ここ数年になかった勢いで、インフルエンザが猛威を振るっている。医療機関の逼迫(ひっぱく)や治療薬の供給不足などが起きており、極めて憂慮される状況だ。社会全体で警戒を強める必要がある。
厚生労働省によると、昨年12月29日までの1週間に定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数が、1機関当たり64人を超え、現行の統計を開始した1999年以降で最多となった。最新の調査で県内の1機関当たりの患者数も46人を超え、警報レベルとされる30人を大きく上回っている。
県内の感染者の4割は10代以下が占める。冬休みが終わり、学校などでの集団生活により感染がさらに拡大する恐れがある。特に子どもの場合、インフルエンザ脳症への警戒を忘れてはならない。5歳以下が発症するケースが多く、急に症状が悪化してしまう。けいれんや高熱が続く場合は医療機関を受診することが大切だ。
新型コロナが2023年に感染症法上で5類に引き下げられ、日常生活の制約がほぼなくなったことがインフルエンザの流行につながったとみられる。外出時のマスク着用や手洗いやうがいの励行、小まめな換気、人混みを避けるなどの基本の対策を徹底したい。
家庭や職場などで集団感染を防ぐことが流行を食い止めるために有効だ。家族や従業員が意識を高め、玄関などに消毒液を置いて使用するなど、室内にウイルスを侵入させない工夫が欠かせない。
現在拡大しているのは、09年に新型として大流行したA型のH1N1で、感染力が非常に強く、高熱や激しい頭痛、せきなどの症状が特徴だ。前回の流行から時間が経過し、免疫を持っている人が少ないとみられる。
例年、A型の流行後にB型の感染者が増える傾向がある。B型は嘔吐(おうと)や腹痛、下痢などの症状が多い。A型に感染してもB型にもかかるケースがあり油断できない。
高齢者や基礎疾患のある人は重症化のリスクが高く、国や医師会などが最も有効なワクチン接種を呼びかけている。ワクチンの効果が出るには2週間程度かかる。流行が長期化することが想定されるなか、未接種の人は早めに接種して備えたい。
気がかりなのは治療薬の製造が追い付かない状況だ。供給量を確保するため2月下旬まで出荷停止を決めた製薬会社もある。製薬会社は増産を急いでほしい。
一部の薬局や卸売業者で治療薬や解熱剤を買い占める動きがある。政府は必要な人に確実に届けられる態勢を整えてもらいたい。