米MicrosoftはHTML5やCSS3、SVG(Scaleable Vector Graphics)などのWeb標準への愛を宣言し、次期版ブラウザ「Internet Explorer(IE)9」のPlatform Previewをリリースした。同ブラウザでこれまで以上の相互運用性を実現すると約束している。
同社はレドモンド本社のIE9 Test Driveイベントで、標準に準拠したブラウザを提供し、ハードウェアの革新を活用することで、開発者の次世代Webアプリケーション構築を支援する戦略について解説した。
3月11日に開かれたこのイベントで、IE担当ジェネラルマネジャー、ディーン・ハチャモビッチ氏は、Microsoftの目標は、開発者がCSS、HTMLなどのWeb技術を利用して、PCハードを活用できるようにすることだと語った。
そして同社はラスベガスのMIX 2010カンファレンスで、IE9 Platform Previewを発表し、Microsoftは標準への準拠に消極的だとしてきた批判派を驚かせた。IE9 Test Driveは「HTML5への愛の集い」と呼べたかもしれない。
「簡単に言うと、われわれはHTML5を愛している」とハチャモビッチ氏は語った。「HTML5が大好きなので、この規格を実際に動かしたいと思っている」。だが同氏は、HTML5の定義は2つあると考えているとも語った。1つは仕様そのもので、もう1つは「HTML5はオーラをまとっている――Web2.0のように」という。
同氏は、開発者は1度マークアップを書いたら、それが複数の場所で同じように動作するようにしたいと考えていると話す。「USBと同じだ。『USB左用』とか『USB右用』とかは要らない。ただUSBが動きさえすればいい」
MicrosoftのIE担当主任グループプログラムマネジャー、ロブ・モーセリ氏は、「IE9の計画を立て始めたとき、初めにやったことの1つがHTML5を検討することだった。AJAXの世界から次世代のHTML5アプリに移行することになると分かっていた」と語る。
MicrosoftのIE9での目標は全体で3つある。「同じマークアップをあらゆる場所で利用できるよう、HTML5と最高の相互運用性を持つ」ブラウザの開発、グラフィックスのハードウェアアクセラレーション、高性能ブラウザの実現だ。同社はIE9で、この3つの目標すべてを実現するとしている。実際、ブラウザ性能を担当するIE担当主任プログラムマネジャー、ジェイソン・ウェバー氏は、IE9はプレビュー版でも「恐ろしく速い」としている。
IE担当上級プログラムマネジャー、ジョン・フルバティン氏は、「同じマークアップ」という命題はIEチームのスローガンになっていると語る。「同じHTML、同じCSS、同じJavaScriptを異なるブラウザで動かしたい」からという。
一方モーセリ氏は、IEチームはプラグインが要らないように、多数の機能をIE9に盛り込もうとしていると語る。もちろん、これを受けて、IE9のHTML5サポートはMicrosoftのSilverlightプラグインの敵になるかもしれないという疑問が持ち上がっている。
MicrosoftのWindowsおよびWindows Live担当社長スティーブン・シノフスキー氏はこの疑問に「HTML5の標準化は進んでおり、当社はそれを支持している」と答えている。「AdobeにFlashがあるように、プラグインの世界というものがあり、Silverlightはその一部だ。わたしはこの件について、ある技術が別の技術に取って代わるとか、別の技術と競合するという見方はしていない」
Ovumのアナリスト、ジョナサン・ヤーミス氏はMIX10で、シノフスキー氏と同様の意見を述べた。「(Microsoftのコーポレート副社長)スコット・グスリー氏は、Silverlightの普及率は、ネット接続デバイスの60%に近づきつつあると言っていた」とヤーミス氏は言う。「だがHTML5は90%以上のソリューションだ。Silverlightを同規格の前から遠ざけておけば、競合やカニバリゼーション(食い合い)の問題はないと思う」
だがモーセリ氏は、IE、Google Chrome、Firefox、Safariなど各種ブラウザの間で、仕様の実装が異なる可能性があることも認めている。さらに「仕様完成前に実装すれば、何かが壊れてしまう可能性もある」と同氏。だが、「重要なのは、HTML5の実装にふさわしい時期だとわれわれが考えているということだ。実装に取り掛かるのに十分なレベルに成熟したと思う」
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