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“コミケの力”をアニメにも――“権利者公認”2次創作の祭典(1/2 ページ)

» 2007年09月25日 12時40分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「アニメの2次創作、権利者と一緒にビジネス化しませんか」――アニメ製作会社の団体・日本動画協会は今秋、こんな趣旨の企画「アニメ・チャレンジオーディション」を行う。著作権をがっちり守りながらビジネス展開してきたアニメ業界にとって、2次創作を広く許諾するという試みは異例だ。

画像 2次創作で利用できるアニメ作品の一部

 「鉄腕アトム」「魔法の天使クリィミーマミ」「機動警察パトレイバー」「新世紀エヴァンゲリオン」など、動画協会会員企業が権利を持つアニメのキャラクターやストーリーを広く開放。Flashアニメ、漫画、キャラクター商品、ビジネスアイデアといった2次創作を7〜8月に募集した。

 応募があった約70作品のうち、権利者の審査を通った11作品を、10月4日から開かれる「Japan Animation Contents Meeting 2007(JAM 2007)」(秋葉原UDX)で展示。来場する流通業者や玩具メーカーなどと、ビジネスの可能性について検討する。

 加えて、手塚治虫作品の2次創作を募集するサイト「OPEN POST」も11月にオープン予定だ。手塚漫画やアニメ、設定資料などを無償公開して2次創作を投稿してもらうサイトで、ユーザー同士で作品を評価する仕組みを備えるほか、権利者側でも作品をチェック。クオリティーが高いものについては商品化を検討する。

 「『(アニメ作品を)絶対使っちゃだめ』と囲わず、ちょっと開放してみれば、そこから新しい才能やビジネスが発掘できるかもしれない」――動画協会事業委員会委員長で、手塚プロ著作権事業局の清水義裕局長は期待する。

 発想のきっかけは、昨夏初めて訪れたコミケだった。「コミケには“グレートマイナーパワー”が集まっている」

「アニメフェアの比ではない」コミケのパワー

画像 昨年の夏コミで、自らも手塚治虫漫画の2次創作を数十冊購入したという清水さん。「ブラックジャックもアトムも買ったけど、手塚プロの領収書くれって言えなくてさ。1万円ぐらい自腹で買ってきたよ(笑)」

 コミケは年2回、東京ビッグサイト全館(東1〜6ホールと西1〜4ホール)を使って3日間にわたって行われている。「動画協会は年1回、ビッグサイトの東1〜3ホールで1日だけアニメフェアをやっているが、コミケのエネルギーはそれの比ではない。1サークル当たり机1つ分のスペースを1日しか借りられないというルールだが、それでも表現したい人が集まる」

 コミケでは、権利者の許諾を得ていない2次創作漫画が大量に流通する。「出版社も見て見ぬふりをしているのだろうが、それならむしろ積極的に認めてやり『ここなら2次創作を作ってもいいよ』という場を作った方がいいのでは」――清水さんはそう考えて「OPEN POST」の企画を練り、今年初開催となるJAMでも2次創作を募集することにした。

 JAMは、経済産業省と民間が共同で開催するコンテンツ関連イベント「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」(CoFesta)の1つだ。「制作者が作品を直接売り込む機会としては、春のアニメフェアがある。秋のJAMは“コミケのエネルギー”を活用して2次創作を一般募集すれば、制作者側に負担がかからない形で新たな才能やビジネスを発掘できるのではと期待している」

アボカドを許さない寿司は、ワールドワイドにならなかった

画像 tezuka modernoの商品

 2次創作は、原作の良さを再認識してもらうきっかけになる上、原作者には考えも付かない発想が新たな市場を切り開く可能性がある。「寿司がワールドワイドになったのは、アボカドとカリフォルニアロールを認めたから」。清水さんはこんな例で説明する。

 「アボカド入りのカリフォルニアロールを許したから生魚が苦手な人も寿司を食べ、トロにも興味を持ってくれた。江戸前のネタで『握り3年、飯炊き5年』とか言っていたらそもそも寿司はワールドワイドにならなかった」

 手塚プロはこの「アボ・カル方式」でビジネス展開してきたという。例えば「鉄腕アトム」の2次創作として浦沢直樹さんが描いた漫画「PLUTO」(プルートウ)や、デザインチーム「プレイセットプロダクツ」と協業し、アトムなどのキャラクターをかわいらしくデフォルメした「tezuka moderno」シリーズなど、外部クリエイターの力を積極的に取り入れてきている。

 「PLUTOからアトムを知った人もたくさんいる。そのうちほんの少数でも『原作のアトムってどんなのだろう』と思ってくれる人が出てくれば、それだけで十分効果がある」

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