研究 / Research
コンテンツ科学研究系

KITAMOTO Asanobu
コンテンツ科学研究系 教授
研究紹介
データの結び付きから新しい情報を汲み出す
多岐にわたる気象情報を気象予測や防災に役立てていくためには、観測データだけでなく、ニュース記事や一般の人々から得られる多種多様な大量の情報から有用な情報を取り出すことが重要です。私は、このような具体的な課題に画像処理や画像検索などに関する研究成果を適用しながら、多種多様なデータを結び付けて新しい情報を汲み出すための方法論を開拓したいと考えています。
台風画像データベースを公開
2003 年に公開した台風情報サイト「デジタル台風」はその一例です。これは、1981 年以降25年以上にわたる台風を網羅した14 万件超の気象衛星画像データベースを核として、台風経路・勢力データやアメダス観測データも蓄積し、さらにニュース記事など人間が取材・編集した情報なども収集することで、台風に関する「あらゆる」情報を関連付けて整理することを目標としています。このウェブサイトは一般に無料公開しており、台風シーズンには多くのアクセスがあります。
「デジタル台風」のデータベースでは、気象庁のデータベースなどからは得られない情報がわかります。例えば、「今までに、ある地点の近くを通過した台風の数」といった過去の情報も容易に調べることができます。また予測についても、超大規模な数値データとスーパーコンピュータを使っても正確な予測が難しく、人間の経験的な知識や過去の事例の解析が重要な役割を果たすときがあります。こんなときに威力を発揮するのが「デジタル台風」であると言えるでしょう。
科学的観測データと人々の経験を基に新しい情報を生み出す
多種多様で大量なデータの蓄積からは、単純な数字よりもはるかに豊かなイメージを汲み取ることができます。例えば、「この台風は○○年の台風によく似ている」といった過去の経験に照らしあわせて対策をたてるなど、さまざまな場合に役に立つことでしょう。
このように「デジタル台風」の特徴は、時々刻々、過去の台風との類似性を検索しながら、現在の状況を判断するための関連情報を入手することができることです。すなわち、「デジタル台風」は、過去の台風に学んで防災意識を高める大きな役割を果たすことができます。
「デジタル台風」のもう1つの特徴は、一般の人々が情報提供に参加できることです。台風通過地域の人たちが現地の生の情報をブログなどから送ることで、ライブ感のある情報を集約する仕組みをもっています。今後は携帯電話などを使って、より簡単な方法で情報を送信できるシステムを追加していく予定です。
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