会社を退職して専業大家になってから、マル7年が経ちました。これでサラリーマン大家時代より専業大家時代の方が長くなりました。
もともと私の不動産投資を始めた時の大きな目標のひとつが「大家業で独立すること」でした。その目標は、勤め人として働いている自分への猛烈な違和感からきていました。
理由はわかりませんが、とにかく会社組織で働いている自分への違和感や、(職場の人たちとはうまくやれていたつもりですが)心の底からはその環境に馴染めていない自分を常に感じていました。最終的に3つの会社に勤めました。すべて異業種でしたが自分なりに必死で働きました。
妻から、「あなたは良く言えば責任感が強いけど、融通が利かずに頭が固いよね」とよく言われます(汗)。自分でも納得しています。ものごとをあまり柔軟に考えられず、一度決めた事をやり続けようとしてしまいます。
それが不動産や筋トレなど良い方向に進む時もありますが、実生活や人との係わりではそうではないこともあります。例えば、会社員時代は職場で与えられた仕事をきっちりやろうとしすぎて、必要以上に自分を枠に入れようとして窮屈に感じていたように思います。
そんな中で消えない違和感を解消しようと2度も転職したわけです。しかし、そこで気が付いたのは、会社が問題ではなかったという事でした。どの職場も仕事にも上司にも恵まれていました。ただ環境を変えても「従業員」という立場でいる以上、違和感は解消されないとある時に気付きました。
そんな中で出会ったのが不動産投資でした。そこでは自分の決断ひとつで物事を進めていけることが新鮮で面白く感じました。次第にこの仕事を本業にして、賃貸業だけで生活していけるようになりたいと思い始めました。
今はこの道を選んでよかったと思っていますが、当時、勤めたどの会社でも貴重な経験や出会いがありました。そのお陰で賃貸業を進めていけたので、会社への感謝の気持ちは忘れずにいたいです。
■給料の2倍のキャッシュフローでは危なかった
賃貸業をはじめて約6年が経ち、不動産のキャッシュフローが本業給与の2倍になったタイミングで会社に退職願を提出、専業大家になりました。当時の給与は月35万円ほどだったので、その2倍があれば不動産も生活もやっていけるだろうと考えました。
その少し前に物件を売却して、小ぶりなアパートなら現金で購入出来るくらいのキャッシュがあったので、たとえ専業になって融資が付き辛くなったとしても、それを使ってやっていけるだろうと思いました。
それまで単身赴任生活だったので、妻も「家族の時間が増える」と賛成してくれました。ただ、今になって思うと本業給与の2倍のキャッシュフローではリスクが大きかったと感じます。
所有する物件が全て新築だったら築10年くらいまでは大きな修繕費は掛からないかもしれません。ただ、私の所有物件は(新築もありましたが)、築30年オーバーの物件も複数ありました。
不定期でかかってくる修繕費や、空室が出た時の原状回復費用、広告料を払って入居付けする費用など、出ていくお金は全て既存物件からのキャッシュフローと自己資金で捻出しなければいけません。
加えて、幼い子供を含めた家族5人の生活費と、新規物件取得に向けた自己資金も貯めていく必要があります。それらを考えると、当時の自分の状況であればキャッシュフローは本業の3倍を目安にしても良かったと思います。
結果的に、心配していた融資については、既存の取引金融機関から変わらず受けることができました。特に信金さんは親身に相談に乗ってくれました。会社を退職したからと言って、イコール融資が出来ないという事はありませんでした。
ある金融機関さんでは、「駆け出しのサラリーマン大家さんよりも、賃貸業の実績があって専業にしている方の方が融資を出しやすい」と言われて、意外に思いました。
また、日本政策金融公庫に相談に行った際も、会社を退職した事はそれほど大きな問題ではなく、それよりも決算書の内容とこれまでの取引実績の方が大事と教えてもらいました。実際に、会社を辞めた後も何度か戸建の融資でお世話になりました。
そうした経験から、専業大家になる前はお付き合いのできる金融機関を増やして、実績を積み上げ、良い関係を築いておく事が大切だと感じます。私は結果的に、会社員を辞めた後もスムーズに物件を買い進めることができていますが、決して当たり前ではなく、幸運だったと思います。
■専業大家になった次の1年半で戸建て15軒を購入
専業大家になって一番のメリットと感じたことは「時間を得たこと」でした。それまで時間の制限があり出来なかったことが、自由に出来るようになりました。気になる物件が出てきたら、すぐに現地にも金融機関にも行けます。これは自分にとってすごく嬉しい事でした。
私は専業大家になってから戸建投資を始めたのですが、おかげで一年半の間に15軒も取得する事ができました。融資を使うアパートと違って、スピード勝負の傾向が強い戸建では、この「すぐに動ける」ことのメリットを強く感じました。
不動産意外でも、病気の家族に付き添える、入学式等の行事に参加できる事が嬉しかったです。家族旅行も高く混んでいる時期ではなく、安く空いている時期を選べるようになりました。同じ事をしていても満足度が上がり、何だか得した気になります。
父親として当たり前のことを当たり前に出来ることをありがたく感じます。また、仕事や遊びや家族といった境目が薄まり、その時、重要な事を優先出来るようになりました。
ここからは精神論的な話です(笑)。「専業大家になるなら、その先の目標があるべき」と考える人は少なくないでしょう。確かに専業大家になることが人生のゴールではないので、別の目標は大切だと思います。ただ、私自身は目標がなくても別に良いのではという気もします。
もし、会社員を卒業することや専業大家になることが目標なら、それを叶えてみれば良いと考えます。やってみなければその時に自分がどう感じるかはわからないからです。もちろん、その責任は自分で負うことになりますが。
私自身は賃貸経営をやればやるほど面白いと感じて、もっと思いっきりやってみたいと思う気持ちが強かったです。ちなみに、当時は役員報酬を最低限にして、社会保険料の負担も抑えていました。その少ない役員報酬と、個人名義のアパート収入で生活をしていました。
しかしある時、金融機関の担当者さんから、「それで家族5人どうやって生活しているのですか?」と訊かれたのがきっかけで、周りから見ても違和感のない決算書の形にしていこうと、売上の増加に合わせて役員報酬の額も変えていきました。
■労働収入でも不労所得でも、どちらか一方でもその両方でも良い
当然ですが専業大家になっても勉強することは次々と出てきます。その都度、調べたり、詳しい方に教えてもらいながら、自分を鍛えてきた感じです。それでもまだまだ先輩方には遠く及びません。
そして、以前は組織人として働く事に堅苦しいイメージを持っていた自分ですが、今は労働収入でも不労所得でも、どちらか一方でもその両方でも、自分のしっくりくる方を選べば良いんだと思うようになりました。少しは頭が柔らかくなったのかもしれません笑。
「〇〇がよくて、〇〇がダメ」とか「〇〇すべき」とか、答えは一つという思考にとらわれると、選択肢を狭めてしまうような気がします。「どっちでもいいけど、自分はこっち」という柔軟な考えで進んでいけると良いですね。
今日は、サラリーマン大家でいた時間より、専業大家でいる時間の方が多くなったことで考えてみたことをまとめてみました。
不動産投資でサラリーマン卒業を目指している方の参考になれば幸いです。