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人々の日常を変えるユーザー体験の飛躍――iPhone 4Sが見せる成熟と完成(1/3 ページ)

» 2011年10月12日 10時01分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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 わずか24時間で100万件

Photo iPhone 4S

 これはAppleが公表した全世界での「iPhone 4S」の予約実績だ。ここ日本でもソフトバンクモバイルとauの2キャリアですでに予約が始まっており、10月14日朝の発売まで、カウントダウンはすでに始まっている。

 既報のとおり、iPhone 4Sは以前のiPhone 3GSの時と同様に、デザインはキープコンセプトを貫いたものの、その中にあるハードウェアやソフトウェアはすべて一新。詳細を見れば、まったく別物といってもいいほどの進化をしている。特に今回はiOSの大規模バージョンアップと足並みがそろったこともあり、どれだけ進化・変化したのかは、多くの人々が関心を持つところだろう。

 筆者は今回、iPhone 4Sの日本発売に先立ち、じっくりとiPhone 4Sを試す機会を得た。今回はそのインプレッションを紹介しながら、iPhone 4Sの魅力と、同機がもたらす価値について考えてみたい。

“ユーザー体験の向上”に直結する高性能化

 今回のiPhone 4Sにおいて、多くの人の目に止まりやすいのが「パフォーマンスの向上(高性能化)」である。新開発のデュアルコアA5チップの搭載により、iPhone 4と比較して最大2倍まで処理速度が向上。グラフィックスでは最大7倍の性能を実現している。

 しかし、デュアルコアチップの採用自体はAndroid系のスマートフォンでもすでに始まっており、スペックを見ただけでは「他のハイエンドスマートフォンと同等のレベル」になっただけのようにも見える。だが、そうやって数字を比べて判断するのは早計というもの。実際にiPhone 4Sをじっくりと使ってみると、今回のパフォーマンスの向上が、そのままユーザーが得られる快適さや便利さの向上に直結していることが分かる。単なる性能向上ではなくユーザー体験の向上が実現されていることが、iPhone 4S最大の魅力であり、他のデュアルコアチップ搭載スマートフォンとの大きな違いだ。

 なぜ、iPhone 4Sは高性能化をユーザー体験の向上として実感しやすいのか。その鍵となるのが、新たに投入される「iOS 5」と、「ソフトウェアとハードウェアを一体的に開発・提供する」というAppleの揺るぎないこだわりだ。

 すでに多くの記事で紹介されているとおり、iOS 5では200を超える新機能が実装されており、これまでの優れたUIデザインを踏襲しながらも、ユーザー体験のレベルが大幅に引き上げられている。この新OSでは、「通知センター」やUIに統合された「Twitter」機能、位置情報とも連動する「リマインダー」、「写真」や「Safari」の基本機能の強化など、どれもが日常的なiPhoneの使い勝手を向上させるものばかりだ。そして、これらはiPhone 4Sの高い性能と組み合わさると、より快適度が増す。iPhoneではハードウェアにソフトウェアがしっかりと最適化されているため、デュアルコアA5チップの高性能さが「実感できる」のである。

PhotoPhoto iOS 5で実装された「通知センター」。iOS 5は従来のUIデザインを踏襲しながら多くの新機能が実装されており、それらはiPhone 4Sとの組み合わせで最も快適に動作する

 iPhone 4Sの快適さを感じるのは、これらiOS 5の新機能の部分ばかりとは限らない。例えば、iOS 4時代から実装されていた「マルチタスク」機能のタスク切り替えでは、iPhone 4よりもiPhone 4Sの方がすばやく快適に動作する。そのほかにも、アプリの起動から写真・地図の表示、ブラウザをはじめとする各種画面のスクロールでも、iPhone 4Sのきびきびした動作・滑らかに動くUIの気持ちよさを感じる部分が数多くある。iPhone 3G/3GSと比べて快適なのは当然のこと、iPhone 4と比較しても、その差が“体感できる”のである。

 iPhone 4Sではハードウェア性能の向上に合わせてOSをはじめとする各種ソフトウェア/サービスを刷新し、日常域での使いやすさや実用性の向上に結び付けている。一言で言えば、調和が取れているのである。この点は、他のスマートフォンに対する優位性であり、ユーザーにとっての大きなメリットと言えるだろう。

PhotoPhoto 以前からあるマルチタスク機能のタスク切り替えや、通知センターの割り込み通知などは、iPhone 4Sの動作速度の速さの恩恵を感じやすい部分だ

iPhone 4Sはコンパクトデジカメを駆逐する

Photo 大きく進化した800万画素カメラ

 iPhone 4Sではカメラ機能も大幅に強化された。撮像素子が800万画素の裏面照射型CMOSになり、光学系のレンズも一新。赤外線フィルタの搭載など、かなり本格的な仕様になっている。

