■ 築古RC物件は購入しない方が良いの?
こんにちは♪ 豊橋大家ゆうちゃんです!
今回は以前にも少し取り上げた内容となりますが、築古RCの購入前のチェックポイントについて、掘り下げてお話ししたいと思います。
築古RCについてはリスクが高く不動産投資家の中でも不人気なジャンルかなと思います。実際、交流させていただいた全国の不動産投資家の方でも積極的に築古RCの再生にチャレンジしている方は数名しかいませんでした。
また、ベテラン大家さんの中では「築古RCは修繕費がかかって儲からないのでやめた方がいい」と注意喚起する方も多くいらっしゃると思います。
実際、私は、これまで築30年以上の中古RCについては、12棟225部屋(内旧耐震物件は6棟123部屋)を購入しましたが、確かに思い出すだけで苦しくなるようなトラブルもありました。
ただ、購入前に慎重にチェックすれば、大きな出費はある程度回避できますし、安く仕入れて商品化すれば、かなり儲かる物件に変貌するのも自分の経験から断言できます。
そのため、築古RCは絶対購入しない方がいいのではなく、事前にしっかりリスクを把握した上でその分安く購入することが重要であると私は考えています。
そこで今回は、大きな出費や致命的な欠陥のある物件を回避するための購入時チェックポイントを具体的にお伝えしたいと思います。
■ラーメン構造か壁式構造か?
まず、結論から申し上げると、築古RCを購入するにあたっては、壁式構造の方が安心です。壁式構造では「耐力壁」と呼ばれる、縦や横からの力に強く分厚く強固な鉄筋コンクリートの壁が使われます。この耐力壁を使って床と壁を接合し、頑丈な建物を作っていきます。
このように、構造上非常に頑丈で、たとえば地震の揺れも四方に分散させる働きがあるため、「旧耐震基準でも頑丈さに優れている」という結果が出ています。
実際、阪神淡路大震災や東日本大震災などの大きな地震があっても、壁式構造のマンションの被害は少ないという報告も多数あったとのことです。
私が平成28年に購入した1980年築の旧耐震築古RC物件について耐震診断を実施しましたが、現在の建築基準法の基準を十分にクリアする結果となりました。
それに対して、「ラーメン構造」とは柱と梁で建物を支える構造のことです。柱と梁の接合部を剛接合して耐震性を高めていますが、もともとの基本構造が「枠」のため、どうしても横からの力に弱いという性質があります。
「ラーメン構造だから購入しない」と決めているわけではありませんが、旧耐震RC物件の購入を検討する場合は壁式構造をなるべく選ぶようにしています。
■地盤はどうか?
近年、南海トラフ地震がいつ起きてもおかしくない状況といわれています。もしも地震が起きた場合、地盤が悪く傾いてしまった建物を解体して建築し直すとなると、地震保険だけで賄うことは困難でしょう。
また、人の命を預かる立場としては、なるべく安全な立地の建物を運営したいと考えています。
そのために、物件購入を検討するにあたって、ジャパンホームシールド (supportmap.jp)さんの「地盤サポートマップ」に住所を打ち込み、地盤の強度を確認してから買付を出すようにしています。
■メンテ費用の掛かる設備はあるか、状態はどうか、メンテ、交換費用は?
