頭の片側または両側に生活に支障が出るほどの痛みが生じる片頭痛。頭痛だけではなく吐き気や嘔吐、めまいが生じたり、光、音、匂いに敏感な状態を伴うこともあります。片頭痛が起きると痛くて動けずに横になるしかない、目がチカチカしすぎて外出できないなど、片頭痛によって心的ストレスの上に社会的ストレスと負担も重なり辛い症状です。
薬によって片頭痛の痛みを一時的に紛らわせることは可能ですが、片頭痛の根本的な解決にはなりません。一般開業医の診察では「特に悪いところはない」と原因不明なまま、片頭痛に悩まされている人はオーストラリアでも少なくありません。
健康意識の高い人が多いオーストラリアでは、そうした片頭痛などさまざまな身体の不調を改善するために、フィジオセラピー(理学療法)が用いられています。その診察と治療を実施するのがフィジオセラピスト。日本では理学療法士のことを指します。筋肉、関節、神経といった内臓以外の身体全般、身体の動きに関する問題や痛みなどを診断し、リハビリを行う専門家です。
そこで今回は、シドニーシティにある「メトロフィジオセラピー」のオンラインの頭痛改善プログラムをJAMSスタッフが体験してきました♪
「メトロフィジオセラピー」は、オーストラリアのフィジオセラピーを日本語で受けられる日系クリニック。同クリニックの奥谷先生は、一般人はもとよりプロスポーツ選手やパラリンピック選手の身体の治療、パフォーマンス向上を手がけている敏腕フィジオセラピストです。片頭痛はもちろん、慢性的な身体の不調や怪我とそのリハビリで、多くの日本人も診察しています。
今回の頭痛改善プログラムは、そんな奥谷先生が世界的にも最先端である頭痛治療メソッドを開発者本人から学んだもの。頭痛専門医や多くのドクター、同業のフィジオからの紹介を受けて、頭痛に悩む多くの患者が来院しています。
この頭痛改善プログラムは、同居人や家族など、パートナーと二人一組で自宅にいながら取り組める根本的な頭痛の改善治療で、コロナ渦に来院が難しかった方や本国に帰国後も治療を続けたかった方向けに、奥谷先生が開発したプログラムなのだとか。頭痛への治療効果が非常に高かった元々のプログラムを、さらに効果的になるよう磨き上げた内容です。そのため、「頭痛薬から解放されたい」「頭痛のせいで時間を無駄にしたくない」と隣で苦しんでいる家族やパートナーを、もっと助けてあげたいと思っている方にも最善のプログラムです!
さらに、体験前には「片頭痛が起きる仕組み」についても詳しくお聞きしました。頭痛が多い方や、片頭痛持ちの方は要チェック!
シドニー在住のフィジオセラピーの第一人者。学術的にも臨床的にも高い教育レベルを要求されている「オーストラリア理学療法学会(APA)」に認定された頭痛や腰痛など、筋骨格系のスペシャリスト。その中でも専門は顎関節で、オーストラリア国内のさまざまな場所から何時間もかけて患者さんが来院する。また、頭痛の治療技術も高く評価されている。
奥谷先生:片頭痛という言葉は150年ぐらい前に造られましたが、中世の頃から未だに解決していない、社会にとって『3番目に負荷のかかるコンディション』だと言われています。
片頭痛は女性 3:男性 1くらいの割合で、ピークは20代後半から50代半ばぐらい。最も多いのは40代です。長期的には落ち着いていく傾向ですが、一番つらい時期に頭痛薬を使い、その副作用でリュウマチを併発させてしまう人もいます。
片頭痛は首と関係しているケースが多いです。首や肩の凝りを感じていなくても、脳腫瘍とか脳溢血とか血管障害とか要するに生死に関わらない頭痛というのは「すべて首からきている」とフィジオセラピストは考えます。
首の中でも上部頚椎(けいつい)という頚椎0番から3番までのすぐ隣にある脳の一部を脳幹(のうかん)と呼びますが、ここが頭痛を引き起こす部分なんです。
頭蓋骨を開くと脳の中の膜があって、大脳があって、小脳があって、その下にある脳幹は、哺乳類で一番古い原始的な脳です。原始的な哺乳類は皆、心拍数、血圧などのバイタルすべてを脳幹でコントロール制御しています。それと同時に、脳幹は12の脳神経を持っていて、その12の脳神経によって触覚・視覚・聴覚・嗅覚・味覚の五感を感じています。
