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ついに登場“夢の”有機ELテレビ 「ソニー復活の象徴に」

» 2007年10月01日 18時06分 公開
[ITmedia]
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 ソニーは10月1日、世界初の有機ELテレビ「XEL-1」を12月1日に20万円で発売すると発表した。バックライトが必要な液晶と異なり、画素が自ら発光する有機ELの特徴をいかした高画質が売りだ。十数年にわたって取り組んできた技術の製品化にこぎ着けた中鉢良治社長は「技術のソニーの復活と、反転攻勢の象徴にしたい」と胸を張った。

 パネル部は11V型(251×141ミリ、960×540ピクセル)。バックライトが不要なため、厚さは3ミリにまで抑えることができた。極薄のパネルを本体からスタンドで支えるようなデザインとし、有機ELの「未来」らしさをアピールするデザインだ。

 1080p/1080i、720p、480p/480iの入力に対応し本体には地上・BS・CSのデジタル3波チューナーと地上デジタル用バーアンテナを内蔵し、室内に設置するだけで地上デジタル放送を視聴できるようにした。HDMI端子も備える。

 スタンド部を含むサイズは287(幅)×253(高さ)×140(奥行き)ミリ、重さ2.0キロ。

測定限界を超えるコントラスト比──「未体験の高画質」

 東京・品川のソニー本社で開かれた発表会で新製品が披露されると、輝く有機ELパネルに報道陣が見入った。自発光画素ならではの精細感や、鮮やかながら“こく”がある色表現などは一般的な液晶テレビを大きく上回る。「未体験の高画質だ」──井原勝美副社長は世界初のテレビをこう表現する。

photo 色光の3原色である赤、緑、青に輝く有機EL材料

 有機EL(Electro Luminescence)は、電気を流すと発光する有機素材を画素に使うディスプレイ技術。薄型化が可能な点に加え、高コントラスト・輝度、広い色域などの特徴を持ち、長らく「次世代ディスプレイの本命」と期待されてきた。

 だが大型化が進まず、これまでに採用されたのはKDDI(au)の携帯電話「MEDIA SKIN」やデジタルカメラの背面ディスプレイといった小型機器どまり。テレビ用大型パネルも各メーカーが試作してきたが、テレビという最終製品として製品化された例はなかった。

 ソニーは1994年に有機材料の研究を開始し、同技術の実用化に取り組んできた。2004年には当時としては世界最大サイズとなる3.8型カラーパネルの量産化に成功し、PDA「CLIE」に搭載して発売した。

 「ソニーのエレクトロニクスの復活」を掲げて就任した中鉢社長は05年、並行して研究してきたFED(Field Emission Display)などをあきらめ、次世代ディスプレイ技術の研究開発を有機ELに一本化。開発本部を新設して「液晶の次」を担う有機ELに集中してきた。

 今回発表したのと同サイズのパネルは、今年1月に米国で開かれた「International CES」で披露。4月には井原副社長が有機ELテレビを年内に発売することを宣言し、この日の製品発表となった。

photo 極薄のパネルが動画を表示する

 何より目を引くのは画質だ。「コントラスト比は100万:1以上。使っている測定器の限界を超えている」(テレビ事業本部E事業開発部の白石由人部長)。黒色を表示する場合は画素が発光をやめるため、バックライトを常時点灯する必要がある液晶と異なり「完全な黒」を表現できるためだ。「エンジニアが最もほれたところ。他の方式ではできない」(白石部長)

 輝度は600カンデラ/平方メートルだが、高効率有機EL技術によりピーク輝度を高め、金属に反射する太陽光やカメラのフラッシュ光といった強いきらめき光の表現力が高い。発色性の高い有機材料の採用で色再現性をNTSC比で110%に高めた上、特に低階調側の再現性の高さが質感表現に貢献しているという。応答速度は「数μ秒」と液晶の1000倍以上な上、新開発の駆動回路により動画の表示も滑らかだとしている。

 パネル部の消費電力は、同社製20V型液晶テレビに比べ約4割削減し、全体の消費電力は45ワット。低消費電力な“環境にやさしい”薄型テレビとしても訴求していく。

 ただ、パネルの寿命は3万時間と、一般的な液晶テレビの半分程度にとどまるが、「1日8時間で10年使ってもらえる十分な時間」(白石部長)としている。

「社員がたすきをつないできた成果」

photo 中鉢社長

 発表会で中鉢社長は「ソニーはイノベーションのプロセスが途切れているのでは、という声があった。有機ELテレビは、技術者や生産現場など、社員がリレーのようにたすきをつないできた成果だ」と感慨深げだった。

 新製品には、技術力の低下が指摘されてきたソニーの意地が詰まっている。材料レベルから磨いてきた高効率の有機EL技術や、0.7ミリの基板2枚で有機EL材料をサンドイッチするパネル、地上デジタル用アンテナも内蔵した小型な本体──は、長く取り組んできた有機EL技術と、積層基板技術、高密度実装技術の実績の成果だ。

 パネルは、小型液晶生産子会社のエスティ・エルシーディで生産する。CLIEに搭載したパネルと同じラインを活用するため、「新規投資は限定的」という。

 20万円という価格について、井原副社長は「画質やデザイン、商品力について様々な人から意見を聞いて、長きにわたって維持できる価格として私が決めた」という。「採算性はあまり考慮していない」という。

photo 新製品を披露する井原副社長。イメージカラーはエコを意識して緑を採用している

東芝も──有機ELの時代到来か

 今後はさらなる大型化が課題になる。1月のCESでは11V型と同時に、フルHD表示に対応した27V型も出展していたが、発表会では将来の具体的な計画は明らかにしなかった。

 井原副社長は「当面は液晶を置き換えるものではない。ソニーのテレビ事業も液晶に軸足を置いて拡大していく」と当面は液晶「BRAVIA」中心というスタンスを強調するが、、「いつごろ、どれくらいかは今のところ言えないが、液晶の次に来る大きなポテンシャルのある技術」として有機ELに期待をかける。

 東芝の西田厚聡社長も「09年に家庭用テレビ向けの大きめの有機ELを出す」と宣言しており、今後数年で有機ELテレビの普及が本格的に始まりそうだ。

photo 2日に開幕する「CEATEC JAPAN」に出展するほか、東京・銀座のソニービル、大阪・梅田のソニースタイルストア(ハービスエント内)で展示する

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