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小さな工夫で大きく変わるヘルプデスク業務社内を幸せにするEUC(3)(1/2 ページ)

「情報システム部門と利用者部門の双方にメリットをもたらすEUCの在り方」について解説してきた本連載だが、最終回である今回は「EUCを推進するための環境作り」という観点から、社内ヘルプデスク業務の効率化について考察したい。

» 2010年01月21日 12時00分 公開
[村中直樹,クレッシェンド]

情報システム部門を圧迫する社内ヘルプデスク業務

 ITの専門知識を十分に持たない利用者がコンピュータを扱えば、操作上の疑問点やトラブルが日常的に発生する。そこで情報システム部門が本来の業務と社内ヘルプデスク業務を兼務しているケースが多いが、この社内ヘルプデスク業務が情報システム部門のリソースを圧迫している例が少なくない。これは主に問い合わせ件数が多いことと、対応に時間がかかるためである。

 一般に、利用者は「PCのことなら何でも質問してよい」と考えている。そのため、何かあるとすぐ問い合わせてくる傾向が強い。例えば「PCが起動しない」「メールが送れない」といった一般的な質問から、利用者自身が作ったEUCツールの不具合についての質問まで、さまざまな問い合わせが大量に寄せられる。

 にもかかわらず、社内ヘルプデスク業務は必ずしも正規の業務として位置付けられているとは限らず、人事考課などに反映されない場合も多い。おまけに的確な回答をしても利用者に感謝されることはほとんどなく、問題が解決しない場合は、感情的に不満をぶつけられることさえある。

 こんな社内ヘルプデスク業務ではあるが、ちょっとした工夫によって、情報システム部門の負担を減らしながら利用者の満足度を高めることができる。その方法を事例を通じて紹介しよう。

質問件数が多く、対応時間も長い……いったいどうすれば?

 消費者向けの金融サービスを手掛けるC社では、情報システム部門の8名が本来業務のかたわら、社内ヘルプデスク業務を行っていた。 問い合わせは電話、FAX、電子メールで受け付け、8名それぞれが自分の担当部門からの質問に対応していた。

 C社ではPC全般の基本的な質問と回答をまとめた利用者向けのFAQを用意していた。しかし、内容が古いなどの理由からあまり活用されておらず、情報システム部門にとって社内ヘルプデスク業務は重い負担となっていた。

 C社の社員数は2000人規模で、1日当たりの問い合わせは平均5件前後。問い合わせを受け付けてから回答するまでに平均半日を要し、8名全員が掛かり切りになる日もあるほどリソースを圧迫していたのである。利用者部門も「対応時間が長い」という不満を抱えていた。

 以上の問題は次の3点に整理できる。

  • 問い合わせ件数が多い
  • 社内ヘルプデスクの対応範囲ではない質問も含まれている
  • 利用者が問い合わせ内容を的確に伝えられないため、問題把握に時間がかかる

 C社ではこれらを解決するため、4つの対応を行った。

工夫1――質問票で問い合わせを受け、問題の画面を張ってもらう

 情報システム部門が必要な情報を取得し、質問内容を素早く把握して機械的に対応を決めるために、情報システム部門側が作成した質問票を配布して、その利用を奨励した。さまざまなレベルの利用者が想定されたため、直感的に使えるMicrosoft Excelのシートに記入する方式とした。

 利用者がすべきことは、質問内容(障害内容)を記入し、用意されたプルダウンから障害の再現性を選択し、「画面貼り付け欄」に障害発生時の画面を貼り付けるだけである。この作業を誰でも簡単に行えるよう、スクリーンショットの貼り付け方法の説明も、画面貼り付け欄の近くに配置した。

工夫2――FAQへの誘導を徹底する

 問い合わせ件数を減らすため、FAQの利用を促進した。C社では、OSやネットワークに関する基礎的なノウハウはFAQにまとめている。そこで「ネットワークの共有フォルダが開けない」といった質問を受けたときには、直接回答するのではなく、「FAQのどこを参照してください」といった表現で利用を促した。同時に、FAQのこまめな更新を心掛けた。

工夫3――アプリケーションの使い方をデータベース化する

 情報システム部門が導入したアプリケーションの使い方については、従来どおり「情報システム部門で対応すべき内容かどうか」調査を行ったうえで回答した。ほぼ同じ内容の質問が続くことも多かったので、回答を記入した質問票をそのままデータベース化できる仕組みを作り、情報システム部門の中で共有した。

工夫4――対応できない問題を切り分ける

 情報システム部門が関与していないEUCツールや、利用者が無断でインストールしたソフトの障害については、そもそも情報システム部門が管理していないため回答できない。従って、あれこれ調べる前に「対応できない」旨を回答するようにした。どうしても対応する必要がある場合に限り、通常の「社内ヘルプデスク業務」の範囲を超えて、例外的に個別対応を行うことで 、利用者の利便性を犠牲にしないよう配慮した。

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