その脳幹の隣にあるのが、頚椎の1番・2番・3番で、痛みなどの信号はこれらの頸椎と脳幹を通って同じ道筋で脳に届いていきます。
痛みの信号自体には首・顔・耳・頭・目・鼻など位置的なタグが付いてないので、単なる信号ですが、どこからくる痛みなのかを脳が間違って理解してしまうと、その信号が吐き気になったり、めまいになったり、耳鳴りになったり、歯の痛みになったりとさまざまな別の症状となって身体に現れてしまいます。頭痛もそうした現れの一つです。
奥谷先生:人が過去にある部分を怪我したことがあったり、たくさん歯を治療したことがあったりと、個人の体験によって痛みの回数も異なります。その過程で、間違った痛みの通路がもう確立されてしまっている可能性もあるんです。
例えば、コーヒーをよく飲む人が自分の行きつけのカフェへ行くとします。そのカフェに近づくと、バリスタはもうあなたが来店したことに気づいて、あなたの好きなコーヒーを作り始めます。オーダーしなくても、毎日同じものを飲んでいますから。このように、脳が届く信号を先に予想して痛みを出してしまうという感じですね。
姿勢が悪いと首に負担がかかるので、絶えず脳幹にストレスの信号が届いている状態です。脳幹自体のキャパシティを超えているので、ホルモンの変動がある生理の時期に頭痛が起きる人は、ちょっとしたホルモンの変動やストレスの負荷で症状が悪化して、脳幹の蓋をできなくなってしまっているんです。その症状が頭痛であったり、それに伴う片頭痛というものですね。
頭痛も片頭痛もメカニズム的には同じで、度合いが違うと考えてください。痛みの信号は同じ道を辿っているので、首を改善することによって脳幹に届く負担を取り除けば、心的ストレスやホルモン変動や気圧変化があった時にも、頭痛に対処できるだけの余力が脳幹にある状態になって、頭痛に変換されなくなるんです。
奥谷先生:私はフィジオセラピストとして20年以上、シドニーで頭痛の患者さんも診ていますが、頭痛に苦しむ人を一人でも減らせたらいいなと思います。片頭痛の度合いも人それぞれですが、毎回救急で点滴を受けないといけない人もいれば、仕事を辞めざるを得ない人もいます。なのに、神経内科で診察を受けても何の異常もない。動けない。本当に痛みが強い。
そんな状況に置かれている人の症状を改善するために、じゃあ、何をすればいいのか?
心的ストレス、ホルモン変動や気圧変化などのストレス、そして姿勢の悪さなどから首にかかる物理的ストレスの中で、頭痛薬を使わずに取り除ける方法は最後の首にかかるストレスです。
脳幹のストレスのキャパシティは水筒と同じようなもので、水筒自体に力を持たせて、水筒にストレスという水を入れてもあふれないキャパシティを残せる状況にしていく。そのための根本的な治療として、手技(しゅぎ)による片頭痛治療があります。
首への手技によって頚椎0〜3番が受けている負荷を減らして、脳幹への通路を正常化していきます。脳幹に届くストレスを減らすことで痛みの信号が減って余力が生まれるので、ストレスの増える状況に置かれても頭痛が起きなくなります。頭痛が頻繁に起こらなければ、片頭痛にもなりません。
奥谷先生:片頭痛レベルまでいくと、本人の苦痛はもちろん、回復するまで寝たきりになったり、効率よく動けなかったりするので、同居人や家族の負担になることもあります。
なので、お互いの負担を減らせるように、二人一組でパートナーと一緒に手技を覚えていただきたいです。当クリニックの片頭痛治療でルールとしてはお願いすることは、オンラインセッションで指導した手技をパートナーと一緒に、朝3分、夜3分、きちんとやっていただくこと。
片頭痛治療の診療の流れとしては、初回は可能であれば当クリニックへ来院して問診することが理想ですが、次回からはオンラインのZOOMを使って週1回、トータル6週間〜8週間のプログラムに取り組んでいきます。加えて、1週間かけて1回のタスクを設定するので宿題もあります。
