ライフスタイルの選択肢のひとつとして浸透しているシェアハウス。これまで2回にわたって、その実態をリポートしてきました。

「できるだけ早く引っ越したい」〜シェアハウスのホントのところを入居者に聞く(2)

そこに出会いはある? シェアハウスのホントのところを入居者に聞く(1)

今回も実際にシェアハウスに住む人へのインタビューを通して、メリットやデメリット、実際の生活でのエピソードをお聞きしました。

今回、インタビューに登場いただいたのは、プロギャンブラーののぶきさん(41歳)。今年5月から大田区にある日本最大規模のシェアハウス「コンフォート蒲田」に入居しています。オークハウスが運営するこの8階建てのシェアハウスには260室の個室があり、今年3月のオープン直後にたちまち満室となった人気物件です。

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家賃は光熱費込みで7万1000円。個室にはデスクや冷蔵庫などの家具・家電が揃いますが、キッチンやトイレ、ランドリールームといった水回りは共用で、各フロアに設けられています。その他、1階には広いリビングダイニング、大型キッチン、ヨガルーム、大浴場、ロッカールーム、さらに防音スタジオが2つも完備されています。

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のぶきさんは大学卒業後の25歳のとき、フリーターを経て、貯めた1000万円を元出に独立を決意。これまで、世界82カ国を渡り、15年間プロギャンブラーとして生計をたててきました。

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プロギャンブラーというお仕事

──まずは、このシェアハウスに入居するきっかけはなんだったんですか?

のぶきさん:管理会社に友人が勤めていて、この物件の情報を得たのがきっかけです。この物件のすごいところは、短期間でどんどん1階の設備が充実していくことですね。防音スタジオなんかもあって、セミナーで話す機会が増えているので、今度トークの練習に使おうと思っています。

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──水回りも共用だと他の入居者と顔を合わせて暮らすことになると思いますが、そういったシェアハウス特有の"団体生活"に対する抵抗は?

のぶきさん:そもそも中学・高校は全寮制で、16人部屋に住んでいて、気づけばリーダー的存在になっていましたし(笑)、ギャンブルの旅中は、ドミトリーに滞在したりしてきたので、共同生活には慣れてるんですよ。

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──プロギャンブラーとして生活しているということですが、どこでどんなギャンブルをしているんですか?

のぶきさん:現在は世界中のカジノをまわり、ポーカーをしています。これまで延べ250カ国を旅してきました。コアに行くところは、カナダ、メキシコ、ラスベガス、オーストリアをはじめとするヨーロッパ各国ですね。ヨーロッパだけで40カ国にカジノがあるんですよ。

──年間通じて、どんなスケジュールで動いてるんですか?

のぶきさん:一番多いのは、13〜15カ月間ほど世界各地を周って、日本に1週間ほど戻ってくるというパターンですね。海外での1日の流れは、滞在しているホテルで自然に目覚めて、カジノへ行って勝負して、いい波をつかめたら止めるという感じです。いい波は2分で訪れる日もあれば、14時間持続する日もあります。

──短時間で勝ったときは、ギャンブル以外の時間は観光とかしてるんですか?

のぶきさん:日帰り旅行もしますよ。あとは、その国の語学勉強や自己啓発の時間に充てますね。収入のノルマは、ギャンブルで勝負して必要な分を勝つことです。必要な分というのは、次に行く国への旅費なんですが、野生動物の狩りと同じですね(笑)。清貧さがハングリーさと自己成長を促すんです。1カ月の生活費8万円を必死に稼ぎ出したこともありますし、逆に大勝ちしてお金が余っているときは、ヨーロッパ30カ国を周遊したりもしますよ。それから、3日で100万円勝って、カジノから追い出されたこともあります。

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──そもそもプロギャンブラーになろうと思ったきっかけは何だったんですか?

のぶきさん:大学の卒業旅行でラスベガスに行ったのがきっかけです。大学卒業後は普通に就職せずに独立して何かしたいと考えたときに、3年間ぐらい休みたくない!と思えるような楽しいことを仕事にしたいと思ったんです。そこで、"ギャンブル"をビジネスとしてスタートさせました。だって、勝負で世界をさすらうなんて、楽しすぎるでしょ?(笑) 実際、プロギャンブラーとして活動している今、楽しすぎて、海外に出かけるたびにもう日本に帰って来ないかもと思ってしまうほどです。そんな生活スタイルなだけに、シェアハウスのように気軽に入居できて気軽に退室できるのは僕にはぴったりですね。

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──好きなことをしながら世界を旅するなんて、かなり楽しそうですね(笑)。だけど、一か八かの賭け事でコンスタントに勝って、実際に生活できるものなんですか?

のぶきさん:一応、一年中世界を旅しながらプロギャンブラーとして、この15年間、ちゃんと生活できてますよ(笑)。この4年の勝率も、80%、83%、86%、90%と推移しています。あとよく誤解されるんですが、たとえば宝くじ売場の前でビビッと来るような直感というのは、実は無意味なんです。確かに、勝負中に「こうした方がいいよ」とメッセージ降りてくることがたまにありますが、僕はそうした直感も、自分の中で理論づけできてはじめてそれに従います。それから負けるときは必ず敗因があって、それについて徹底的に分析してから次に臨みますし、ポーカー関連の専門書はこれまで800冊は読んで勉強しています。

ギャンブラー流暮らしの道具

──やはり勝つための努力をしているんですね。それにしても、のぶきさんの部屋の中って殺風景なまでに何もないですね。

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のぶきさん:ミニマル化すると得することばかりですよ。昔はTシャツが100枚あったり。靴も常時10足はあって、ひとり暮らしなのに玄関先がパーティーみたいになってたんですけど(笑)。

──断捨離できるきっかけが何かあったんですか?

