あなたの勤めている会社で、すべての会議が任意参加になったとしたらどうでしょう? 想像してみてください。どんな会議にも、出席を強要されなくなるのです。このルールが適用されたら、どれだけの無駄な会議がなくなると思いますか? 実は現在、こうした動きを見せる賢い企業が増えています。

ソフトウェア企業であるAtlassianのインフォグラフィックによると、標準的な企業の従業員は、1カ月間で31時間を会議に費やしていますが、そのうち少なくとも50%の会議は、完全な時間の無駄だと思われているそうです。91%の人は、少なくともいくつかの会議でボーッとしたことがあり、75%は隠れてほかの仕事をしたことがあり、39%は居眠りをしたことがあるそうです。さらに、こうした不必要な会議による損失額は、年間で実に370億ドルにも達します。

管理職クラスの場合も、大差はありません。コンサルティング会社Bain & Companyの調査によると、標準的な管理職は、1週間につきほぼ丸1日ぶんを会議で無駄にしており、上級役員クラスになると、終わりの見えない、極めて退屈で、非効率的ないくつもの会議のために、1週間の労働時間のうちなんと40%を費やしています。しかもこの数字には、会議前の準備や、会議後に文書を作って電子メールで送るなどの作業に費やされる無駄な時間は含まれていません。

仕事を片づけるには、もっと良い方法がある

前時代の経営実務が骨の髄まで染みついている経営陣なら、こうした批判を受けてもなお、「時間の無駄が生まれてしまうのは残念だが、会議は、なくてはならないコミュニケーション手段だ」と言うでしょう。しかし、そんな主張に根拠はありません。どの業界を見ても、会議をなくしても十分に機能している企業の数は急増しています。中には、30年以上もこうしたやり方を続けている会社もあります。こうした成功のトレンドから言えることは、会議を完全撤廃するか、少なくとも任意参加にするよう検討すべきだ、ということです。実際に、多くの企業がこの方向に舵を切っています。

米国の半導体メーカーのIntel社では、「明確な目的がない限り誰も会議を開けない」という強制的なルールを課しました。Lenovoの場合は、どんな会議であっても、あさっての方向に向かいだしたらスタッフが打ち切って良いことにしました。ほかにも多くの企業で、会議は任意参加になっています。Semco(時価総額10億ドル、出資者3000人)は、すでに30年近く前からそれを実践しています。さらに、すべての会議を廃止した企業もあります。南米向けの比較検索エンジン「Project eMT」の運営会社もそのひとつ。会議は「禁止されている」のです。

筆者が創立したCrankset Groupでは、何か解決すべき個別の問題が起きた時には関係者が集まります。しかし、定例会議は月に1度しか開きません。当社には充実した「Business Transformation Center」と呼ばれる施設がありますが、社員は全員、自宅で仕事をしています。そのため私たちは、時折開かれる顧客向けのイベント以外には、お互いに顔を合わせる機会がありません。定例会議を月1回に限定することで、私たちは集中したコミュニケーションがとれるのです。

「2本足の掟」

会議を任意参加にするなら、良い方法があります。「オープン・スペース・テクノロジー(OST)」といいます。あらかじめ決めておくのは会議の時間と場所だけで、あとは参加者が到着してから自律的に議論が起こるようにする手法です。信じられないかもしれませんが、この方法はとてもうまくいくのです。たとえ参加者が数千人いてもです。

OSTには「2本足の掟(The Law of Two Feet)」と呼ばれる約束事があります。会議に出席すると決めた場合、参加者はそこで、「学習する」か「貢献する」か、どちらかをしなくてはいけません(これを徹底するには、かなりの努力が必要です)。もし、議論の場にいても学ぶものがなく、貢献もできていないと感じたなら、参加者は席を立って、2本の足でその場を離れ、2つの行為のどちらかができそうな別の場所を探す責任があります。同じ会場の中の、別の課題を話し合っているグループに移っても良いし、休憩所に行っても良いのです。

すべての企業がこの掟を採用すれば、おそらく会議の半数には誰も参加しなくなり、残りの会議でも、ごく些細な点を詰める段階になれば、多くの参加者は途中で席を立つようになるでしょう。

昔気質の管理職は、このやり方を受け入れそうにない

一部の企業では、どうしてもこの方法を採用できないようです。そうした会社では、会議とは、管理職のエゴを満たすために存在するものだからです。例えば、米Yahoo!のCEOマリッサ・メイヤー氏などは、絶対に会議の任意参加制を受け入れないでしょう。しかし当の本人は、CEO就任以来すべての会議に遅刻し、しかもこんなルーズな会議を、週に70回以上も開いたことがあると報道されています。こんなやり方をやめにすれば、参加者は自分の時間を取り戻せるのに、メイヤー氏にはそんなことは思いもよらないのでしょう。

会議地獄から抜け出すためにできること

会議の任意参加制を採用すれば、大きなメリットが得られる可能性があります。Bain and Companyによると、同社が調査したある製造会社では、それまで60分だった会議を30分に短縮し、参加者を7人までと制限しただけで、200人をリストラするのに匹敵するコスト削減に成功したとのことです。

では、会議を合理化し、削減するためのアイデアを5つご紹介しましょう。

  1. 会議を任意参加にする。その結果、人が集まらなくなった会議は、無駄だったとわかります。
  2. 議題を書き出しておき、それに沿って会議を進める。会議の前に思いつかなかったような議題は重要ではないと判断し、会議の場には持ち込ませません。筆者の会社では、議題を共有のオンライン文書にまとめていて、定例会議までの丸1カ月の間、会社の全員が編集可能です。
  3. 15~30分で強制終了。これを徹底する最初の一歩は、最初に「この会議は午前10時30分で終わりです」のように伝えておくことです。そして、この予定を厳守します。
  4. 立ったまま会議を行う。日々の業務に関わっていて、廃止できない会議がある場合にはうってつけです。英国では、女王は諮問機関である枢密院と定期的に会合を開いていますが、そのすべては全員立ったまま行われます。女王や皇太子も立ったままですよ。そのおかげで、短時間で終わるのです。
  5. 大規模な会議では、問題の解決まで行かなくて良い。解決の段階までを全員が見守る必要は、まずありません。会議ですべきことは、「問題」と「当事者」を特定することです。その人たちには、その会議とは別の機会に、必要な人を集めて一緒に話し合ってもらいましょう。そして次の会議で、問題が解決したかどうかを報告してもらうのです。

仕事を片づけるのが先決です。会議をしている暇などありませんよ。

Chuck Blakeman(原文/訳:風見隆、江藤千夏/ガリレオ)

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