 しかし、ユーザーにとって重要なのは、そんな細かなスペックのことではない。「とにかく綺麗な写真が撮れる」「カメラ機能がさらに使いやすくなった」ことだろう。

 まずは作例を見てほしい。

 遠近感のある風景、光と影がうまく表現された石畳とレンガ造りの街並み、きれいにボケ味が出ている接写、子どもたちの表情と背景がしっかりと描き出されたスナップ写真など、どれもがハイエンドなコンパクトデジタルカメラもかくやと思わせる出来映えだ。そして注目すべきは、これらの美しい写真が“難しいことを一切考えずに、フルオートで撮影できる”ということである。ユーザーが設定できる項目は「フラッシュライト」と「グリッド表示」「HDR」のON/OFFだけ。ユーザーは構図とシャッターのタイミングだけ考えて、あとはすべて“おまかせ”でいい。

PhotoPhotoPhoto iPhone 4Sで撮影した風景写真。遠近感がはっきり出ているほか、解像度が高くて質感もしっかりでている。色合いも自然だ。ヨーロッパ調の街並みの風景は、建物の色彩のほか、光と影の感じも美しい。HDRを使わずに、これだけの明暗が表現できている点に注目である
PhotoPhotoPhoto ハロウィンのカボチャを接写したところ。質感は高く、背景がボケていてきれいな写真になっている(写真=左)。川沿いの風景を移した1枚。木々の緑と木漏れ日、水面の反射などに注目してほしい。奥行きもあり、スマートフォンで撮影したとは思えない画質である(写真=中央)。子どもと時計台。横顔でも顔認識機能が働き、適正なフォーカスになっている(写真=右)
PhotoPhoto カボチャのロールケーキを接写。iPhone 4Sにはマクロモードの設定などないが、ケーキの質感とお皿の模様がきれいに描き出されている(写真=左)。子供たちのスナップ写真。顔認識機能で2人の顔にピントが合っている。髪の毛の部分の描写に注目。さらに背景がソフトにボケて雰囲気のいい写真に仕上がった(写真=右)
PhotoPhoto 花畑でのスナップ写真。顔認識機能によって子供たちの顔にフォーカスが合い、写真全体に奥行きが出ている(写真=左)。花の接写。きちんと背景がボケて、それらしい写真になっている(写真=右)

 iPhoneがこれだけシンプルなカメラ機能を実現しているのはソフトウェアの優秀さによるものだが、iPhone 4Sだと、この優秀なソフトウェアがスピーディに動作する。カメラは約1.1秒で起動し、約0.5秒間隔での連続撮影が可能。感覚的には「カメラアイコンをタップしたら、一拍おいてすぐに撮影可能になる」感じだ。オートフォーカスや顔認識機能の動作も快速そのもの。スマートフォンのカメラ機能にありがちな“まだるっこさ”はまったくない。このようなすばやく小気味よい動きは、子どもの写真を撮るときに重宝するのはもちろん、普通の写真撮影でもシャッターチャンスを逃さずストレスなく扱えることにもつながる。

 そして、もう1つiPhone 4Sのカメラ機能で忘れてはならないのが、暗所撮影の性能が劇的に向上したことだ。F値が2.4になった新開発レンズやソフトウェア側のノイズ制御により、薄暗い場所でもフォトライトを使わずに、ナチュラルで雰囲気のいい写真が撮影できる。一般的なスナップ写真はもちろん、夜景や接写でもすばらしいパフォーマンスを実現しており、しかもこれらの暗所撮影でも、ユーザーは露出やシャッタースピードのことなどまったく意識する必要はないのだ。すべてカメラ任せのフルオートで、作例のような写真が撮れるのである。

PhotoPhoto 夜に撮影したハロウィンイベントの写真。建物の2階から見下ろして撮影したものだが、フォトライトなしでもそれなりの写真が撮れている

 iPhone 4Sのカメラ機能の総合力は、一般的なコンパクトデジタルカメラと同等以上になっており、ソフトウェア的な使いやすさ・日常域での使い勝手のよさまで加味すると、専用機を凌駕するレベルと言っても過言ではない。撮影した写真をその場で編集し、Twitterに投稿する機能まで備えていることを考えると、iPhone 4Sのメリットはさらに際立つ。カメラ機能を重視するユーザーはもちろん、子どもの写真をたくさん撮るファミリー層や、友達同士で写真を楽しむ女性層などは、iPhone 4Sのカメラ機能は是非チェックしておきたいポイントである。

PhotoPhoto 撮影した写真はフォトロールの編集機能で、その場で加工できる。トリミングや赤目軽減、暗部補正などがワンタッチでできるのは便利である
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