グーグルのWalletサービス「Android Pay」が12月13日、日本でもサービスを開始した。アップル「Apple Pay」は、サービス開始こそひっそり始まったものの、その後、メディアが一斉に飛びつき、大盛り上がりを見せた。
しかし、Android Payはたいした注目を浴びることなく、早くも忘れ去られそうな雰囲気もある。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年12月17日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
実際のところ、サービス内容が本当にしょぼい。使えるサービスは「楽天Edy」のみ。しかも、使える端末は「おサイフケータイ対応Android」となっている。つまり、おサイフケータイ対応Androidを持っていれば、従来の楽天Edyが使えるわけで、あえてAndroid Payを使う意味が見いだせない。キャンペーンで利用を開始すれば400円分がチャージされるようだが、それをもらって、「お役目ごめん」といった感が強いのだ。
日本でWalletサービスを提供しようと思えば、やはりFeliCa対応は避けられないだろう。いまさらNFCでサービスを展開したところで、使える場所が限定的であれば、利用が広がることはない。
日本ではFeliCaを使うという決断は正しいが、楽天Edyだけでなく、できればApplePayに乗り遅れたnanacoやwaonといったプリペイド系アプリを揃えるといった努力は必要だったように思える。とはいえ、いずれもすでにおサイフケータイ対応Androidで使えるだけに、たいしたインパクトにはならないだろう。
一般的に見れば「今回のAndroid Payにおける日本展開は妥協の産物か」ともいえそうだが、技術的には背後で様々な準備が進んでいると思われる。
実際、Android 7.0からは「HCE-F」に正式に対応している。これは、セキュアエレメントというセキュリティ専用チップを使わずに、スマホのプロセッサーとクラウドによって、NFCしか対応しないスマホであっても、FeliCaを使えるようにしてしまおうという技術だ。これにより、海外のスマホであっても、日本国内でFeliCaが使えるようになる、と言われている。
今回、なぜか、HCE-F対応の話は出なかったのだが、将来的には、SIMフリースマホであっても、NFC対応であれば、HCE-Fによって、日本国内でFelicaが使えるようになる可能性もありそうだ。そうすれば、日本国内で流通している「おサイフケータイ対応Android」でなくても、FeliCaが使えるようになる。例えば、いま人気のファーウェイ・P9やMate9あたりでも、FeliCaが使えれば、相当、インパクトは大きそうだ。
果たして、今回のAndroid Pay開始は、HCE-Fを睨んだものなのか、それとも実現は難しいものなのか。HCE-Fがなければ、Android Payは生き残っていけないように思えるのだが。
© DWANGO Co., Ltd.