ご存じのとおり、近年は建築費が高騰しています。ひと昔前、RCの新築賃貸住宅が坪単価80万〜100万程度でできた時代がありました。(東京)
計画中の案件やデベロッパーさんにヒアリングすると、近年のRC造は坪200万を超える状況のようです。建築家物件専門の工事会社だと着工まで1年〜待ち、坪単価250万〜みたいな感じだそうです。
建築費が高騰しているのでデベロッパーさんは家賃をアップさせて満室にして売却するようです(広告料3倍とかにして)。長期保有目的の大家さん、地主さんにとっては厳しい状況になっています。
都心の立地で特化した物件をつくるデベロッパーさんは利回り3〜4%で地方の経営者さん、外国人投資家、企業家さん、相続目的(タワマンのかわり)、に売却している様子です。
都心5区にあると、(あまり立地がわからない人には)5区の知名度だけで良く売れるみたいです。最近、僕の地元である代々木で売り出されたRC4階建てのワンルーム12室の物件が、5億円超え・利回り3.5%で工事中に売れました。
びっくりなのが、港区の業者が転売用に購入したということです。次の転売先は利回りいくら?と人ごとながら心配しています。
■『完全にババ抜きがはじまった』2024年夏!
僕は今後も建築費は下がらないと思います。自然災害や紛争などの影響で建築資材は品薄、また円安が進むことで輸入建材はどんどん値上がり、円安で外国人たちはお得な日本の不動産を買っています。
また人権費も高騰しています。建設業は高齢化で人手不足なのに、24年4月より運送業、建築業の労働時間規制が厳しくなりました。建築見積は相見積もできず、工事の着工も思うように進められない状況です。
その一方で、木造建築はまだまだ投資としてもぎりぎりOKな建築費用(坪90万〜坪110万)だと感じます。「木造賃貸住宅+α」で貸し方をデザインできれば、賃貸物件としても良いものを作れる可能性があります。
そこでのカギとなるのが土地探しです。熱心に、愛情を込めて地道に探さないといけません。既に土地を所有している人は、10年、20年のスパンで総合的な建築を計画していかないと、今後の不動産賃貸業が厳しくなると思います。
余談ですが、メーカーや量産企業は基本的に今、利回りが上がれば良い案を好みます。「将来は大丈夫?」という提案をよく目にします。将来どのように計画したら土地が最大活用できるだろう?と考えてみてください。
ということで、建築費用、土地費用が爆上がりする中で、どのように不動産と向き合うのか?常識に囚われないで土地を探して、もしくは持っている土地で「賃貸住宅+α」の価値をどう出せばいいのか?
今回と次回のコラムで、20年・30年と物件の価値が続き、さらに上がっていく建築のヒントになりそうな事例を紹介したいと思います。
■公園、学校、川、水路など 駅近より土地の特徴を捉えて計画する
人気のある駅か、駅から徒歩何分かかるか、それだけでは測れない土地の魅力を発見して、前面に出す計画を実現することで、人気物件を作ることができます。
次の事例1〜事例4は駅からの距離は遠いものの、立地の特徴をうまくとらえて、弱点を個性にすることで人気物件となった事例です。ダイジェストで紹介します。
〇東武スカイツリーライン「梅島駅」「五反野駅」徒歩13分
人気の駅でもなく、駅からの距離も少し離れていますが、土地をセレクトする時に、この「公園」が強みになると思いました。この公園を最大限の個性として引き出す設計をした事例です。
公園に向けて、24時間公園暮らし!
https://smi-re.jp/umj3.html
2階から公園
ロフトから公園
3階からも公園
公園側から物件を見たところ
窓をあけて公園を取り込む
巨大なブレス(筋交で構造強度確保)
〇京浜急行電鉄本線「雑色駅」徒歩9分
超変形敷地、北側の斜線も厳しいという悪条件でした。しかし、隣の小学校の「グランド」を特徴として生かそうと決めて、個性を引き出す設計をしました。
グランドからは昼間は子供の声が聞こえますが、夜は入居者さん達だけのオアシスになります。大きなインナーバルコニー風バスルームで快適風呂タイム!(おねえさん、学生がいる時間はしっかりブラインドしてね)。
疲れた東京人にできる限り豊かなバスタイムを提供したくて、この物件を計画しました!その結果、全部屋のバスルームが2階にあるという個性的な物件になりました。
グランドから物件を見たところ
2階のバスルームが外から見る
A室2階のバスルーム
B室2階のバスルーム
C室2階のバスルーム
E室2階のバスルーム
〇JR常磐線「金町駅」徒歩15分
人気の駅でもなく、駅からの距離もありますが、河川敷に近いという特徴がありました。そこで、「河川敷推し」をこの物件の個性にしようと決めて、購入しました。
犬の散歩向き物件、サイクリング賃貸など、打ち出し方には色々な候補がありましたが、なぜか猫に特化することになり、「立体猫物件」として設計をした事例です。
河川敷で、ジョギング、サイクリング暮らし!
https://smi-re.jp/maison-neko.html
https://smi-re.jp/maison-neko.html
外観
猫サイン
河川敷推し
A室メゾネット
B室メゾネット
猫ドア
ロフト
〇西武池袋線「中村橋駅」徒歩6分
土地をセレクトする時に、この「緑道(水路敷き)」が個性になると思いました。あえて敷地境界に塀やフェンスを設置せず、積極的に緑道を取り込み、緑道から出入りできるように設計した事例です。
緑道(水路敷き)を使いこなす、入居者歓迎バーベキュや、休日ゆっくりひなたぼっこ暮らし
https://smi-re.jp/terrace-kukuna.html
緑道推し(テラス玄関)
緑道夕景
エントランス(勝手口)
快適な浴室
緑道で入居者歓迎BBQ
緑道で入居者歓迎BBQ
今回は4つの割安で個性のある土地を活用したアパートを紹介しました。次回は5つの事例を紹介する予定です。