日本のコンビニから「レジ待ち」が一切なくなる日がやってくるかもしれない。ローソンが今年発表した「ローソンスマホペイ」は、客がスマートフォンアプリで商品のバーコードを読み取ってセルフ決済するサービス。9月以降、大都市圏の店舗を中心に導入し、2018年度末までに100店舗で使えるようにする計画だ。
ローソンはこれまでも、商品の精算から袋詰めまでを自動で行う「レジロボ」をパナソニックと共同開発したり、ドローンを使った「からあげクン」の空輸実験を行ったりと、コンビニ業界で他社に先駆けた取り組みを行ってきた。ローソンスマホペイも、今年4月からの実証実験を経て本格展開が決まった業界初の新サービスだ。
米Amazon.comのレジなし店舗「Amazon Go」などが注目を集める中、日本のコンビニはどのような進化を遂げようとしているのか。ローソンで新サービスなどの研究開発に取り組むオープン・イノベーションセンターの谷田詔一マネジャーに聞いた。
「都市部のコンビニは、朝や昼時に大変な混雑になる。それを少しでも解消できれば」――谷田さんはこう話す。
ローソンスマホペイの仕組みはこうだ。事前にユーザーアカウントと支払い手段(クレジットカード情報など)を登録したローソンアプリ(iOS/Android)で店舗を指定し、商品のバーコードをスキャン。するとアプリ内で決済でき、レジを通過することなく商品を購入できる。
4月に都内の一部店舗で始めた実証実験では、朝(午前7〜9時)には約3割、昼(午前11時〜正午)には約4割の客がスマホペイを利用。入店から退店までにかかる時間は約1分と、レジで決済する場合の約4分の1になったという。「利用した人からも、便利だという声をいただいている」(谷田さん)
こうした利用者の利便性アップに加え、セルフ決済サービスで狙うのは「人手不足の解消」だ。少子高齢化でスタッフの確保が難しくなる中、キャッシュレスのセルフ決済サービスが普及すれば、レジ打ちや接客、レジ締めなどにかかる業務負荷を軽減できる。さらに「ゆくゆくは深夜帯のレジを無人化できるかもしれない」と見込んでいる。
ただ、それでも課題は残る。利用者からすれば、スマホアプリでバーコードを読み取る手間がかかる。店舗や流通現場としても、スタッフの業務時間の多くを占める検品や棚卸しにかかる手間はなくならない。
これらの課題を一挙に解決しようと準備が進められているのが、電子タグ(RFID)を用いた商品の「個品管理」だ。
ローソンを含むコンビニ大手各社は2017年、経済産業省と共同で「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定。2025年までに全商品にRFIDを付けることを目指している。
目的は、商品がいつどこに、どの程度流通しているかを把握できるようにすること。例えば現在、工場のあるラインで作られた商品に欠陥が見つかった場合、出荷済みの同じ商品を大量に回収しなければならない。RFIDなら、1つ1つの商品を個別に管理するため「〇月〇日にこの工場のこのラインで作られた商品のみ回収する」といったことが可能だ。
谷田さんによると、RFIDの導入はコンビニ利用者にも大きなメリットがあるという。その1つが「レジなし・商品スキャン作業なしの自動決済」が可能になることだ。
その実現に向けた取り組みはすでに、ローソンの研究施設で進められている。
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