シャープが夏商戦向けに投入する新型スマートフォン「AQUOS R3」は、カメラ、ディスプレイ、基本性能を強化したフラグシップモデル。5月8日に開催した発表会で、通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏が、AQUOS R3開発の狙いを説明した。
2018年に発売した「AQUOS R2」では、動画専用の超広角カメラを搭載し、動画撮影中に、最適なシーンの静止画を自動で保存する「AIライブシャッター」を採用した。シャープの調査によると、AQUOS R2を購入したユーザーのうち、38%は動画の撮影機会が増え、61.7%は動画を投稿、共有する機会が増えたという。
AQUOS R2の動画撮影機能に手応えを感じた一方で、「スマホで撮った動画はあまり見ない」問題があることに着目。シャープがスマートフォンユーザー全体に行った調査によると、撮影した動画の80〜90%が、再生されることがなく、ほったらかしになっているという。なぜか? 例えば子どもの動画を1分撮る場合、撮影をするときは一緒に遊んでいる感覚なので、1分ならあっという間だと感じるが、いざ再生すると、見る側は画面の外にいるので、同じ1分でもより長く感じるという。これを「体感時間の差」だと小林氏は言う。
もう1つは「期待行動の差」にあると小林氏は言う。動画は通常、これから面白いことが起きそうだから撮るわけで、必ずしも面白い動画が撮れるとは限らない。筆者も経験があるが、いざ子どもやペットの動画を撮ったものの、意図した通りに動いてくれなかったり、カメラから遠ざかったりして、微妙なデキになることは多い。こうした動画がたまると、再生することが面倒に感じてしまうわけだ。
そこでシャープはこの問題を解決すべく、動画専用カメラやAIライブシャッターは継承しつつ、R3では15秒のダイジェスト動画を自動で作成する「AIライブストーリー」を新たに採用した。AIが最適だと判断したシーンを自動で抽出し、15秒にまとめてくれる。15秒にしたのは、動画を視聴するのにストレスを感じない時間だと判断したため。「早回ししているわけではない。いいシーン、いい表情、いい構図をつなげているので、起承転結は収まっている」と小林氏。撮影時とは違った新たな発見ができること、エフェクトや音楽を付けることでシェアしたくなることもメリットに挙げる。
専用アプリや個別の設定は不要で、カメラアプリから動画を撮影すると、自動でダイジェスト動画が生成される。20〜30秒ほど撮影を続けると、ダイジェストが作成できることを示すアイコンが現れる。撮影を終了すると、「Standard」「Fun」「Relax」という3パターンのダイジェスト動画を見られる。それぞれで動画の内容やBGMは異なる。Standardは自動で保存されるが、FunとRelaxは手動で保存する形となる。
動画にはエフェクトや音楽が付けられ、人間や動物が写っていると、サムネイルにエフェクトの一部や顔が表示されるので、ダイジェスト動画であることと、再生前にどんな動画が保存されているかが分かりやすい。ダイジェスト動画は15秒で固定されており、30秒や60秒などに変更することはできない。なお、複数の動画を組み合わせてダイジェスト動画を作成することはハードルが高く、現時点では搭載していないが、ユーザーの声が挙がれば、搭載を検討するとのこと。
動画用カメラ+静止画用カメラという構成自体はAQUOS R2と同じだが、AQUOS R3ではカメラセンサーと画質処理エンジンを一新した。動画用カメラには、クアッドベイヤー構造のセンサーを採用。フルHDで撮るときは4画素を1画素として使うことでノイズを低減する。一方、4Kで撮るときはRGBの画素配列を変更することで、解像感を向上させた。
静止画用カメラのセンサーは、画素ピッチを1.4μm、F1.7とすることで、AQUOS R2よりも2.4倍の光を取り込めるようになった。また全ての画素に位相差センサーを設けることで、より高速かつ正確にAFを動作できるようになった。
画像処理エンジンは「ProPix2」に進化させ、手ブレ補正機能を強化した。AQUOS R2と同じく、静止画ではタッチブレを防ぐために光学式手ブレ補正を採用し、動画ではパンブレを防ぐために電子式手ブレ補正を採用した。動画の電子式手ブレ補正は、AQUOS R2よりも補正角(トリミングする部分)を減らしつつ、より滑らかに補正できるようになった。シャープは3.5倍性能が上がったと説明する。
一方、いくら手ブレ補正機能を強化しても、防ぎきれないブレがある。それが「被写体ブレ」だ。例えば子どもやペットを撮影するとき、急に被写体が動いてしまってブレてしまうことが多い。そこで、AQUOS R3では被写体ブレ検出エンジンを搭載した。被写体ブレを起こすのはシャッター速度が遅いからだが、シャッター速度を上げるとノイズが出やすくなる。AQUOS R3では被写体の動きをリアルタイムで検出し、最適なシャッター速度とISO感度で連写し、最もブレが少ない1枚を選択。最後にノイズを除去して仕上げる。
この被写体ブレ補正は、AQUOS Rシリーズでは特に重要だと小林氏は言う。AIライブシャッターで動画と静止画を同時に撮るシーンでは、動画は被写体に動いてほしいが、静止画は止まってほしい。この矛盾するシチュエーションでも、被写体ブレを抑えられれば、動きながらでもクリアな静止画を残せるというわけだ。
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