長時間の座りっぱなしは体に悪い──そんな理由でスタンディングデスクが脚光を浴びたのは数年前。先端を行くオフィスで早速導入され、立ったまま仕事ができるようにしたという事例も伝えられた。ところがそうしたスタンディングデスクの効果に疑問を投げ掛けるような研究が発表された。
座りっぱなしや立ちっぱなし、じっとしている時間の長さと心血管系疾患や循環器系疾患との関係は、実はよく分かっていなかったと指摘するのは、オーストラリアとオランダの研究チーム。このほど学術誌に研究結果を発表した。
研究チームは成人8万3013人の動作を加速度計で測定した英Biobankのデータをもとに、1日の座っている時間や立っている時間を調べ、心血管系疾患(冠動脈性心疾患、心不全、脳卒中)や起立性循環器系疾患(起立性低血圧、静脈瘤、慢性静脈不全、静脈潰瘍)との関係を調べた。
その結果、座る時間とリスク増大との関係は、今回の調査でも裏付けられた。対象者について追跡調査した6.9年の間に、心血管系疾患は6829件、起立性循環器系疾患は2042件発生。座る時間が1日10時間を超えた場合、循環器系疾患のリスクは1時間ごとに26%、心疾患系疾患のリスクは同15%、それぞれ増大することが分かった。
ではスタンディングデスクに切り替えれば解決するのかといえば、そうともいえないらしい。
立っている時間が1日2時間を超えた場合、循環器系疾患のリスクは30分ごとに11%増大していた。一方、立っている時間と心血管系疾患のリスク増大との関係は認められなかった。
要するに、立っている時間の長さは心疾患系疾患のリスク増大にはつながらないものの、起立性循環器系疾患のリスク増大にはつながり得る、ということになる。
研究チームは「(座りっぱなしに対する)処方箋として立っている時間を増やしても、重大な心疾患系疾患のリスクは低下せず、それどころか起立性循環器疾患のリスク増大を招く可能性がある」と解説。「心疾患系疾患のリスクを減らすためには立っているだけでは不十分」と言い切る。
座っていようが立っていようが、じっとしている時間が長ければ起立性循環器系疾患のリスクは増大する。調査では、じっとしている時間が1日12時間を超えると循環器系疾患のリスクが1時間ごとに平均22%上昇し、心疾患系疾患のリスクは同13%の増大につながるという結果が出た。
「じっとしていると筋肉が動かないので、骨格筋の収縮とポンプ作用によって静脈還流が減り、静脈に血がたまって起立性循環器系の問題を引き起こす。従って、起立性循環器疾患のリスクを減らすためには、じっとしていない動き(歩行やサイクリングなど、ある程度の動きを伴う身体活動)が大切」と研究者はアドバイスしている。
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