2023年度のポイント・マイレージ年間発行額は1.5兆円超に増加
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2023年度のポイント・マイレージ年間発行額は1.5兆円超に増加
〜国内12業界について、2023年度までの推計と2028年度までの予測を実施〜
#消費財・流通
2024/12/06
株式会社野村総合研究所
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤 花芽)は、家電量販店やキャッシュレス決済1、携帯電話など、国内12業界2の主要企業による1年間のポイント・マイレージ発行量を金額換算した「年間最少発行額3(以下「発行額」)」について、2023年度までの実績推計および2028年度までの予測を行いました。また、2019年度~2023年度は、行政のキャッシュレス促進施策などで発行されるポイントについても推計しました。
2023年度の民間発行額は1兆2,887億円で、前年度から約4%の増加
2023年度の民間部門における発行額(以下「民間発行額」)は、2022年度の1兆2,342億円から約4%増加し、1兆2,887億円と推計されました。また、行政主体のポイント発行もあり、官民合わせると発行額は1兆5,660億円と推計されています(図1)。
2022年度から民間発行額が増加した主な要因は、キャッシュレス決済の拡大と航空需要の回復です。「キャッシュレス決済」によるポイントの2023年度の発行額は6,541億円で、2022年度から約15%(840億円)増加しています(表1)。これは、新型コロナウイルス感染症の流行に端を発する「新しい生活様式」への対応や、マイナポイント事業によるキャッシュレス決済の普及推進などの影響が大きいと考えられます。また、「航空」業界も新型コロナウイルス感染症による行動自粛からの需要回復が続いており、ポイント発行額で見ると2022年度比で約31%増加しています(表1)。
図1: 国内におけるポイント・マイレージの年間最少発行額の実績値(推計)と予測値4
出所:NRI
表1: 国内12業界別 2023年度のポイント・マイレージ年間最少発行額と算出の根拠※
- 本資料に記載されている数値は四捨五入を行っています。そのため、記載されている数値を用いて計算を行った場合は差異が生じる可能性があります。
- 本年度は一部業界で「ポイント付与基本数値」の集計対象や「ポイント適用率」の見直しを行っています。
出所:NRI
2023年度の行政主体の発行額は2,773億円に上る
2023年度は、「マイナポイント事業」によって2,773億円相当のポイントが行政により発行されました。「マイナポイント事業」は2020年6月から2023年9月まで続いた施策で、1人当たり最大で2万円相当のポイントが付与されました。この間、合計で1.3兆円超相当のポイントが発行されたと推計され、その規模は単年度の民間のポイント発行額とほぼ同等です。「個別自治体が行うマイナポイント事業8」など、行政の施策にポイントを活用する動きは続いていますが、現時点で「キャッシュレスポイント還元事業」や「マイナポイント事業」と同規模の政策は発表されていません。
今後も、クレジットカードの決済ポイント特約店の拡大とキャッシュレス決済の発行額増加が予想される
経済活動に伴って発行されるポイントは、キャッシュレス決済の利用によって付与される「決済ポイント(本推計ではキャッシュレス決済による発行額に計上)」とポイントサービスを提供している店舗・非決済サービスの利用で付与される「購買ポイント」の2種類に大別できます。
「決済ポイント」に関して、ポイント付与率が通常よりも高い「決済ポイント特約店」を設けているケースがあり、昨今はクレジットカード会社によるその取り組みが活発化しています。具体的には、三井住友カードは2024年10月より、セブン-イレブンでスマートフォンによるタッチ決済を利用した際のポイント還元率を、従来の最大7%相当から最大10%相当に引き上げています。また、三菱UFJニコスは、2024年8月よりくら寿司・オーケー・東武ストアなどを決済特約店に追加し、最大で5.5%相当のポイントを付与しています。これらの取り組みの主な目的は、「少額決済におけるクレジットカードの利用拡大」や「クレジットカードのタッチ決済普及促進」です。少額決済領域では、現状、コード決済が主流であること、また、クレジットカードのタッチ決済については、公共交通機関への導入など今後も利用シーンの拡大が期待されることから、クレジットカード会社による同様の取り組みが今後拡大すると考えられます。
これらのクレジットカード会社の取り組みに加えて、EC・フードデリバリー・動画配信などのオンラインサービスの利用拡大に伴うキャッシュレス決済も増えています。また、日本政府もキャッシュレス決済比率80%を将来的な目標として取り組みを進めていることから、今後もキャッシュレス決済の取扱高とそれに伴う発行額は増加することが見込まれます。また、12業界の民間発行額合計は2028年度に1兆6,000億円を突破することが予想されます。