RCの再生には莫大な費用がかかるといわれる理由の一つに、設備の修繕があります。そして、お金がかかる設備とは、キュービクル式高圧受電設備、給水ポンプ、浄化槽、エレベーターであると私は考えています。
1)キュービクル
キュービクルとは、発電所から送られる6,600Vの高圧電力を100Vや200Vの低圧電力へ変電する施設のことです。多くの電力を一度に稼働する工場やショッピングモール、オフィスビルや病院、学校などに設置されています。
賃貸物件でいうと、住居系はほぼ設置されていませんが、テナントと住居が混合の建物には設置されている場合もあるので注意が必要です。
このキュービクルが設置されている建物は、年次点検、総合点検、電流・電圧測定など毎年の5~10万円ほどの点検費用が掛かる上、8~15年で交換必要になります。容量にもよりますが、交換には200~1200万ほどかかるようです。
2)給水ポンプ
集合住宅用の給水ポンプには揚水ポンプ・加圧ポンプ・増圧ポンプの3種類があります。
揚水ポンプとは、陸地にある受水槽から屋上に設置された屋上タンクまで、水を供給するためのポンプです。使用時のみ稼働するため、常時稼働する加圧・増圧ポンプと比べて壊れにくく電気代も安いです。
常に一定量の水がタンクに備蓄されているため、災害が起こった時や停電があった時にもしばらくは給水が可能というメリットがあります。ただし、タンク自体の定期的な清掃や消毒などメンテナンスが必要なため、管理の手間がかかります。
加圧ポンプは、1階にある受水槽から各戸へ直接水を送るために使用されるポンプです。ポンプ1台で稼働する単独運転方式や2台のポンプが交互に運転する自動交互運転方式などの運転方式がありますが、ポンプ1台で稼働するタイプは注意が必要です。
もし1台のポンプが壊れると水が使えなくなり、その間入居者は物件に住めなくなるため、その宿泊代や引っ越し代の保証をするために莫大なコストがかかる可能性があるからです。
また、災害時の水の供給はできないことや電気代が高いというのもデメリットとなります。
増圧ポンプは受水槽を使用せずに水道本管から直接各家庭へ水を供給するポンプです。受水槽や高架水槽を設置するスペースが不要で、建物の限られた面積の有効活用が可能です。
受水槽が必要ないので、清掃や管理のコストが抑えられるなど経済的なメリットもありますが、常時作動しているため揚水ポンプと比べると壊れやすく、災害時の水の供給ができないケースが多いです。
また、上記3種類のポンプについて、メンテナンス状況にもよりますが、交換時期は10年~15年程度で交換費用はメーカーや種類、大きさによりますが、一般的に50万円~2,00万円程度かかると言われています。
そして、故障していた場合、高額な費用がかかってしまうだけでなく、ポンプが入荷するまで入居募集もできなくなってしまうため、購入前のチェックはとても重要です。
3)浄化槽
下水が通っていない、もしくは通すのに多額の費用がかかる物件については浄化槽設備が導入されています。公共下水に比べて浄化槽は維持管理費がかかります。
具体的には、保守点検費、清掃費(汲取り)、法定検査費、ブロアの電気代、故障した時に修理費がかかります。
浄化槽の大きさにもよりますが、私が所有している152人槽と巨大な浄化槽設備がある物件については、安い業者を探しても年間汲取り費用332,000円、維持管理費60,000円かかっています。
また、浄化槽業者についてはエリアごとに縄張りがあり、エリアによっては1社しかなく独占状態で高額なメンテナンス費用を請求される場合もありますので注意が必要です。
4)エレベーター
エレベーターにはフルメンテ契約とPOG(Parts(パーツ)・Oil(オイル)・Grease(グリス))契約があります。
フルメンテ契約は部品交換や修理の費用などがすべて含まれており、追加料金や手間がかかりません。必要予算の把握がしやすいのもメリットです。デメリットは保守料金が高めに設定されていることです。
一方、POG契約は、一部の消耗品を除き、劣化した部品の取替えや修理等を含まないものをいいます。そのため、保守料は安いものの、修理費用や部品交換費用が含まれていないことにより、突発的な費用が発生する可能性がある点はデメリットだといえます。
築古RCの場合は、エレベーターがある物件については、フルメンテ契約を引き継ぐ形が安心といえます。
ただし、フルメンテ契約は新築時からの契約のため、POG契約からフルメンテ契約に変更することはできません。
実際私が購入したエレベーターアリの物件は全てPOG契約でした。
また、エレベーター交換済と謳った物件でも、実は、制御盤だけ替えて三方枠やエレベーターの籠は全く手つかずというケースもあります。
そのため、購入を検討する段階で、全リニューアル、準リニューアル、制御盤リニューアルのどれをしたかの確認が必要となります。
あとは、POG契約でも、保守会社によっては月10,000円~60,000円と保守料に大きな差があります。メーカー系は高いですが独立系の保守会社は安いので私は購入後独立系の保守会社に変更しています。
ただ、注意が必要なのは保守会社変更にあたっては制御盤の電気図面が必要となる場合があります。
実際、私が今年1月に購入したエレベーター付き築古RCで、メーカー系の保守会社の保守料が高額だったため、独立系の保守会社に変更することにしました。
ところが、メーカー系の保守会社が「制御盤の電気図面は知的財産だ」と主張して、資料を出してくれず、保守変更できない困った事態になっています。
私はオーナーとして建築図面と同じようにエレベーターの図面も何かトラブルがあった時やその保守会社に万が一のことがあった場合に対応できるように、自ら保管しておく必要があると思うので、ここは譲れない要望として粘り強く交渉していこうと思っています。
1回で書ききれませんでした。次回は、水道メーターの交換時期、共同分電盤のアンペア数は?共用部の非常用はしごは劣化していないか?配管の材質などのポイントについて、紹介します。