5月27日まで開催中の「ワイヤレスジャパン2016」。ワイヤレスジャパンといえば、日本Androidの会秋葉原支部による“メイドさん”と近接通信を絡めたセッションが恒例になっている。ITmedia Mobileでも、メイドさん目当てに近接通信の動向を追うべく、可能な限りこのセッションを取材してきた。
2016年のメイドさんセッションは、昨今のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)ブームに乗って再び脚光を浴びつつある「RFID(Radio Frequency Identifer:ICタグ)」がテーマ。日本Androidの会 秋葉原支部所属で、ハヤト・インフォメーションサービスでRFID/NFCエバンジェリストを務める大坂泰弘氏が、メイドさんにRFIDの利活用を提案するという設定で、例年より「固め」に進行した。
RFIDで私たちにとって一番身近なものは、NFC(Near Field Communication)だろう。NFCは「Apple Pay」「Android Pay」など、昨今では決済手段として注目されがちだが、手軽にRFIDの便利さを体験できる側面も忘れてはいけない。秋葉原支部では、メイドさんからNFCに関するあれこれを学べる「ハンド“メイド”NFCワークショップ」を開催している。
NFCタグは多くのAndroidスマホで読み取ることができ、確かに身近ではある。しかし、スマホとタグを近づけなければならない上、読み書きが「1対1」でしかできないという欠点もある。
そこで登場するのが、UHF帯の電波を使って通信する「UHFタグ」だ。UHFタグはタッチ操作が不要で、ある程度の空間の範囲内にあれば読み取りが可能で、同時に複数のタグを読み取ることもできる。UHFタグは、NFCタグよりも利便性の面では有利なのだ。
一方で、UHFタグには課題もある。NFCタグはAndroidスマホを使って読み書きできる上、PC用の外付けリーダライタ(R/W)も数千円程度で購入できる。それに対し、UHFタグはスマホ単体では読み書きできない上、R/Wを買おうにも数十万円と高価で個人には手が届かなかった。しかし、最近ではスマホとBluetoothで接続して利用する、数万円と比較的安価なUHFタグR/Wも登場している。個人でも、やろうと思えばUHFタグを活用できるレベルになっているのだ。
安価なR/Wの出現によって、以前と比べれば導入しやすくなったRFID。IoTブームとも相まって、企業ではドローンやロボットを使って店内の在庫管理を行う試みや、店内にリーダを常置して商品や店員の位置を常時検知するソリューションが登場している。商品の位置情報を利用すると、「一度手に取った商品を棚に戻す」「ある商品を手に取った人が次に向かう場所」といった客の行動を把握できるようになる。客の行動を「ビッグデータ」として解析することで、従来は分からなかった客のニーズや行動を可視化し、売り場作りや品ぞろえに反映することができるのだ。
では、メイドさんがRFIDを使うシーンとはどのようなものだろうか。メイド喫茶を例に取ると、まず店舗での物品管理やメイドさん(店員)が身につける制服やアクセサリーの管理、店内での備品探しに使えるという。また、客が持つ会員証に組み込んでおけば、顧客情報を事前に表示して接客に生かすこともできるという。
セッションでは、実際にメイドさんが商品の棚卸しをするデモも行った。
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