職場にひとりは「嫌いな同僚」がいるものです。怠け者だったり、失礼なメールを送ってきたり、おかしなクセがあったりする人かもしれません。どう対処したら良いでしょうか?

筆者のPeter Bregman氏はCEOたちを対象とした戦略アドバイザー。ハーバードビジネスレビューの記事も書いており、それらをまとめた『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』も刊行されました。今回はBregman氏が「嫌いな同僚とうまくつき合うためのTips」を教えてくれます。

今回は私とJeff氏の話をご紹介しましょう。Jeff氏は私と同じくライターであり、スピーカーであり、コンサルティング会社の代表でもあります。私の知る限り、彼は優秀なプロフェッショナルであり、とても尊敬されており、能力も高く、誠実で、人気もあります。ある時、共通の知人を介してJeff氏との共同プロジェクトの話が持ち上がりました。私とJeff氏が一緒に働くことは、お互いにとって明らかに利益があるように思われました。

ただし1つだけ問題が...私はJeff氏が嫌いだったのです

彼を見るとムカついてしまうのです。彼は自己中心的で、自惚れ屋な人間に見えます。なぜなのかをはっきりとは言えませんが、とにかくJeff氏が嫌いなのです。

私は、共同プロジェクトの話を持ちかけた知人にこのことを打ち明けました。彼女は「Jeff氏を好きになる必要はない」そして「ただし、うまく立ち回ること」と助言をくれました。とにかく「なんとかしろ」ということです。

さてどうしたものか...あなたは嫌いな人と一緒に仕事をするハメになったらどうしますか?

「笑顔でやり過ごす」はうまくいかない

まともな会話もできず、打ち合わせすらままならない困った人っていますよね? あなたの時間を浪費するような人です。仕事の邪魔とさえ感じる時があるでしょう。しかし、それでもあなたはその人を「嫌い」なわけではありません。コミュニケーション能力が低いだけなのであり、あなたはその人を助けたいと思っているかもしれません。でも、「嫌いな人」は話が別です。嫌いな人は顔を見るのもイヤなはず。ましてや、一緒に働くなんて考えたくもありません。

よくあるアドバイスは「ビジネスライクに付き合え」です。必要な会話だけを最低限して、すばやく立ち去ればいい。「笑顔でやり過ごす」というわけです。しかし、私の経験ではそんなことは不可能です。「嫌いな人」は私を本当に腹立たせ、会話そのものがストレスになります。彼らに対する怒りや不満で頭も心もはちきれんばかりです。

一番の問題は、あなたがその人を嫌いなことを「本人も気づく」ことです。きっと相手もあなたを嫌いになるでしょう。嫌いな人と一緒に働くということは、「あなたを嫌いな人」と一緒に働くということでもあるのです。

話は単純です。あなたを好きな人はあなたを助けてくれます。反対に、あなたを嫌いな人はあなたの邪魔をするでしょう。だからこそ、人から好かれたほうが良いに決まっています。ある研究によると「人から好かれるほど人生はよりスムーズに、より生産的に、より有意義になる」そうです。逆にいえば、人とうまくやれないことはそれ相応のリスクがあるわけです。

その場しのぎの「笑顔でやり過ごす」戦略は長い目で見てもうまくいきません。

では、どうすれば?

自分が「なぜその人を嫌いなのか」を考えてみます。貪欲なヤツなのかもしれません。利己的だったり高慢だったりするかもしれません。意地悪なのかもしれません。つまり、何かしら性格上の欠陥があるわけです。私がJeff氏のことを気に食わないと思っているように。

ここからが難しい部分ですが、よく聞いてください。自分の心の中にある影の部分に焦点を合わせるのです。自分自身の中に、どこか「受け入れられない部分」があるはずです

あなたは自分が貪欲だったり、利己的だったり、高慢だったり、意地悪だったりすることを受け入れられますか? あなたは自分の中にあるそんな部分が嫌いなはずです。違いますか? あなたは自分のそうした側面を見たくないのです。嫌いな人を見たくないのと同じように。

つまるところ、あなたがその人に我慢できなくなるのは、自分の中の嫌な部分を想起させられるからです。

それがわかると、嫌いな人と付き合うことが面白くなります。相手を知れば知るほど、その人を受け入れれば受け入れるほど、自分自身のことがよくわかり、自分の中の嫌な部分を受け入れられるようになるのです。

嫌いな人とうまくつき合う方法は「自分の嫌いな部分とうまくつき合うこと」

「嫌いな人」があなたの役に立つのです。嫌いな人を「自分を理解するため」に使ってください。なぜ、彼らとの関係に問題があるのかを考えてください。なぜ、彼らがそれほど腹立たしいのでしょうか? コミュニケーション能力の低さや失礼なメールのことはいったん忘れてください。彼らのどんな性格や振る舞いが我慢できないのですか? 

その答えを自分に当てはめるとどうなりますか? ゲームとしてやってみましょう。自分自身の中に嫌いな部分を見つけられたら勝ちです。

私自身でいうと、Jeff氏はたしかに自分の中の嫌な部分を体現していました。私も自己中心的で、自惚れ屋な人間だったのです。

自分のことを貪欲、利己的、高慢、意地悪などと感じた時のことを思い出してください。思い出せますか? 自分の中に魅力的な部分と嫌な部分の両方があることがわかりますか? 自分の中に白も黒もあることを受け入れますか? あなたは複雑性をもった「人間という生き物」です。そのことを認めますか?

自分を受け入れられれば、他人を受け入れることができます。嫌いだった人を好きになれるかもしれません。そして、彼らを助けたいと思い始めるかもしれません。

私だってJeff氏の中に自分を見ることは簡単ではありませんでした。自分の嫌な部分を認めるのにいまだに苦労しています。しかし、たしかに私の一部であり、受け入れることで人生がよりよくなることもわかっています。

それだけではありません。私は今、Jeff氏が好きです。

世界は変えられたのです。

What to Do When You Have to Work With Someone You Don't Like | Harvard Business Review

Peter Bregman(原文/訳:伊藤貴之)

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