小惑星リュウグウにかつて存在していた水は、物質を安定的に保存する性質を持つ「にがり」に満ちていたことが分かったと、海洋研究開発機構などが9月5日、発表した。探査機はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウの試料からは、生命の材料となる多様な有機物が発見されており、これらの生成に、にがりが役立った可能性があるとみられる。
誕生当初のリュウグウは、水が豊富だったことが既に判明しているが、水の成分は不明だった。研究チームは、小石状の試料に含まれる鉱物に残された水の痕跡などを化学的に分析。その結果、水がイオンの状態で含む金属のうち、約半分がナトリウムで、約4分の1がマグネシウム、残りがカリウムとカルシウムだったと推定された。
いずれも、豆腐を固める際などに使われる、にがりを構成する主要な成分で、結合した物質を安定的に保存したり、揮発して失われることを防いだりする性質がある。
宇宙空間で作られたばかりの有機物の材料は不安定で、宇宙線にさらされるなどして分解してしまうことが多い。だが、リュウグウの試料に多様な有機物が含まれているのは、その材料がにがりと結合することで安定的に保存されていたためかもしれないという。
海洋機構の吉村寿紘副主任研究員(地球化学)は「地球誕生以前の太陽系に存在した物質が、どう化学的に変化していったかを探る重要な手がかりだ。生命の起源となった物質の解明に役立つ可能性がある」と話した。
地球と火星の公転軌道の近くを回る大きさ約900mの小惑星。そろばんの玉のように中央が膨らんだ形で、岩に覆われている。直径約100kmの母天体が別の天体に衝突されて壊れ、かけらが再集合してできたと考えられている。2014年12月に地球を出発した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機はやぶさ2が、19年2月と7月に岩石のかけらを採取、20年12月に地球へ届けた。
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