NRIは今後も、ポイント・マイレージの市場動向を継続的に分析し、ビジネスを促進するポイントプログラムのあり方を提案していきます。
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1
キャッシュレス決済:クレジットカード・デビットカード・電子マネー・コード決済の4種類で構成。ただし、2018年度以前は、クレジットカードのみで算出している。なお、キャッシュレス決済の利用では、決済ポイントに加え購買ポイントも付与されるケースがあるが、「キャッシュレス決済」では、決済ポイントのみが集計対象となっている。
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2
国内12業界の主要企業:国内でポイント・マイレージの発行を活発に行っている12業界(キャッシュレス決済、家電量販店、携帯電話、航空、ガソリンスタンド、総合スーパー、コンビニエンスストア、ECプラットフォーマー、百貨店、ドラッグストア、外食、ホームセンター)において、ポイントプログラムサービスを提供中かつ、売り上げが上位の企業。算出の対象社数は表1を参照。
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3
年間最少発行額:推計するポイント・マイレージの発行額は、各業界で集計対象とした企業の数が限られていること、また、来店キャンペーンなど購買金額にかかわらず発行されるものや、特別会員向けなどの追加発行ポイントを除いていること、加えて、行政主体のポイント発行に関しても、主要な施策のみの集計となっていることを踏まえ、「年間最少発行額」としている。
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4
実測値(推計)と予測値:行政のキャッシュレス促進施策等で発行されるポイントに関して、2024年度以降の数値は今後の政策に大きく影響されることから、推計は行っていない。
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5
ポイント適用率:各社の総売り上げのうち、ポイントカードの提示などでポイントが付与される(ポイント制度が適用される)売り上げの比率。
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6
ポイント還元率:ポイントが利用者に還元される際に、その還元額が元の販売金額に占める比率。航空マイルの金額換算については、1マイル当たり1.5円としている。
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7
決済取扱高:各キャッシュレス決済において決済利用された金額の合計値。ただし、クレジットカードのキャッシング、デビットカードの国内ATMにおける利用額、交通系電子マネーの交通利用額は除外している。
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8
自治体マイナポイント事業:地方自治体等が決済サービス事業者と連携する仕組みを備えた「マイナンバーカードを利活用できる共通基盤システム」を利用して地方自治体等の住民を特定し、迅速かつ効果的な給付施策等を実現する事業のこと。自治体マイナポイントのホームページ(https://id.mykey.soumu.go.jp/jmnp-ma/MARIS011/)で施策検索可能。
ご参考:調査概要
ポイント適用率の設定方法 | NRIが実施した「消費者アンケート」の結果や、各種公開情報を参考に、業界ごとに5%刻みで設定した。 |
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ポイント還元率の設定方法 | 各種公開情報を参考に、最も低い値などを業界基準値として採用した。航空マイルの金額換算については、1マイル当たり1.5円とした。 |
ポイント・マイレージ年間最少発行額の推計方法 | ポイント・マイレージ最少発行額=ポイント付与の基本指標となる数値×ポイント適用率×ポイント還元率。 |
有償旅客マイル | 有料で搭乗する旅客ごとの飛行距離の総和。 |
マイナポイント関連発行額の推計方法 | 公表されているマイナポイント申込数から既存発行額を算出。 |
Go To Eat キャンペーンの集計方法 | Go To Eatキャンペーンの内、オンライン飲食予約によるポイント付与のみを集計。 |
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本件調査の担当
株式会社野村総合研究所 ヘルスケア・サービスコンサルティング部 松原、冨田