて、同時に経営上の問題点としては「直接金融と間接金融の性格をよく理解しておらず、ベンチャー企業である当社は、当然銀行ではなく、リスクマネーであるベンチャーキャピタルの支援を選択すべきであった」と指摘している。「サービスは画期的ではあったが、時代の先を行っていたが追い越しすぎた感がある」との分析もあり、技術やサービスの優位性だけが会社の継続につながるわけではない、ベンチャー企業の難しさを伝えている。
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