「ドラゴンクエスト」シリーズで知られるゲームデザイナーの堀井雄二さんが産経新聞のインタビューに応じ、ゲームの世界の中でプレーヤーを驚かせる堀井流ゲームデザインの極意について語った。
ドラクエシリーズをともに作ってきた漫画家の鳥山明さんが3月に死去してから半年。後に代表的なモンスターとなった「スライム」を描いた鳥山さんの独創的なデザインに当時、堀井さんは感嘆したという。鳥山さんと、音楽を担当したすぎやまこういちさん(2021年9月に死去)の果たした役割を振り返り、「奇跡のメンバーだった」と惜しんだ。
ーー堀井さんの今後の活動は
堀井さん:今は12(「ドラゴンクエスト12 選ばれし運命の炎」、発売時期未定)を作っていますので、それを完成させることですね。このゲームについてはまだ話せないんです。怒られちゃうから(笑)。3のリメイク(「ドラゴンクエスト3 そして伝説へ…」、11月発売)にも関わっていますし、携帯(スマートフォン向けゲーム)も見ています。
ドラクエと名が付くものはグッズも確認していますし、ルイーダの酒場(ドラクエに登場する酒場をモチーフにした東京・秋葉原の飲食店)のメニューも見ています。「これ、もっとこうしてよ」とか(笑)
ーー1月で70歳になったということで、今後、何歳で引退しようとか、そういうことは考えていますか
堀井さん:何も考えていないですね。全部やめたら寂しいので、できるところまでやるかな。今も少しずつ人に任せながらやっています
ーードラクエの前には「ポートピア連続殺人事件」、今回リメイクされた「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ」、「軽井沢誘拐案内」と、ミステリー3部作を手がけました。推理小説が好きだったんですか
堀井さん:そうですね。アガサ・クリスティや横溝正史、森村誠一などを読んでましたね。松本清張も映画になった「砂の器」とか好きでした。ああいう世界をゲームで体験できればワクワクするだろうと。一つの事件ではなく、捜査をしている間に次の事件が起きるというのをやりたかったわけです。時間が進むというか。ゲームをやっていて、どういうことが起きるとおもしろいと思うかな、と考えまして。
ゲームが出始めというか、過渡期だったので、けっこういろんなことでプレイヤーが驚いてくれたんですよね。軽井沢誘拐案内では、ゲーム内で電話が鳴ります。今は普通ですが、当時は「電話がかかってきたよ!」とびっくりしてくれたと思うんです。いたずら好きなんで、けっこうそういうの考えましたね
ーーおもしろさの源泉は「いたずら」にあると
堀井さん:はい。人を驚かせるのが好きな性格なんです。どうやったらびっくりさせられるだろう、と。1970年代にはいたずらのアイデアを集めた「いたずら魔」という本を出したくらいです
ーードラクエ最大のいたずらと言えば、第1作の最終盤、プレイヤーの操る勇者が竜王に「もし わしの みかたになれば せかいの はんぶんを やろう」と、取引を持ち掛けられる所ですね
堀井さん:最後のボスにいったい何と言われたら一番驚くだろうか、って考えたんですね。あれが驚くだろうと(笑)。「ポートピア」も、誰が犯人だったら驚くだろう? という発想がありましたね
ーーわかりやすさ、取っつきやすさも堀井さんのゲームの特徴ですね
堀井さん:どうやっても僕、ユーザー目線になるんですよね。わかりにくければ、どうすればわかりやすくなるか、というのを思い付くことが得意なんです
ーー「ポートピア」でも「オホーツク」でも、登場人物である部下の刑事がゲームのナビゲーター的な役割を果たすようになっています
堀井さん:僕のゲームには、地の文がほとんどない。セリフだけで作るようにしています。セリフだと読みやすいし、感情移入できるだろうと。地の文だと読むのがしんどいけど、人の言葉だとすっと入ってくる。ドラクエも、街の人の会話だけでストーリーをつくっています
「マニュアルは読まない」と言う堀井さん。ゲーム作りでは早くから、操作性の良さや話のわかりやすさを重視してきた
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