「PoC(概念実証)止まりで終わる企業は多い」「PoCというタダ働きをさせられることも結構ある」――AI(人工知能)ベンチャーで働く自称“イキリデータサイエンティスト”のマスクド・アナライズ氏は、こう話す。同氏は3月4日に都内で開催されたAIイベント「SIX 2019」に登壇。ABEJA 岡田陽介社長、ABEJA 小島英揮氏(Managing Director)と日本企業のAI導入を阻害する要因や、その解決策について議論した。
試験導入したAIの精度向上を延々と繰り返したりして、PoCから先に進めない企業は多いという。AI導入を検討している企業が陥りがちな失敗パターンや注意点は何だろうか。
マスクド・アナライズ氏はITmedia NEWSでAI開発のリアルを伝える「マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!」を連載中。AI導入を検討する架空の大手製造業の話を扱った「『AI開発ミステリー 〜そして誰も作らなかった〜』 とある大手製造業の怖いハナシ」では、「社長の思い付きでAI開発を外部に依頼するも、下請けへの丸投げが続き、結局誰も作らなかった」という“笑えない”物語がユーモアたっぷりにまとめられている。
マスクド・アナライズ氏は「AIで何をしたいか目的が不明瞭なまま相談を受けることがある。お客さんは何ができて、何ができないのか、強みは何なのかといった部分はわれわれには分かりづらい。そのまま開発が進むと、使われないAIや、費用対効果で割に合わないAIが作られる」と問題点を語る。
新しい技術を導入するときは、目的や費用対効果を明確にしなければ社内で同意が得にくい。小島氏は、かつてクラウドを新技術として導入していた時代を振り返る。「クラウドは8割が“置き換え”の考えだったので、社内稟議(りんぎ)も通りやすかった。しかし、AIは置き換えではなく全く新しいことにチャレンジしないといけないので、稟議も通りにくいのでは」(小島氏)
岡田社長も「全くその通り。AIは単なる置き換えではなく、こうしたいというビジョンが必要」と同意する。
中には「この工場の、この業務の、この工程で不良品の検知をしたい」(マスクド・アナライズ氏)といった具体的な目的を持つクライアントもいる。しかし、次に「クライアント側で、AI導入するための人的、金銭的リソースが足りない」という問題が出てくるという。
企業のAI導入を阻む要因としてよく挙げられるのが、「AIが分かる人材がいない」「予算が足りない」といった点だ。マスクド・アナライズ氏も連載記事「『データサイエンティスト・ラプソディ』 なぜ優秀なAI人材は転職するのか」で、優秀なAI人材を採用するには給与面など待遇を改善する必要があると説明している。
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