オンライン治療の頻度としては、8週間で60日とすると120セッション行うことになるので、実際に来院していただくよりもはるかに多くの治療セッションを行うことができます。また、セッションの回数を重ねることでパートナーとの理解も深まりますし、手技スキルも上がっていくので、繰り返し練習すること自体が治療になります。スキルが上がっていくほどに治療効果も上がります。
患者さんにはアラスカやドバイの人もいますが、オーストラリア国内も多いです。自宅を出ずに治療できるのがメリットですね。パートナーと一緒にいるのは基本的に自宅ですから、やっぱりオンラインで二人一緒に知識とスキルを身につけてもらうのが一番かと思います。
奥谷先生:画面越しにさまざまな安全チェックを行なってから、患者(二人一組の片頭痛治療を受けたい人)がうつ伏せになります。うつ伏せになる際、うつ伏せ用の枕を敷くといいのですが、バスタオルで代用しても構いません。
奥谷先生:施術者(二人一組のパートナー)は患者の頭側に立ち、施術者からオンラインセッション用のPCやタブレットが見えるように配置してください。
奥谷先生:首の角度が結構大事になるので、慣れてきたら何か薄いタオルなどを使って調整してください。手は自由にしてくださって大丈夫ですが、ぶらーんとしていると血流が遮断されてしまうので、もし手が冷たくなってきたら、上に挙げて動かしたりしてみてください。
その後、患者(施術を受ける側)を横から写しているカメラと、患部(首)を局所的に写すカメラの2台をつなぎながら、頸椎1番・2番・3番の見分け方、患者の上部頚椎の状態を見極めて症状を再現していきます。
今回は、頭痛持ちのJAMSスタッフにあった治療方法について、奥谷先生から詳しく指示を受けながら手技を進めていきます。手技を受けたJAMSスタッフの反応や痛みの箇所に応じて、その都度詳しい説明や生活習慣改善のアドバイスもわかりやすく教えてくれました。
※本来はとても高い治療技術が必要なスキルなので、必ずフィジオセラピストなど治療者からの指導を受ける必要があります。決して二人だけで真似をしないでください。
奥谷先生:頸椎の状態を触診で判断して、どのような治療を進めていくかを決めていきます。毎日の朝3分、夕方3分で、まず頚椎2番がどっちを向いてるか二人組でチェックして、その歪みを矯正していく。それを繰り返していきます。
頭痛をなくしていく治療に関係するのは、重力、頭の重さ、腕の重さ、姿勢、柔軟性、筋力の6つのファクターです。最初の3つは変えられるものではありませんが、柔軟性、姿勢、筋力に負担をかけないようにして頭痛のない生活を維持するため、全8週間の治療の中にそうしたファクター全部を組んでいます。
昔の針で計測する体重計を想像してください。何回か乗っているとゼロからズレて5kgとか7kgぐらいから始まっちゃう。ああいう感じで、自分が認識している首(頚椎)の位置も重力でどんどん前にズレてしまうと、それをリセットできる機会がないまま絶えず前にズレていってしまう悪循環に陥ってしまいます。それに気づかず、例えば「頭痛は枕のせいだ」と枕を替えてみても、外的要因を取り除くことはできません。
重力によって身体が前にぺっしゃんこにされていっているので、リセットする機会が必要なんです。
奥谷先生:次に「壁エンジェル」ストレッチのポーズをします。
壁を背にして、二の腕を90度上げて、肘を上に直角に曲げて、体よりも後ろに腕を引いてください。このまま、腕だけが壁に当たった状態を維持します。頭の後ろ、背中、お尻、足は、壁に直接当たらないように。
そのポーズのまま、腕だけ上げ下げを行います。腕を引いていると頭が前に出やすいので、しっかり後ろに引きましょう。ただし、後頭部は壁に当たらないようにしてください。
背中と頭は壁に付けず、腕だけ壁に付けて上げ下げ
JAMSスタッフ:こちらは個人の宿題なんですね。どのくらいの頻度でストレッチすればいいですか?
