研究 / Research
コンテンツ科学研究系
PRENDINGER Helmut
コンテンツ科学研究系 教授
研究紹介
人工知能を搭載したドローンの画期的な用途を提案
ドローンの管制システムを開発
ドローンなどの無人航空機(UAV)には、配送をはじめ監視、通信、災害救助、野生動物の管理など、実に様々な可能性があります。 けれども、数多くのドローンが空を飛び交うようになれば、そこにはさまざまな問題が生じます。衝突事故の可能性は深刻な問題で、地上を行き交う人々の安全を脅かしかねません。
私は、これまで行ってきた人工知能(AI)に関する研究をもとに、「衝突危険性検知による衝突回避システム」("conflict detection and resolution"、CDR)を開発しました。これは、ドローンが離陸する前に衝突の可能性を予測し、離陸を遅らせるか、またはそのルートを変更することで衝突を回避します。ドローンがすでに飛行中の場合は、別経路への切り替えや飛行高度の変更など、可能な回避手段をシステムが決定します。
渋滞の回避も重要です。特定の地域に多くのドローンが飛行中のとき、新たに飛ばすドローンを先着順で受け付けたならば、順番待ちで長い時間がかかってしまいます。これを解決するためには、ドローンを空域ごとにグループ分けし、それぞれに対応する手法(バッチ処理)が有効です。これにより処理量を格段に増やすことができ、渋滞を軽減します。 この処理は瞬時に行えるため、スピードが求められる災害時には、大きな役割を果たすと思われます。
奥多摩でディープラーニングの活用実験
ドローンの画像認識の実用化実験もしています。この実験にはドローンを飛ばすことのできる環境が必要ですが、実験場所の提供に強い関心を示したのが、自然豊かな山岳地である東京の奥多摩市でした。 高齢化と過疎化が進む日本の多くの地方都市にとって、安価なドローンが活用できれば、大きな助けになるはずです。災害時に道路が塞がれてしまったときには、通信や被害調査に加え、食料や医薬品の輸送にも利用できるでしょう。
奥多摩市で行ったディープラーニング(深層学習)の活用調査では、ドローンによる状況認識の確認ができ、実用に一歩近づきました。
具体的には、現場の状況把握を目的とした動的マップを開発しました。現場上空を飛行するドローンが撮影した画像から、走る、歩く、横たわる、呼ぶ、などの人々の行動を理解して分類するものです。人々の行動以外にも、家屋、舗装地域、植物、水など、地上にあるものをリアルタイムで判断します。
このようなマップは複数の画像を比較することで、災害時の被害調査に活用することもできます。例えば、災害発生前に建っていた家が、災害後になくなっていたならば、その家は破壊されたという結論になりますね。人が一軒一軒まわって確認するのに比べ、極めて迅速かつ正確に調査を進めることができます。
また、野生動物の管理にも活用が期待されています。奥多摩にはサルが多く、市はサルが人に近づかない対策を常に講じなければなりません。猟師を雇うと費用が高くなりますが、ドローンならライトをパッと照らすだけで追い払うことができます。
ドローンとAIの開発は日々進歩を続けており、AIを装備したドローンがあなたの頭上を飛び交うという空の革命も、決して遠い将来の話ではありません。