(2024/11/29 05:00)
2025年度税制改正の最大の焦点は、所得税をめぐる「年収103万円の壁」の行方だ。ただ「壁」は複数あり、社会保険料の負担が発生する106万円や130万円の壁もある。自民、公明両党は27日、これらの壁を網羅的に議論することで合意した。懸案である「働き控え」の解消に本腰を入れるものと評価し、議論を注視したい。
パートタイムやアルバイトなど短時間労働者の年収が103万円を超えると、所得税を納める「年収103万円の壁」。19―22歳の大学生らは「特定扶養控除」の対象外となり、親の手取りも減額する。パートの主婦も学生も「壁」を超えないよう労働時間を調整する。人手不足を緩和し、所得と消費を増やすためにも見直しは急務である。
ただ基礎控除を引き上げて壁を高くする場合、高所得者ほど恩恵が及ぶ。壁に悩む層に的を絞るなど、メリハリを利かせた対策を講じてほしい。財源も課題だ。国民民主党の要求通り年収178万円まで壁を上げると税収が7兆―8兆円減る。自民党内には、基礎控除のうち所得税のみを引き上げ、住民税は上げない案もある。地方財政に配慮した最適解を模索したい。
「配偶者特別控除」の存在を周知する必要もある。年収103万円超で所得税が発生するものの、同150万円までは同控除が適用される。これを知らない主婦が少なくないようだ。
年収103万円の壁の見直しだけでは不十分だ。時代に合わない「第3号被保険者制度」廃止への議論を深めたい。会社員や公務員らの配偶者で、専業主婦または年収130万円未満の人は、保険料を払わずに基礎年金が給付される。共稼ぎ世帯が主流な中、専業主婦優遇や働き控えを招く制度で、経団連は制度の縮小を、連合や日本商工会議所は将来的廃止を求める。
厚生労働省は、夫の扶養から外れて厚生年金に加入する「年収106万円の壁」撤廃の検討に入った。年金財政に資するほか、非正規雇用者らの老後の不安が緩和される。支払う保険料は負担でなく、将来への備えであると受け止める必要がある。
(2024/11/29 05:00)
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