カンブリア紀(5億4100万年〜4億8500万年前)に多く登場した風変わりな生物の中でも最も珍妙なものとして知られる「ハルキゲニア」の復元図が書き換えられた。最初に描かれた復元図では上下が逆さまだったことが知られているが、最新の研究で、実は前後も逆だったことが分かったというのだ。
カンブリア紀には現生の動物につながる多種多様な生物が一気に登場した。この「カンブリア爆発」をよく伝えるのが、カナダのバージェス頁岩から見つかった5億500万年前ごろの不思議な化石。ハルキゲニアは、その中でも最も変わったものの1つだ。
ハルキゲニアは当時の海に住んでいた。細長い本体に多数の長いとげと7対の脚が生えた姿をしており、体長は1〜5センチほど。「有爪(ゆうそう)動物」に属していると考えられている。有爪動物は、現在はカギムシという熱帯の森に住む長い芋虫のような生物だけが唯一となっている。
ハルキゲニアが発表された際は、とげの部分が足だと考えられ、上下逆さまの形で復元図が描かれた。後に逆だったことが判明し、復元図は書き換えられていた。
英ケンブリッジ大学と、バージェス頁岩の化石の収蔵で知られるカナダのロイヤルオンタリオ博物館、トロント大学がこのほど英科学誌「Nature」に発表した論文で、ハルキゲニアはまた新しい姿で描かれている。
研究によると、これまで頭部はこぶのような膨らみを持つのっぺらぼうとして描かれていたが、新たな復元図ではこぶがなくなり、目を持つ長い首を持つ生きものとして描かれている。そもそも、新たに描かれた頭部は、これまで尾部だと考えられていた部分。前後が逆だったのだ。
研究者はロイヤルオンタリオ博物館と米スミソニアン博物館が収蔵する165個の化石を電子顕微鏡で詳しく調べた。すると、尾部だと思っていた部分に目と一連の歯が見つかったのだという。「化石を電子顕微鏡で調べた時、最初は目が見つかるのではという期待を持っていたが、歯がこっちを見て笑っていたので驚いたよ」とケンブリッジ大のマーティン・スミス氏は述べている。
これまで頭部だと考えられた部分は、死後に肛門から排出した内臓の内容物などではないかと考えられるという。
ハルキゲニアから見つかった歯は、生物の進化史を考える手がかりになる。歯はエビやカニなど脱皮する動物の初期の歯に似ているという。陸上で暮らす柔らかい体のカギムシと、エビや昆虫などの節足動物には共通の祖先がいたと考えられ、ハルキゲニアの歯の発見は共通祖先の姿や分岐時期を考える手がかりになるとしている。
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