しかも「たまたまうどんの本場である香川県出身ですが、それほどうどん好きというほうではなく、むしろ、今でもそばのほうが好きなくらいです」(34ページより)というにもかかわらず小型製麺機の設計・製造・販売を手がけ、結果的には業界1位のシェアを獲得してしまいました。
つまり本書で紹介されているのは、そんな著者がたどってきた成功へのプロセス。きょうはビジネスについての考え方が書かれた第6章「ビジネスの本質とは」に焦点を当ててみます。
1.成長し続ける
社会全体が大きく進化しているからこそ、進化をやめたら社会から置き去りにされてしまう。著者はそう危機感を投げかけます。店舗にしても、過去のやり方を踏襲しているだけでは集客は困難。そういう意味でも、成長は不可欠だということです。(172ページより)
2.自らリスクをとる
ビジネスは、リスクをとることからスタートするもの。「今、うまくいっている領域(安心領域)から抜け出し、リスクをとってこそ、新しいことがはじめられる」といいます。もちろん、次のより高いステップへ進むために。(174ページより)
3.先に与える
ビジネスの秘訣は、こちらから先に与えることだそうです。目先の損得を先に考え、先に自分が儲けようとするから、うまくいかなくなる。そうではなく、先に与え、お客さまにわくわくしてもらえるような体験をしてもらうことが大切だという考え方。(180ページより)
4.情熱を持てることに取り組む
ビジネスでは常に問題が発生しますが、情熱を持っていれば、どんな困難に出会っても乗り越えられると著者は断言し、そしてこうも言っています。「物事がうまくいかなくて、解決しようとあがくときに、我々は鍛えられるのです」(183ページより)
5.いまだ解決されていない、お客さまの問題を解決する
お客さまがまだ気づいていない問題を、先回りして解決するのがビジネスの基本。
「欲しい」と口に出す商品(wants)ではなく、(潜在意識のなかにあって)本人すら気づいていない必要な商品(needs)をとらえ、解決することが大切だといいます。(190ページより)
6.心地良い状態を常につくり続ける
お客さまを増やすためにできることを考えると、「お客さまに快楽を与える」という方法に行き着くと著者はいいます。快楽とは、痛みの裏返し。どのような商品を開発すれば、よりいっそう心地よさを感じてもらえるかを徹底的に研究した人や会社が、結果的には成功するということです。(194ページより)
7.今ある姿をあるべき姿に変えるプロセス
ビジネスは、現状肯定でははじまらない。現状を否定することで、いままでの常識を覆す店が生まれる。そして、いままで成功しているビジネスは、すべて現状を否定していることからはじまっているといいます。(198ページより)
8.ライバルとは絶対に競争しない
著者が「絶対にライバル店と競争してはいけない」と力説するのは、もし競争したら、最終的には価格競争になるから。しかし牛丼チェーンを例に出すまでもなく、それではただの消耗戦になってしまいます。それより他社に負けない強みをつくってしまえば、不毛な競争に明け暮れる必要がなくなるといいうわけです。(200ページより)
9.お客さまを明確にする
著者は、事業の成否は「どのようなお客さまを持つか」によって決まってくると信じてきたそうです。重要なのは、どんなお客さまを集めるかを明確にすること。また、お客さまを明確にするには、まず自分の使命と提供する勝ちを明確にする必要があるのだとか。(203ページより)
10.得たい結果を得るためには、先に犠牲を払う
得たい結果を得るためには、往々にして先に犠牲を払うことが必要となるもの。その結果、お客さまに感謝されるとスタッフのモチベーションが上がり、お客さまからの信頼が増し、事業は好転していくそうです。(208ページより)
全体的にはかなり「自分史」的な色彩が強いので、評価の分かれる部分はあるかもしれません。とはいえ著者が決して一般的ではない道のりをたどってきた人物だからこそ、興味深く読み進められるのも事実です。
(印南敦史)