「小説ドラゴンクエストV」作者の久美沙織さんが8月2日、同日公開された映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」(DRAGON QUEST YOUR STORY)の製作委員会を、長野地裁に提訴したと、本人が発表した。久美さんが創作した小説の主人公の名前が無断で改変されて映画に使われ、名誉が毀損されたとし、映画に久美さんの氏名をクレジットすることや、謝罪などを求めている。
提訴の詳細や訴状は、WordファイルとテキストファイルでWebに公開されている。文書で久美さんは、相手方と交渉したが、誠実な対応が得られなかったため、やむを得ず提訴した――などと説明している。
ドラゴンクエスト ユア・ストーリーは、スクウェア・エニックスが1992年に発売したゲーム「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」(ドラクエV)を原案にした3DCGアニメ。小説ドラゴンクエストVは、ゲーム「ドラクエV」を原案に、久美さんが執筆した小説で、94年に発売された。
久美さんによると、映画の主人公の名前は「リュカ」で、小説ドラクエVと同じだという。ゲームでは、主人公の名前を自由に創作できるため、「リュカ」は久美さんが創作したものだと主張。リュカに対する呼びかけは、小説版の「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」から、無断で「リュカ・エル・ケル・グランバニア」に改変されて使用されたとし、著作者人格権を侵害されたと主張している。
また久美さんは、ドラクエが映画になることを事前に知らされておらず、テレビの情報番組で知ったという。スクエニに問い合わせたところ、映画の全体監修を手掛けた市村龍太郎さんから経緯の説明などを受け、市村さんとは「良い関係が築けた」という。
一方で、久美さんが求めていた、使用許諾の契約や、映画に「リュカ提供:久美沙織」のクレジットを追加してもらうといった措置は行われなかった。その後、東宝から連絡を受けたものの、情報伝達に不備があったという。さらに、スクエニ代理人弁護士から連絡があったが、「『リュカ』は著作物ではないから、許諾不要、連絡不要、よって著作物の二次使用ではないから交渉委任も不要」などとの説明を受けた。久美さんはこういった対応に不満を募らせ、名誉回復のため提訴に踏み切ったとしている。
訴状では、リュカの名の使用について契約を結ぶことや、映画に久美さんの氏名をクレジットすること、謝罪、さらに、「ドラクエ愛で止揚される」座談会をWeb掲載すること――などを求めている。
【訂正:2019年8月6日午後3時 訴訟の内容についての記載を一部修正しました】
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