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研究・調査

21/04/01

No.37

研究者の育成、研究成果の発信・普及を目指して

卵のおいしさの解明を主テーマとした共同研究講座「キユーピー・東京家政大学 タマゴのおいしさ研究所」を開設

設置期間は2021年4月1日(木)から3年間

 キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:長南 収、以下キユーピー)は、学校法人渡辺学園 東京家政大学(理事長:菅谷定彦、以下東京家政大学)大学院に共同研究講座「キユーピー・東京家政大学 タマゴのおいしさ研究所」を4月1日(木)付けで開設します。

 キユーピーは、国内の鶏卵生産量の約1割を取り扱う食品メーカーとして、かねてより卵に関する研究に取り組んできました。本共同研究講座の代表、峯木眞知子特命教授は「調理に及ぼす卵の働き」について、長年にわたり研究を続け、「タマゴ科学研究会」の理事としても、卵の魅力・おいしさについての普及・発信に取り組まれています。キユーピーとも、「卵」をテーマに多くの研究を連携・協働して進めてきました。

※ タマゴ科学研究会・・・鶏卵に関する研究や情報が集まる学術的で中立的な研究会。鶏卵に関わる学問の確立・進展、さらには科学的に正しい情報の普及に努めている。http://japaneggscience.com/

 本共同研究講座では、「卵のおいしさの解明」を主要なテーマとして、基礎的な研究を行い、その成果を子どもからお年寄りまで分かりやすく伝えていきます。卵は身近な食品にも関わらず、その栄養や機能性などの知識・おいしさのメカニズムは正しく理解されていません。また、卵の研究者も少ないことから、本共同研究講座では、それらの啓発・普及活動とともに、研究者の育成も図っていきます。

 共同研究講座の概要は以下の通りです。

講座名 キユーピー・東京家政大学 タマゴのおいしさ研究所
設置場所 東京家政大学大学院 人間生活学総合研究科
設置期間 2021年4月1日から2024年3月31日(3年間)
研究体制 特命教授 峯木眞知子(前東京家政大学栄養学科教授、前同学副学長)
特任講師 小泉昌子(前東京家政大学栄養学科期限付助教)
共同研究員 設樂弘之(キユーピー上席研究員)
テーマ例
  • 卵黄の色が卵料理のおいしさに与える効果
  • ゆで卵のむきやすさに関する研究
  • 卵のおいしさに影響するコク・風味と成分の関係
  • 濃厚卵白と水様卵白の構造の違いが及ぼす物性への影響

【参考:最近の共同研究およびキユーピー協力の研究】

1)島村綾、峯木眞知子(2017)「卵殻粉を添加したパウンドケーキの調製」東京家政大学研究紀要 第57集(2),pp.49-54

《研究概要》
本研究では、カルシウム摂取につなげることを目的に、卵殻粉(キユーピーが提供)を添加したパウンドケーキを調製し、そのできあがり重量および体積、試料内部の色度、物性測定、組織観察、官能評価試験から、その製品の品質および保存による影響を検討した。卵殻粉の添加は小麦粉の1.0%程度では、製品の性状に与える影響は少ないことが分かった。

2)古川香,森髙初惠,峯木眞知子(2019)「pHの異なる乾燥卵白が加熱後の中華麺の性状変化に及ぼす影響」日本家政学会誌70巻9号,pp.579-589

《研究概要》
加熱中華麺のテクスチャーの経時変化を防ぐことを目的に、異なるpHの乾燥卵白A、B(キユーピーが提供)を粉の2%添加した中華麺の力学特性、構造および官能特性を、乾燥卵白無添加の中華麺(無添加麺)と比較した。
B卵白の麺(B卵白麺)は、3種類の麺の中で加熱後の歩留まりが最も高く、最も緻密な構造であった。加熱後30分以上経過したA卵白の麺(A卵白麺)およびB卵白麺の破断特性値は、加熱直後の無添加麺の破断特性値との間に有意な差は無かった。官能評価により、加熱後60分で、A卵白麺およびB卵白麺の硬さと歯切れは無添加麺よりも有意に高いと評価された。乾燥卵白は加熱中華麺のテクスチャー改善に有用であった。

3)設樂弘之,小泉昌子,峯木眞知子(2020)「5℃もしくは25℃で2週間貯蔵が鶏卵のおいしさに与える影響-産卵3日目の卵との比較-」日本家禽学会誌,第57巻2号,pp.45-52

《研究概要》
鶏卵の風味が鮮度の違いにより異なるのかを調べるために、25℃もしくは5℃の条件で2週間貯蔵した卵と産卵後3日目の新鮮卵で卵料理を作成し、その風味の違いを官能評価により調べた。
5℃貯蔵卵は、官能評価において新鮮卵試料との間に違いが少なく、どの調理でも有意差は無かった。また、調製した卵調理の物理的特性においても新鮮卵試料との間に有意な差は見られなかった。従って、5℃2週間の貯蔵では、産卵3日目の卵と同程度の風味を保つことが明らかになった。
現在、食品の鮮度は重要視され、消費者は新鮮なものから食品を選択するため、賞味期限内であっても古くなると廃棄されるようなことが起こっている。卵についても同様な考えを持つ消費者が多く存在する。本研究により、貯蔵期間が長くなっても貯蔵温度を低温に保つことで新鮮なものと風味に差がなく食べられることが判明した。本実験の結果が一般的になれば、卵の廃棄ロスを少なくすることができ、社会的に有効な情報と考えられる。


印刷時には、PDFデータをご利用ください。

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