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IMT-2000は誤解だらけ?

IMT-2000で謳われた,「映像配信」「国際ローミング」といった機能はどうなっているのだろうか。第3世代携帯電話に過度な期待をしてはいけない。クアルコム社長がIMT-2000の誤解を解く。

【国内記事】 2001年11月1日更新

 IMT-2000,こと第3世代携帯電話が日本でも「FOMA」として登場したが,その意味合いに関しては賛否両論だ。「映像配信が可能になる」「海外でも使える」「ワイヤレスLANに取って代わられる」といった機能や風評について「IMT-2000には多くの誤解が世間に出回っている」と評するのはクアルコム・ジャパンの松本徹三社長だ。

国際ローミングの誤解

 IMT-2000では世界中で2GHz帯の電波帯を使い,方式もある程度統一することで“国際ローミングが可能になる”ことが謳われている。

 しかし「グローバルフォンは今の技術でできる。逆にIMT-2000では実現できない」と松本社長は言う。

 そもそもFOMAで国際ローミングが可能になるのは,2GHz帯を使うW-CDMAが世界中で採用されると予測してのこと。国内ではNTTドコモがサービスを始めたが,“将来的にW-CDMAに移行”といわれていた欧州は失速し,GSMとその発展型であるGPRS,EDGEが主流になっていきそうな勢いだ。米国では第3世代への流れはさらに遅く,しかもW-CDMAではない方式が主流になると考えられている。

 2GHz帯でW-CDMAサービスを開始するには莫大な投資が必要となり,不況にあえぐ欧米のキャリアでは耐えられないという見方もある。ましてや中南米にW-CDMAサービスを期待するのは難しい。

 逆に第2世代の世界の携帯電話方式の分布を見ると,日本がPDCで孤立している以外は,北米・南米とアジアがcdmaOne,欧州とアフリカがGSMでほぼカバーされている。北米でもGSMは利用可能で,事実上の世界標準はGSMだ。

 実際GSMでは国際ローミングできるのが当たり前。国ごとに多少異なる複数の周波数帯に対応することで,かなり多くの地域で利用できる携帯電話も存在する。「cdmaOneにGSMを追加すればすぐに(国際ローミング端末は)できる」と松本社長は語る。

 国内でもW-CDMAの登場以前から,北米,香港,オーストラリアなど世界6カ国で利用できるcdmaOne端末がKDDIから発売されている(7月30日の記事参照)。

 ただし「(国際ローミングには)市場がない」と松本社長が言うのも事実だろう。「米国の調査会社によると,欧州とのローミングが可能になることで増加する利用者は0.8%,という結果が出た」という。

映像配信の誤解

 第3世代携帯電話では,テレビ電話をはじめ,映像配信などビジュアルなデータの送受信が可能になると言われている。技術的には384Kbpsという高速な通信速度を使えば動画像も送れるだろう。

 しかし「周波数のコストが高いから,MP3やテレビ電話などは使えない」と松本社長は語る。

 長時間の映像配信や双方向リアルタイム映像通信は,限りある周波数を使って実現する携帯電話では“経済的に”無理だということ。実際ドコモのFOMAでも,テレビ電話は通話料金の1.8倍になっている。可能ではあるものの,高い料金を払ってまで使う価値があるかどうかは疑問だ(9月25日の記事参照)。

 しかも「(テレビ電話は通話の)5倍の帯域を使っているが,1.8倍の料金に抑えた」とドコモは語っている(4月26日の記事参照)。つまり電波の使用効率で考えたら,テレビ電話の効率の悪さは際立っており,皆がテレビ電話を使ったら回線がパンクする上,収益も上がらないというわけだ。

第3世代携帯電話は無線LANにとって代わられる?

 第3世代携帯電話に対する過度の期待の裏返しか,“第3世代携帯は全くダメ”という議論もあるようだ。「(第3世代携帯電話は)ひょっとすると第2のハイビジョン? (飛び越して)無線LANに行ってしまうのでは?」。こんな風潮を評して,「これも大きな勘違い」と松本社長は語る。

 確かにデータ通信の速度やコストで見れば,免許不要の2.4GHz帯を使いIPベースで作られたIEEE802.11bなどの無線LANは,速度,コスト共に第3世代携帯電話を凌ぐ。第4世代携帯電話では無線LANなどもシームレスに統合した無線ネットワークが構想されており,“インターネット型のデータ通信の需要”を満たすのは無線LANだろう(7月19日の記事参照)。

 しかし松本社長は「両者は補完するもの。(クアルコムではCDMAと無線LANの)デュアルモードのチップさえ検討している」と言う。

 その論拠は利用エリアの違いだ。今後公衆向けの無線LANが普及したとしても,基本的にはある程度の需要が見込まれる人口密集地に限られるはず。「どんなものでも“ここでしか使えない”というものを持ち運べますか? 移動環境(第3世代携帯電話)と半移動環境(無線LAN)の混在が今後の姿」(松本社長)

過度な期待が招いた第3世代携帯電話のブレーキ

 ドコモのFOMAは技術的な問題はほとんど取り除かれ,クリアな通話品質と高速なデータ通信を楽しむことができる。まったく新規に立ち上げたにも関わらず,ここまでの品質でサービスを提供できるのは“さすがはドコモ”といったところだろう。

 それなのに「料金が高い」「第3世代携帯電話ならではのメリットがない」と語られることがあるのは,まさに世間が過度に期待をしていたからだ。当初から通信キャリアは「第3世代携帯電話が主流になるのは2004年から」と語っており,ロードマップもそれに従って作られている(4月11日の記事参照)。

 第3世代携帯電話に過度に期待してもいけないし,夢が実現しなかったからといって失望する必要もないだろう。しばらくの間は,“通話がきれいで高速なiモード端末”としてFOMAを扱うのがいいのではないだろうか。

[斎藤健二,ITmedia]

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