持続可能な開発目標
SDGs
持続可能な開発目標(SDGs)とは
持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave noone behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
(外務省HPよりhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/)
自治医科大学におけるSDGs取組み事例
1. 地域社会のリーダーとして地域医療に貢献する医師の養成
全国で少子高齢化が進み、地域社会を形成する中核として、地域医療がこれまで以上に重視される現在、こうした課題に対して住民や行政と一緒になって地域の保健と福祉を確保するための人材を育てます。とくに国際的な視点をもちつつ、地域で総合的な医療を行うとともに、地域社会のリーダーとして活躍する医師を育成します。
2. 地域社会の保健医療・福祉の提供体制の維持・向上に貢献できる看護職の育成
少子高齢化が進み、住民の地域偏在化も深刻化してきている現状において、地域社会における保健医療福祉の提供体制を維持する、または、充実できる看護職の育成は必須となっております。本看護学部では、地域社会における保健医療・福祉の提供体制を維持できるよう高度医療と地域医療に貢献できる看護師・保健師・助産師を育てています。
さらに、生涯教育を受けにくいへき地等の医療機関・福祉施設等の看護職においても、就労しながら継続的な学習ができるよう地域医療を担う看護に必要な遠隔教育提供体制を整備し、手順書により一定の診療の補助を行うといった高度かつ専門的な知識と技術をもち、チーム医療のキーパーソンとして役割を担う特定行為看護師を養成しています。
看護学部 https://www.jichi.ac.jp/nurse/about/
看護師特定行為研修センター https://www.jichi.ac.jp/tokutei/
3. 発展途上国での感染症対策
「顧みられない熱帯病」とは、世界保健機関(WHO)が「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」と定義する20の疾患のことで、熱帯・亜熱帯地域を中心に、世界約150ヵ国で10億人以上の患者がいると推定されています。「顧みられない熱帯病」の多くは貧困国、貧困層で蔓延していることから対策は後回しにされ、重度の身体的障害を引き起こして労働力や生産性の低下を招き、貧困に拍車がかかる原因ともなっています。
本研究では、吸血昆虫に媒介される「顧みられない熱帯病」、リーシュマニア症およびシャーガス病について、流行国・流行地域に赴いて現地の研究者とともに疫学調査を行い、患者から病原体の検出、媒介昆虫の調査、保虫動物の調査等、感染経路・伝播機構の解明を行っています。また、迅速診断法の開発、広域調査法の確立、感染リスク調査法の開発等を行い現地調査に応用するとともに、感染病態の解明も試みています。
感染・免疫学(医動物学部門)
http://www.jichi.ac.jp/idoubutsu/indexTJ2.html
4. 発展途上国における、重金属汚染の現状把握と課題分析
パキスタンでは、都市部における鉛汚染と農村部におけるヒ素汚染が現在も大きな問題となっています。特に、これらの重金属に曝露することで最も影響を受けると考えられる妊婦と児の健康被害が危惧されています。本研究室では、これらの現状を把握し、その問題解決のため、鉛・ヒ素等の重金属汚染と都市・農村部の妊婦と児を対象にした重金属曝露の調査を進めています。これまでの調査から、パキスタンの妊婦と児が安全基準以上の重金属に曝露していること、その汚染源が都市部では主に食事・ハウスダスト中の鉛に、農村部では井戸水中のヒ素に由来することが確認されてきました。これらの重金属汚染に対して総合的に介入することで重金属曝露を低減し、健康的な生活を確保することが今後の目標です。
5. 開発途上国における、性と健康の行動選択を支えるピア・エデュケーターの育成
モンゴル国では、2014年に義務教育(日本における中学校・高等学校)において健康学習が廃止されました。思春期の若者の健康課題でもある性に関する正しい情報もないため、望まない妊娠による人工妊娠中絶率は上昇の一途をたどっていました。そこで、2015年から2019年にかけて、自治医科大学(公衆衛生学教室と看護学部)では、JICAより委託を受け、思春期からの健康なライフスタイル構築のための持続可能な仕組みづくりプロジェクトを立ち上げました。プロジェクトでは、思春期の若者が同世代の若者に性や健康に関する知識や意識を共有するピアカウンセラーを養成しました。また、ピアカウンセラーの活動がプロジェクト終了後も継続して実施できるようなシステムづくりに取り組みました。
2018年にプロジェクトにかかわった人物が中心となり、NGO「健康な未来の持ち主」を立ち上げました。現在、モンゴル人が中心となり活動を継続しています。自治医科大学としては、研究を行うことで、モンゴルでの活動を側面から支援することを続けます。
地域医療学センター(公衆衛生学部門)
https://www.jichi.ac.jp/dph/inprogress/mongolia/
6. 食べるだけではない! ピッグのリサーチパーク~ピッグで拓く未来医療
医学部では、疾病に対する新しい治療が開発されると、まずマウスでテストされます。実際、医学部で行われている動物実験の90%以上はマウスを用いたものです。しかし、マウスでうまくいったからといって必ずしも人間でうまくいくとは限りません。新しい治療が人間でほんとうに効くのか、安全なのか、それを自治医科大学ではピッグを使ってテストしています。ピッグはサイズや生理学的特徴が人間に似ているのです(注1)。自治医科大学のピッグ施設は世界最高水準の設備・機材をもちます(注2)。ここでは一匹一匹のピッグが快適に暮らせるように最大限の配慮をしており、人間の病院と同じようにピッグに対して手術や薬剤投与が行われ、CTやMRIやレントゲンなどの検査が行われています。本施設でテストされている新しい治療として、iPS細胞治療、遺伝子治療、ゲノム編集治療、腸内細菌叢操作治療があります。いずれも近未来に実現が期待されている医療技術です。ピッグを使って有効性と安全性をしっかりテストした新しい治療を患者さんの元に届けることが私たちの使命です。
(注1)
サイズ、たとえば体重:
マウス20g,カニクイザル3~9kg ,ミニピッグ30~70kg
生理学的特徴、たとえば脈拍:
マウス500回/分, カニクイザル120回/分, ミニピッグ70回/分
(注2)
先端医療技術開発センター
https://www.jichi.ac.jp/cdamt/index.html