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プレイステーション用携帯電話接続ケーブルは“ナローバンド”の救世主?

テレビとiモードは実は相性がいい? ネットワークゲームの最適解は,何もブロードバンドだけに限らない。

【国内記事】 2001年4月27日更新

プレイステーションと提携したiモード

 iモードの公式メニューにアクセスしてみると,「メニューリスト」のなかの「iアプリメニュー」の下に「プレイステーション」のメニューが新設されたことにお気づきだろうか。

 プレイステーションの発売元のソニー・コンピュータエンタテインメントとNTTドコモは,iモードとプレイステーションを連携させたサービスを提供することで提携している。このため,iモードでもプレイステーション情報などが提供されることになったわけだ。

 この提携が生み出した製品の1つとして,3月29日にプレイステーション用の「携帯電話接続ケーブル」が発売された(2月21日の記事参照) 。今後,ネットワーク対応ゲームなどのサービスを利用するために必要となるという。忙しくて長らくプレイステーションの電源を入れていなかったのだが,このニュースを知ってさっそくケーブルを買いに走った。

 「携帯電話接続ケーブル」の機能が単にゲームができるというだけのことなら,肝心のゲームに費やす時間も少ない最近の生活状況からして,無視していた可能性が高い。

 今回は1つ妙にそそられる機能があった。それはこの携帯電話接続ケーブルを使い,iモードがプレイステーションを介することで,テレビ画面で利用できるというところだ。“テレビ画面で楽しむiモード”,非常に気になる文句だ。もしかしてそれは,簡易インターネットテレビとでもいえるものでは?

 なにしろ最近,iモードのブームにのっかって,テレビ画面でネット接続や電子商取引を行うことを,“Tモード”といっているらしい(2000年10月の記事参照)。作られるべくして作られた造語だと感じていたら,今度は本家のiモードがテレビ画面に出力できるようになったというわけだから面白い。

C-HTML対応ブラウザ搭載の「携帯編集」

 テレビ画面でiモードを利用するには,携帯電話接続ケーブルにCD-ROMで同梱されている「携帯編集」というソフトを使う。実に素っ気のないタイトルだが,このソフトにはブラウザとしてACCESS製の「Compact NetFront」がインストールされている。

 実は購入してから気がついたのだが,実際には全ての携帯電話で機能が利用できるわけではない。プレイステーション側は従来の「プレイステーション」「PS One」「プレイステーション2」の各機種に対応しているが,テレビでiモードを利用する機能については,いまのところ対応する携帯電話は「P502i」「N502it」「F502it」「P503i」「F503i」「SO503i」「D503i」と限られている。

 これは今回の製品がiモード端末のiモード機能を外部機器から使用する「iナビリンク」機能(用語)を利用しているからだ。カーナビなどでiモードと連携するために必要とされている機能だが,今回もその対応機種であることが条件となる。

実際に使ってみると……

 ケーブルは,コントローラの空スロットに接続する(写真1)。プレイステーションに「携帯編集」のCD-ROMを入れて立ち上げると,まずホームメニューが表示される(写真2)。ここでiモードの公式メニューへの接続や,電話帳,メールなどのメニューを示すアイコンが並び,プレイステーションのコントローラで選択する形になっている。

写真1

写真2

 iモードの公式メニュー「iメニュー」に接続してみると,お馴染みの画面がテレビ画面に拡大されて映し出された。「今週のお知らせ」では,iモードの画面上に挿入されるバナ−広告もちゃんと表示されている(写真3)。映し出されるのがテレビ画面で,操作がコントローラであるほかは,iモードとなんら変わらない。

写真3

 もちろん勝手サイトへのアクセスも可能だ(写真4)。URLの入力は,ソフトウェアキーボードを使って行なう(写真5)。ちなみにこのURLを入力しての勝手サイトへのアクセス機能は,初期状態では許可されておらず,パスワードを入力することで初めて可能になる。その後もパスワードを設定して利用を防ぐことが可能だ。これはプレイステーション,テレビということからくる利用シーンを考慮し,子供が好ましくないページにアクセスするのを防ぐことなどが目的だろう。

写真4

写真5

 それでは勝手サイトにアクセスできるなら,一般のPC向けのホームページは……と思いアクセスしてみた。結果は写真のとおりで,「1頁の最大サイズを超えたので中断しました」とiモードでもおなじみのメッセージが出て,読込みが中止されてしまう(写真6)。

写真6

 ただし,テーブルによるレイアウトや横幅を持ったホームページを表示させる機能はあるようだ。一般のホームページも表示できると面白いと思うのだが,携帯電話のパケット通信料にかかる負担を考えると,やはり現実的ではないだろう。また,着信メロディやiアプリなども利用できない。

 テレビの画面でiモードメールを利用することもできる。メールを書くのもURL入力と同様,ソフトウェアキーボードとコントローラを使って行なう(写真7)。これは正直,まどろっこしい。いまやダイヤルボタン入力に馴染みきった親指で,携帯電話を直接操作したほうが早く入力できるだろう。受信箱はこのとおり(写真8)。iモード端末のメールボックスのメールを読込んで,プレイステーションのメモリーカードに保存することもできる。

写真7

写真8

 このほかに,携帯電話の電話帳の編集もできる。iモードへのアクセスは前述のiナビリンク対応機種に限定されるが,こちらは501i,502i,209iの主要機種に対応している。

携帯電話のナローバンド接続が,ゲームには最適?

 さて,PCの世界はブロードバンドと常時接続に大きくシフトしようとしているわけだが,この「携帯編集」はテレビを使った,いわばナローバンドのインターネット接続を提供するものといえる。これはこれでなかなか面白い面もあるように感じられたが,ただし,万人受けするかは分からない。正直にいうと,今後来るiモードと連携したオンラインゲームの露払いとして,とりあえずC-HTMLのブラウザをおまけ程度に提供しておこうという感じに見受けられる。

 ところでふと,ナローバンドの簡易インターネット接続という点は,Lモード(用語)に似ているかもしれないな,と思った。

 ただし,NTT東西地域会社が提供予定の固定電話のネット接続サービスのLモードが主婦や高齢者などをターゲットとし,いままでインターネットに馴染みが薄かった市場を取り込もうとしているのに対し,こちらの場合は,iモードを持っているユーザー層とプレイステーションを持っているユーザー層がほぼ重なる。似通ったユーザー層を重ね合わせ,相乗効果を出そうとしているといえるだろう。これは正しいアプローチかもしれない。

 家庭の電話回線はたいていは親の名義になるわけだが,携帯電話なら若者自身が契約している。親に気兼ねせず,自分の裁量の範疇でオンラインゲームが楽しめるわけだから。

 ネットワークゲーム隆盛のための最適解は,何もブロードバンドだけとは限らないのだ。そうしたことを踏まえ,今後出てくるiモードと連携したゲームソフトのラインナップに期待したい。

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[大水祐一,ITmedia]

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