昨年秋、コネチカットに住むクリスさん(仮名)のもとにAmazonから荷物が届いたとき、不自然なことに気がつきました。

自分宛ての荷物をいくつか開けてみたのですが、何だかよくわからないものもありました。一体何だったのか、いまだに不明ですよ。

夫妻のAmazon Primeアカウントには外部から注文された形跡はありませんでした。

クリスさんがAmazonに問い合わせると、荷物を処分してもいいという答えが返ってきました。荷物は6箱、合計で10から12個ほどのものが入っていました。

クリスさんが私に見せてくれたのは、薪ストーブ用の熱で稼働する循環ファン。Amazonでは45ドルから55ドルの商品でした。

ちなみにクリスさんの家には薪ストーブはありません。

最終的に クリスさんは、クレジットカードの請求書に謎の注文の証拠を見つけました。

誰かが彼のクレジットカード番号を入手し、それで注文したのでした。荷物は、結果としてクリスさんのところへ送られましたが…。

こんな不正利用の手口は一見理解しがたいものです。一体なぜクレジットカード番号を盗んで自分のところにも届かないような注文をするのでしょうか。

しかし、事態は見た目よりも複雑だったのです。

ズル賢い詐欺の手口

そのカードの発行会社であるアメリカン・エキスプレスに問い合わせた時、ようやく謎が解けたとクリスさんは話してくれました。

詐欺師というのは、期限切れの古いクレジットカード番号を手に入れたら、そのカードがまだAmazonで使えるかどうかを試すのです。

使えるとわかれば最終的に大きな買い物をして、注文がカードの持ち主のところへ届くとき、玄関先からそれを盗む人というわけです。

Amazonアカウントからカード番号が盗まれたという証拠はないものの、クリスさんはアカウントに期限が切れた古いクレジットカード番号を登録したままにしていました。

アメリカン・エキスプレスからは、古いカードはアカウントから削除するようにと言われたそう。

まるでブラッシング

「まったくズル賢い手口です」と言うのは、消費者関連専門家のクラーク・ハワードさん。クリスさんのようなケースは、ブラッシングと呼ばれている詐欺のもっと悪質なバージョンなのだそうです。

ブラッシングとは、レビューの評価を上げるためにAmazonの第三者販売者が商品を他人に手当たり次第送りつけることです。

すると購入者はその注文について「Amazon認証購入者」としてレビューを残すことができるのです(第三者販売者がAmazonでのランキングを上げるために行なう詐欺については、リプライ・オールの「The Magic Store」を聞いてみてください)。

でも、このような低レベルの詐欺では、クリスさんのクレジットカード番号が盗まれた経緯は明らかになっていません。

期限切れのクレカが盗用されるかもしれない

あなたが10年間Amazonを利用していて、アカウントに5~6種類の支払い方法を登録しているとしましょう。登録されているクレジットカードの期限が切れていても、アカウントが不正アクセスされた場合に悪用される可能性があります。

なぜそれが可能なのかというと、クレジットカード会社は顧客である小売業者と良好な関係を保ちたいからなのです。

もし小売業者(たとえばAmazon)がカード会社(たとえばアメリカン・エキスプレス)と取り決めがあり、リスクを負うことに同意しているなら「小売業者は、実際には無効になったカードを受け付けることができるんです」とハワードさんは説明しています。

「このシステムは、ある程度の詐欺はあるだろうという前提に設定されています」とハワードさん。

しかし、支払い方法の更新を忘れた顧客からの注文を受けることによって少額のリスクを負うことと、その注文から小売業者が 得られる収益とを比べてみると、小売業者がリスクの方を選ぶのかは明らかです。

そのリスクを負わないであろう小売業者は、家電小売業者だけだとハワードさんは言います。でも、「オンラインの詐欺師は、たとえばAmazonのようにどの小売業者がリスクを負うのか、負わないかを知っている」のだそうです。

詐欺師は使用可能なクレジットカードを見つけると、それを使いカード名義人の名前で注文し、注文の行方を追跡します。そして荷物が名義人の玄関に届けられるやいなや詐欺師本人かまたは手下が荷物を盗むのです。