のぶきさん:やはり旅で人生観が変わりましたね。荷物を減らしていくのもギャンブル同様、自分との戦いで、7年がかりでした。きっかけはカナダの空港でロストバゲッジに遭って、ショックなのと同時に「実は大したモノってなかったな」とあっさり思えたことですね。今思えば、モノがなくなってショックというより、急にモノがなくなったことへのショックだったと思います。これを機に、所持欲から卒業できましたね。

──その境地に達すると、どんな感じですか?

のぶきさん:僕のすべての荷物は、そこにあるバックパックひとつに納まるんです。いつもはホテル暮らしで、ノマドな移住をし続けるスタンス。引っ越し作業も、いつも12分で完了するほど身軽です。

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プロギャンブラーの自分管理術

──大勢のシェアメイトたちとはどのように関わってるんですか?

のぶきさん:基本的に年齢関係なく仲がいいですよ。学生や外国人を含め、色んな人がいるので、刺激があって楽しいですね。シェアメイトだけで、facebook上では100人と繋がっています。シェアメイトからメールが来たり、駅前で食事したりすることもあります。それと最近毎日、若い世代のシェアメイトから人生相談を受けてますね。

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──どんな相談を受けているんですか?

のぶきさん:たとえば昨日だと、「私の性格で悪いところを3つ挙げてください」とか言われたり(笑)。毎回、その人に合わせた最善の答えを考えるので、勉強になります。毎週さまざまな所で講演依頼を頂いていて、新しいトークのヒントになったりもしてます。

──たとえばどんなことですか?

のぶきさん:たとえば、独立を考えている若い人へのアドバイスをするとき、最初の1円を稼ぎ出すことを「マネーラインを越える」というふうに説明してます。ほかにも、稼いだお金で自分の収入を賄うことを「プロラインを越える」という新しい言い回しが、話してたら口からぽろっと出てきたり。それから、何かを決めあぐねている人から相談を受けたとき、僕だったら何か新しいことを決めるときにどういう基準で動くかと考えて、「スマイル基準」で動くな、と考えたのでそれを説明したり。ちなみに「スマイル基準」とは、その人と過ごしたら楽しいか、スマイルできそうな場所かという僕のオリジナルな基準です。

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──のぶきさん、このシェアハウスの兄貴的な存在ですね。設備も充実しているし、明らかに過ごしやすそうな雰囲気ですけど、このシェアハウスのデメリットを強いて挙げるとしたら?

のぶきさん:楽しすぎちゃうことですね。僕は今どき携帯を持っていないんですが、あえてそうしてるんです。というのは、突発的に飲みの誘いなどがあるとすぐに誘惑に負けて「行く行く!」となってしまう方だからなんです。僕はメモ魔で4種類のメモを用いてます。「死ぬまでにすることリスト」「今月のスケジュール」「今週すべきこと」「今日すべきこと」。スケジュール管理できないと、上司の命令なき僕の人生は進まないんです。

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──ストイックに自分を管理してるんですね。

のぶきさん:よくそう言われるんですけど、このメモのおかげで、夢に向けて、今日一日何をやるべきかを落とし込めるので、人生にブレや迷いがなくなるんですよ。自分が築き上げた「人生の勝ち方」をシェアメイトと共有できるのは楽しいことです。ここでワークショップも企画中なんです。

プロギャンブラーは結婚をどう考えているのか

──シェアハウスでやりたいことはありますか?

のぶきさん:まだ入居して間もないので、一部のシェアメイトとしか知り合えていませんが、人生は楽しんだ者勝ち。ここに住む260人のシェアメイトと語りまくって、様々な視点を取り入れたいです。それはビジネスでも、人付き合いでも、人生の勝因となりますので。

ここの出会いで新しいビジネスを生み出すのも楽しそうです。先日は夢へ向かってる方が欲しがってたコネクション相手をフェイスブックで検索したら、友達の友達だったんです。繋いであげてコネクションもシェアしました。日本最大のシェアハウスなんで、あらゆる可能性を秘めてます。

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──結婚の予定など、今後のライフスタイルについてはどう考えていますか?

のぶきさん:結婚する予定は今のところありません。昔は"幸せ=結婚"という固定概念を持っていましたが、今が充分に楽しいので、とりあえずはシェアハウス以外の場所への定住の願望は薄いです。同年代の友人はローンを組んで大きな家を買ったりしていますが、僕は家に対する考えもミニマル、コンパクト派です。それと、政治や青少年の救済といったボランティアに興味があって、最終的にそのためにできることを今後積み上げていけたらと考えています。

「プロギャンブラー」という突出して希有な肩書きののぶきさん。実際お会いすると、シェアハウス内の気さくな兄貴的存在でした。一見、破天荒そうに見えて、実は誰よりも信念や目的意識が強く、誰も経験したことがないことをやってきているからこそ、若いシェアメイトたちから慕われ、会社の上司などからは得られない、経験に基づいた説得力あるアドバイスができるのだと思いました。

それから単純に、シェアメイトにプロギャンブラーがいるってかっこいいです。こんな個性的で素敵なシェアメイトと出会えるのもシェアハウスならではの醍醐味なのではないでしょうか。

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プロギャンブラーのぶき/1971年東京生まれ。大学卒業後、1年間のフリーター生活を経て、プロギャンブラーとして始動。以来、世界82カ国を渡って修行を積む。年間勝率自己ベストは9割。現在、書籍の執筆やセミナーの講師などの活動にも力を注ぐ。

(庄司真美)