ゴキブリが絵を描き、モノを運ぶ 群れを遠隔操作する技術「Calmbots」 筑波大学が開発:Innovative Tech
ある意味とても恐ろしい技術が開発された。彼らと共生する生活はどのようなものになるだろうか。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
筑波大学の研究チームが開発した「Calmbots」は、ゴキブリに電気刺激を与え遠隔で動きを操作するシステムだ。触角などに電極を取り付けて小型ロボットのように動かし、絵を描いたり物体を運搬させたりする。ゴキブリ単体の制御だけでなく、群れとして複数同時に操作もできる。
制御するのはマダガスカルゴキブリという種。身体能力が高く、通常のロボットでは得られない、壁やカーペットなどを移動する能力を備えている。
動作をコントロールするため、本体の前方左右にある「触角」2本、尻尾のように後方左右にある突起「尾角」2本に電極を挿入し、この4カ所に電気刺激を与える。「両尾角で前進」「両触覚で停止」「右触角で左回転」「左触角で右回転」という電気刺激を与えて制御する。
ゴキブリには手術で電極を埋め込む。手術中動かないよう、氷上に30分置くことで麻酔をかけ、両触角と両尾角の先端を切り落とす。切り落とした両触覚と両尾角、そして胸部の計5カ所に電極を挿入する。ソケットも背中に装着し、ARマーカー、バッテリー、通信モジュールを載せる。また頭部には、物体運搬用、描画用などのアタッチメントパーツを取り付ける。
取り付けたARマーカーを上部のカメラで捉え位置情報を収集する。位置データを基に、ゴキブリの現地点からゴール地点までの制御コマンドを生成する。集団の場合は、ゴール地点に近い個体に指示する。
ゴール方向を向いていない場合、どちらかの触角に電気刺激を与え方向転換させ、ゴールの方向を向いたら両尾角に刺激を与え前進させる。ゴールから7cm以内に来たら刺激を止める。ゴールの通り過ぎを防ぐためだ。
5cm以内に来たら両触覚に刺激を与え停止させる。到着後は、適宜触覚に刺激を与え、ゴールにとどまるよう制御する。ゴールから離れすぎるとまた最初に戻り、同じことを繰り返す。
厄介なのが、刺激を与え続けると刺激に慣れて制御不能になることだ。慣れやすさは個体差が大きく、いつ慣れるかの予想もできない。そのため群れで制御する場合、3.3秒間同じ刺激を与え続けても反応しないときは、他の個体に再割り当てする。これにより、全体的な目的達成の精度を保持する。
このように複数を同時に制御することで、群れで図形や文字を生成しディプレイとして活用したり、頭部のアタッチメントパーツを使用し、ペンや筆で線を描いたり、カブトムシの角のようなパーツで物を押して移動させたりを可能にする。
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