しかし、クリスさんのカードを使った詐欺師はあまり手腕がなかったようです。それとも、少額の買い物で試した結果に満足して、彼のクレジットカードを使ってもっと大きな買い物をしようとしているのかもしれません。

クリスマス直前、わたしたちはクリスさんをAmazonとコンタクトさせることができました。Amazonの返事は当件を調査するというものでしたが、休暇後にフォローアップのメッセージを送ったにもかかわらず返事はありません。

Amazon担当者は「注文していない荷物が届いたというこのお客様のお問い合わせについては調査中です。これは弊社のポリシー違反ですので、違反した販売者は排除され、支払いも止められ、適切な対応をするために警察と協力することもあります」とメールで答えています。

とにかくこのような事態を防ぐため、ハワードさんがすすめる予防策を挙げましょう。

ネットショッピングには特定のクレカ1枚だけを使う

まず最初のアドバイスは、ネットショッピングの際に、特定のクレジットカード1枚だけを使うこと。1枚だけなら注文を追跡するのも簡単ですし、なにか怪しい動きがあればすぐに目にとまるからです。

クレジットカードのリワードはもらえないかもしれませんが、ネットショッピングを1枚のカードにまとめることで詐欺に遭う可能性を減らせるのは価値があるとハワードさんは言います。

次回ネットショッピングをする時には、そのカードを使い、オンラインアカウントに登録してある他のカードはすべて削除しましょう。

1回きり有効なカード番号を使う

2つ目はもっと慎重にしたい時の方法で、オンラインで買い物をするたびに1度しか使えない、使い捨てのクレジットカード番号を利用することです。

もしその番号が不正入手されたとしても、最初の買い物後は悪用されることはありません。

これは、銀行やクレジットカード会社から「virtual card」、または「virtual card number」と呼ばれているものです。

支払い方法を登録しておける利便性はなくなりますが、安全性を得ることができます。

自宅のセキュリティも考えよう

最後のアドバイスは、自宅の玄関先や荷物が届けられる場所に防犯カメラをつけるということです。

値段も高くてちょっと不気味なスマートドアベルのようなものでなくても大丈夫です。防犯カメラは50ドル以下で買えますし、玄関先での荷物泥棒が疑われる場合には証拠がつかめます。

その証拠によって、警察が泥棒や詐欺師を捕まえられるかもしれません。

不審なことがあったらすぐに連絡

もしすでに不審な荷物が届けられて詐欺の疑いがあるなら、すぐに手段を講じてください。

怪しい動きがあってから1~2週間経ってしまっていると、名義人本人の潔白を証明したり、その動きが本当に不正利用だと証明するのも難しくなるとハワードさんは忠告しています。

クレジットカードの請求書を開封しない人や電子明細書を見ない人がたくさんいます。

何か不審な点があれば、すぐにカード会社と小売業者に連絡しましょう。

アメリカン・エキスプレスは、クリスさんの被害についてはコメントできませんでしたが、同社の担当者は金融情報を保護するようにという文書を消費者に送ったそうです。

「もし不審な点があれば、金融機関に直接電話してください。不正利用だと判明したらすぐに必要な処置をとります」と、担当者は話しています。

ハワードさんは、不審な荷物が届いたら小売業者とオンラインチャットでやりとりすることをすすめています。

それによってチャットの記録が残るからです。Amazonがクリスさんに指示したように、小売業者は荷物を捨てていいと言うかもしれませんし、料金前払いラベルを使って荷物を送り返すよう指示されるかもしれません。

事態が解決しても油断は禁物です。「一度狙われてしまったら、また被害に遭うことがあるでしょう」とハワードさんは警告します。詐欺師が、わたしたちの経済活動に侵入する手段は進化しつつあるのです。

「詐欺の手口は変化し続けています。犯罪者はいつも私たち個人の行動や企業のシステムの弱点を探してるのです」とハワードさん。詐欺師が別の弱点を見つけたとしたら、いまから半年後のアドバイスはまったく違うものになるかもしれません。

人というのは何かが自分の身に起きないと、なかなか気をつけるようにはならないんですよね。

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Image: Younes Stiller Kraske/Shutterstock.com

Source: The Magic Store, Clark, Gizmodo

Lisa Rowan - Lifehacker US[原文