奥谷先生:診察結果によりますが、あなたの場合は「壁エンジェル」ストレッチを治療プログラムの6週間〜8週間、毎日20回×3セット=合計60回やりましょうか。
背中を広げて戻せるのが本来の人間のフルスペックなんですが、中央値が前にズレてしまっていると、背中が硬い、首が前に出る人は肘から上だけを壁に付けられないので、それを一度リセットする機会を与えてあげることが重要になります。
奥谷先生:もともと片頭痛は遺伝によるものに毎日の習慣が合わさったものです。誰でもある程度は要因を抱えていて、そこに何か習慣が加わったり、ストレスが負担になったりと複合的に頭痛の神経回路ができてしまいます。
しかし、遺伝子は重力と同じで変えられないファクターなので、ほとんどお伝えすることはありません。一方で姿勢、柔軟性、筋力は変えられる要素ですので、習慣づけて根本から変えていくお手伝いをしています。
ほとんどの人は片頭痛の要因をストレスだと考えますが、そのストレスがかかっている時に自分がどういう姿勢になっているか、まで考える人はあまりいません。そのため具体的に問診して本人にも気づいてもらえるようにしています。
JAMSスタッフ:生活習慣は自分だと見えないですもんね。
奥谷先生:はい。ですから、できるだけ効果的な問診をして本人に認識してもらえるように心がけています。
JAMSスタッフ:8週間の治療プログラムで、1週間ごとに先生とオンラインセッションでフォローアップをすればいいですか?
奥谷先生:そうですね、質問を受けて指示を出します。オンラインセッションは1週間ごとですが、その間も治療を続けているわけですから、できるだけ早く解決できる対応が必要ですよね。途中で質問があればメッセンジャーなどで随時ご遠慮なく質問してください。
治療の一環として頭痛日記を書いてもらうこともあります。運動ログや頭痛がいつ出たかなどを記録していると、劇的に変わる人もいますが、基本は習慣を変えた8週間の中で徐々に効果が現れている人が多いです。頚椎がズレるパターンもわかってくるので「やばいレベルだな」と感じたら、片頭痛は前兆の段階で薬を飲めるかどうかが重要なので、早い時点から薬を飲むという対処もできますし、そもそも薬も不要になってきます。
その二人組のパートナー間で蓄積された知識やスキルによって、治療プログラム終了後もしっかりと片頭痛のない状態を維持していけるようになります。
JAMSスタッフ:ありがとうございました!
オンラインの頭痛改善プログラムのお問い合わせはもちろん、その他の身体の痛みや不調にお悩みの方は、以下の電話番号またはメールにてお気軽にお問い合わせください♪
シドニーにある「メトロフィジオセラピー」では、専門性の高い技術が必要とされる頭痛やアゴの不具合も治療の実績多数の日本人フィジオセラピスト、奥谷先生が、最も治療効果が高いと言われる手技・マニュアルセラピーと運動療法を中心に、一人ひとりに合った効果的な治療を提供しています。
奥谷先生は、学術的にも臨床的にも特に高い教育レベルを要求される「オーストラリア理学療法学会(APA)」認定の筋骨系スペシャリスト。オーストラリアの病院で整形外科から心臓移植後のリハビリ、脳卒中などの神経リハビリ、老人病棟など、さまざまな病棟を経験し、特に緩和ケア病棟での経験を活かした治療を行なっています。ストレスやホルモンバランスの崩れからくる片頭痛、アゴの不具合、肩こり、首の痛み、頭痛、ヒジ・ヒザ・関節の痛み、腱鞘炎、スポーツでのケガ、筋肉や靭帯、関節など、筋骨格系疾患の診察・診断・治療を任せることができます。
突然の怪我や慢性的な不調だけでなく、運動不足やストレスによる不安定な身体コンディションも、実際に身体を動かしながら改善・治療へ。例えば、リモートワークにつきものの腰痛を改善する施術や、自宅でもできる運動療法も処方。急性の腰痛にも対応可能で、腰痛の治療継続中に座っていても痛みが悪化しないため、仕事や勉強を続けながらでも治療を継続できるのも大きな特徴です。
オーストラリアでフィジオセラピーを受診して治療をスタートする場合、オーストラリアの医療保険や海外旅行保険が使えるので、オーストラリア生活中にカラダの不調や筋肉や関節の痛みや機能障害、神経系機能障害や呼吸器系疾患などの症状があった場合には、ぜひフィジオセラピーに相談してみましょう。
担当:奥谷匡弘(ただひろ)
シドニー在住のフィジオセラピーの第一人者。学術的にも臨床的にも高い教育レベルを要求されている「オーストラリア理学療法学会(APA)」に認定された頭痛や腰痛など、筋骨格系のスペシャリスト。専門は顎関節。頭痛の治療技術も高く評価。
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