神話を作ったひとりの映像職人

東映ピンキー&バイオレンス映画再ブーム!(後編) 鈴木則文監督独占インタビュー

tokugawa.jpg『徳川セックス禁止令 色情大名』©東映
エロチックでユーモア溢れる痛快艶笑風刺劇

■前編はこちらから

 
【鈴木則文 女優論】

 ピンキー&バイオレンス(PV)と銘打つからには女優がいなけりゃはじまらない! ラピュタ阿佐ヶ谷でリバイバル上映中の『恐怖女子高校』シリーズをはじめ、監督・鈴木則文のフィルモグラフィを語るうえでハズせないのが、2大スター、池玲子&杉本美樹を筆頭とする女優陣の活躍だ!!

──聞くところによると、池さんはデビュー当時まだ16歳だったとか?

鈴木 そうなんだよな。いまだったら大変なことになるけど、あのころは「未成年じゃマズいだろ。じゃあ、隠そう」ぐらいのことで済んだんだ。

──プロフィールは完全に捏造だったわけですね(笑)

鈴木 まぁそこが、天尾(完次)プロデューサーのスゴいところでもあってさ(笑)。池より杉本のほうがちょっと年上だったけど、この『恐怖女子高校』のときでも、彼女たちはおそらく18、19くらいだったんじゃないかな。

──池さんは歌手への転向を宣言して、一時、東映を離れたりもされてます。

鈴木 いきなり歌手になるって辞めちゃってさ。で、新しい子を見つける時間もないし、だったらってことで主演に抜擢したのが杉本だったんだ。デビュー作(『温泉みみず芸者』)から一緒に出てるのに、片方だけが売れて、くやしい想いをしてるだろうとも思ったしね。

kimuranorifumi2_sub02.jpg“どのコもまんべんなく可愛がる”という
のが監督のポリシー

──それが『徳川セックス禁止令 色情大名』ですね!

鈴木 そう。GW公開の作品だったから、杉本じゃ危険だなとも思ったけど、そこはサンドラ・ジュリアン(※)をうまく乗せて、「せっかく日本まで来たのに、キモノを着なきゃ、日本映画じゃないよ!」とか言いくるめて。まぁ、言ってみればコスチュームプレイを最大の売りにしたわけだ(笑)

──女優さんを扱うのはやはり大変ですか?

鈴木 そうだね。どっちかをかわいがりすぎたり、恋愛関係になったりしちゃうともうダメ。俺の作品はとくに女の子がたくさん出てるから、どの子にもそこそこ気があるように思わせなきゃいけないしさ。たとえば、杉本を恋人にしたら、少なくとも池にはたちまちバレちゃうだろ? そうなると池がクサるし、それは逆でも同じことだよな。

──撮影現場ではよく、疑似恋愛に近い感情になるとも言われますが……。

鈴木 似てる部分はあるよ。クランクアップすると憑き物が落ちたようになくなるけどね(笑)。たださ、恋の場合は好きって気持ちだけでいいけど、監督として人を使う以上、そこには多少なりとも尊敬もなきゃいけない。もっとも、池と杉本の場合は自分で探してきた子だったし、妹みたいに思ってたから、そういうのはハナからなかったけどね。

──それにしても当時の女優さんには、昨今の若者とは比較にならないぐらい大人の色香がありますよね? 

鈴木 それは、いまの子たちと違って、彼女らがわりと早くからシャバを知ってるからじゃないかな。

──僕はてっきり監督の演出のたまものかと。

鈴木 あぁそりゃ、たまものもあるな(笑)。俺は飲みに行ったりしても、ふだんからいい顔探してるから。「あっ、こんな顔すんのか!」とか、ちょっとした仕草でもかわいかったら、「これ使おう!」とかさ。

──女心を利用して、女優同士を競わせたりなんてことは?

鈴木 それはしなかったな。そもそも、彼女たちは女優として来たわけじゃなく、まったくの素人。名もない少女だったわけだしね。それに俺は当時から、無名の少女がある日突然スターになるっていう、一種の神話をつくりたくて映画を撮ってたってとこもあったから。

──それは名言ですね!

鈴木 そうだろ? 神話をつくるんだよ、映画ってのは。だから、たとえあの2人がいなくても、俺はいくらでも撮る自信はあったしな。

──もしかして、当時から「俺、いいこと言うなぁ」と思ってらっしゃいましたか?

suzukinorifumi2_sub01.jpgインタビュー中の言葉の中にも
確かなエンターテイメント性を感じる

鈴木 思ってたな(笑)。やっぱり、俺が現場でなにか言うと、みんな感動してやってくれてたもん。

──ちなみに、池さんや杉本さんとはいまでも交流が?

鈴木 ずっと会ってないし、もう会いたくないね。俺のなかでふたりは、いつまでもあの当時のままだから。会ったって、ただのオバサンになってるだけだろ?

──それもちょっとさみしい気がしますけど……。

鈴木 いいか? 女と映画は捨てていく。これが俺の格言だよ。捨てる美学ってヤツでさ、脚本でもなんでも、材料集めて、いろいろたくさん書いても、そこからなにを捨てていくかで決まるんだ。昔のことを話すのが好きじゃないってのもそういうとこから来てるんだよ。

──では最後に、監督が撮られたPV作品に今後リメイクのオファーがあったらどうされますか?

鈴木 どうだろうね。いま、ああいう子たちがいないじゃない? 池なんかは、当時から「裸がおまえの衣装だ!」って力説してたくらい身体がよかったからね。身体が貧弱な子をむりやり脱がすのはやっぱり残酷だよ。

──となると、やはり女と映画は……。

鈴木 捨てて行く! でも、あんまり大きい字で書くんじゃないぞ! 言葉はいらん誤解も生むからな(笑)

 鈴木監督は、この『恐怖女子高校』をひと区切りにして、PV映画を後進に譲り、東映東京撮影所に進出。のちに、あの『トラック野郎』を生みだすことにもなる。集大成と位置づけられたシリーズ第2作の『恐怖女子高校 暴力リンチ教室』には、クライマックスシーンの大乱闘をはじめ、過激な演出がテンコ盛り! ニュープリントで甦る名作は、いますぐスクリーンで体感しよう!!
(取材・文=鈴木長月)

(※)東映がフランスから招聘したポルノ女優。ともに鈴木則文脚本・監督作品である『現代ポルノ伝 先天性淫婦』(1971)、『徳川セックス禁止令 色情大名』(1972)の2作に出演

 

 

 
鈴木則文(すずき・のりぶみ)
1933年生まれ。静岡県出身。東映を代表する映画監督、脚本家。菅原文太主演『トラック野郎』シリーズ、藤純子主演『緋牡丹博徒』シリーズの生みの親。『名奉行 遠山の金さん』『暴れん坊将軍』など、多くのテレビ時代劇の脚本も手がける。

「THE 恐怖女子高校」
ラピュタ阿佐ヶ谷にて絶賛公開中(~9月11日まで)

men's Pick Up