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新型コロナウイルス感染症新規患者数増加の裏にある、追えていない感染経路を見いだす質的研究の結果速報について

2021年8月10日
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

新型コロナウイルス感染症新規患者数増加の裏にある、追えていない感染経路を見いだす質的研究の結果速報

研究成果のポイント

新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査の結果では「感染経路不明」と判定される事例が多く、効果的な感染対策を行うにはこの経路を明らかにする必要がありました。そこで入院時に感染経路が不明であった事例を対象に調査を行いました。その結果、対象患者の64%において既知の感染リスクの高い行動歴がありました。行動歴からは感染リスクが高い場面が延べ24場面同定され、それらの場面の88%が飲食に関連しており、92%においてマスクが着用されていませんでした。また、特段の新規の感染経路を見いだすことは出来ませんでした。この調査により、感染には飲食がやはり多くの事例で関係していることとともに、感染防止に対する意識付けや十分な知識が不足していることがわかり、今後解決すべき課題として挙げられました。

背 景

従来の知見からは、新型コロナウイルス感染症においては未知の感染経路があり、流行の波と波の間にはこれらの感染経路を通じて感染が水面下で持続し、その後の感染者数急増への原因となっている可能性が指摘されていました。そこで第4波において新規陽性患者数が減少傾向となった時期(職場、学校、施設、家庭内での感染が少ない時期)に、新規感染者の感染経路を探索的に調査しました。

概 要

研究名

新型コロナウイルス感染症新規患者数増加の裏にある、追えていない感染経路を見出す質的研究
(A single-center qualitative study of untraced sources of infection among new cases of coronavirus disease in Tokyo, Japan)

方 法

COVID-19の第4波と第5波の間である2021年5月22日~6月29日に国立国際医療研究センター病院に入院したCOVID-19患者のうち、入院時に感染経路が明確であった患者、意思疎通が困難であった患者を除いた者を対象として、インタビュー調査を行いました。調査内容は、年齢、性別、国籍、発症14日前から発症1日前までの詳細な行動歴/接触歴とその場所や日時、マスク着用の有無、感染に関与しうると考えられた患者の考えや信念でした。

結 果

有効回答の得られた22名のCOVID-19患者のうち、男性が17名(77%)、女性が5名(23%)、年齢の中央値(四分位範囲)は52.5歳(44-66)、日本人が19名(86%)でした。22名のうち14名(64%)において既知の感染リスクの高い行動歴[1]がありました。また、行動歴/接触歴を解析し、既知の感染リスクが高い場面が延べ24ありました。そのうちの21(88%)が飲食関連であり、22(92%)においてマスクが着用されていませんでした。また、感染に関与しうると考えられた患者の考えや信念に関して、「仕事の後であれば職員同士でマスクなしで話しても大丈夫だろう」、「外食が感染のリスクだとは知らなかった」などが挙げられました。

コメント

この調査ではこれまでに見つかっていなかった新たな感染経路が明らかになったわけではなく、むしろ感染には飲食がやはり多くの事例で関係していることがわかりました。感染防止に対する意識付けや十分な知識が不足していることわかり、これらが感染拡大を助長する可能性があり、今後解決すべき課題として挙げられました。

参 照

[1] 新型コロナウイルス感染症患者行動調査票(感染源):https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/nisitama/topics/covid19/yousei.files/chousa2.pdf 

特記事項

本研究結果は、Global Health & Medicine誌に掲載されています。

研究に関するお問合せ先

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
国際感染症センター
担当:森岡 慎一郎
電話:03-3202-7181(内線 4657)
E-mail: shmorioka@hosp.ncgm.go.jp
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1

取材に関するお問合せ先

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
国立国際医療研究センター 広報係長
担当:西澤 樹生(にしざわ たつき)
電話:03-3202-7181 (内線:5097)<9:00~17:00>
E-mail:press@hosp.ncgm.go.jp