テーマ日銀の多角的レビュー
大規模な金融緩和の下では日銀が大量の国債を買い入れ、低金利が続いてきました。日本の財政にはどのような影響があったのでしょうか。
Q3.
日銀による大規模な国債買い入れと低金利の継続は、政府の財政規律が緩む要因となった。
集計結果・個別の意見
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インフレ率が名目利子率を上回り実質利子率がマイナスになると、国債や預金の保有者にインフレーションタックスがかかり、他の税収を増やさなくても支出が増やせるので、財政規律が緩む。しかしインフレーションタックスは預金や年金に頼る家計の生活を脅かす逆進的な課税である。
大量の国債を発行しても低金利で消化できる場合は、当然ながら、そうでない場合と比べて、財政規律は緩む。ただし、緩んだことが悪いかどうかは、また別の話である。
日銀・政府は「財政ファイナンス」を否定するが結果としてそうなったと思う。国債残高の累増に対して金利が低下する状況は政治家や国民に対して安易な財政出動を促した。MMTを含めて財政赤字を問題視しない風潮にも繋がったのではないか?
多角的レビューでも事実上認めている
国債暴落に対する政府の懸念を払しょくしたという点で、日銀による国債買い入れは意義があったと同時に、正にその点において財政規律に対するインセンティブを阻害したと言える。低金利の継続も借金のしやすさが増すという点で財政規律に負の影響をもたらしたと言える。
2013年度からコロナ禍前の期間に「国・地方の公債等残高対GDP比」の上昇トレンドが加速したという統計的事実はなく(財務省資料)、この間、一般会計歳出の対GDP比は低下し、一般会計税収の対GDP比は増加し、公債発行額の対GDP比は低下した(一般会計決算統計等)。また、仮に利払い費の低下によって財政余力が高まったとしても、それは直ちに「財政規律が緩む」ことを意味しない。
2016年のNIRPとYCCにより、長期金利が大きく低下、その後の国債発行の金利負担を低減してきた。1990年以降の長期金利の低下傾向が、国債の増発にもかかわらず歳出における国債費の低減に寄与したのは間違いない。ただしそれは、2013年に始まったことではない。財政規律の維持は、経済財政諮問会議、政府、国会の役目であり、中央銀行に与えられた役割(マンデート)ではない。
国債を発行して日銀が買い入れれば問題ない、と発言する政治家が多数おり、財政規律は緩んでいる。
財政支出の低い機会費用を招来させただけでなく、補正予算での財政規模が増えた点にも財政規律は関連していると思います
借入れ制約という財政規律の要因を長期間にわたって緩めてきたため。
財政規律が緩めであるのは低金利政策以前からであるため
そう思う。
日銀と財務省にはその意図はなかったと思います。ただ、一部政治家の意識下にまで影響がなかったと言い切るのもなかなか難しいのではないでしょうか。さらに問題なのは、当事者にその意図がなくても、市場に財政規律が失われたと思わせてしまえば、国債価格が下がって財政運営が困難になってしまうことです。
政府の財政規律は日銀が大規模な国債買い入れをする前から緩んでいた。
これは、因果関係を証明するのが難しい。日銀の量的緩和政策とともに規律が弛緩したように見えるとすれば、それはコロナ禍などの危機を背景に財政支出を拡大したものの、コロナ禍が収束しても膨らんだ支出をそれに合わせて柔軟に手じまいできない、予算提出権を持つ政府と審議権を持つ議会の側に問題があるのであって、それを日銀のせいにするのはお門違いのように思う。
中央銀行が、政府の財政悪化防止に配慮して、また自己のバランスシートに既存の低金利の国債を多量に背負い込んでしまっているので、インフレが進んでも金利を上げづらくなっているという今の状況は、中央銀行の中立という民主主義+資本主義の原則上、難しいジレンマであると思う。
財政規律が緩んだかどうかについてデータに基づく学術研究を見たことがない
日銀による大規模な国債買い入れと低金利の継続は、財政面で規律を緩ませる要因となり、真に効果的な政策を見極めるインセンティブを下げる。結果として、費用対効果が低い政策が行われてしまう。
財政規律はまったく機能していないと思います。その背景にあるのが、国債に頼ることが「当たり前」となっているマインドであり、日本の財政がそのような状況であることをきちんと説明しない政治とマスコミ、また、関心を持たない国民の惰性の結果だと思います。
政府の財政規律が過去十五年間でどのように変化したのか、私はよく知らない。金融政策との実際の因果関係についても、知らない/分からない。ただし、「大規模な国債買い入れと低金利の継続」が「緩い財政規律」を可能にする、ということだけは言えるだろう。
政府と日銀の独立性が崩れることによる意思決定の歪みが生じることは想定できるが、どの程度財政規律に影響を与えたかは、実証的に検討が必要と思われる。
大規模な国債買い入れと低金利政策の継続は、政府の利払いコストを大きく抑制し、国債発行に対する市場の懸念を和らげ、結果的に政府の財政規律を維持しづらくする要因となっていると考えられる。財政政策を適切に実施すれば経済成長を促すことも可能だが、現在実施されている給付金などの短期的な需要喚起策では、持続的な成長には結びつきにくいだろう。
財政規律の弛緩と強力な金融緩和政策のあいだの因果関係が判断できない。財政規律の弛緩は、好景気なのにも増税をしなかった意味で80年代後半に起源を持ち、90年代になって基礎的財政収支は恒常的に赤字になった。一方、超金融緩和は、95年秋のコールレートの超低金利誘導から始まっている。財政規律の弛緩と超金融緩和は、同時進行といえないであろうか。
2013年の異次元緩和の開始からコロナ禍を経て政府債務残高/GDP比はさらに増加した。しかし、この水準が持続可能なものかどうかは依然として議論の余地がある。インフレ率や名目金利の高騰が起こっていないことから、いまのところ、財政規律の弛緩は表面的に問題となっていないように思われる。
景気の回復局面においても、財政環境が改善する(政府債務残高が縮小する)見通しが立っていない。
低金利の継続が政府の財政規律の緩みに繋がる要因となり得るとは思うが、その因果関係を示す十分な根拠が見当たらない。
日銀による異次元緩和が始まる前から財政規律は緩んでおり(2012年度の政府債務残高は対GDP比で約200%)、金融政策によって追加で規律が緩んだかどうかは明らかではない。むしろ、規律が緩んでいたからこそ、大胆な金融政策を行う土壌が整っていた、とも言えるのではないか。
専門外なのであまり自信はありません。
この「財政規律」が,資金調達の容易さが歳出を増やすことを指すのであれば,一般的にそう考えるのは自然であろう.しかし,それを示す信頼できる実証研究は存在しないのではないか.また,「日銀による大規模な国債買い入れ」が無くても,それへと向かわせた根本のしくみや構造が手つかずのままであれば,違った方法を用いて同様の歳出を続けたのではないかという感想はもっている.
日銀が国債買入れにコミットしたことによって政府の資金調達が容易になり、それが政府のコロナ禍等に対する財政政策に影響を与えた可能性は大きい
金融政策は専門外で責任を持った発言ができかねますので、控えさせて頂きます。申し訳ありません。
専門家として何か根拠のある回答ではなく素人の印象にすぎませんが国債発行に対する抵抗感が薄れる効果があったような気はします。
テーマ
日銀の多角的レビュー
異次元緩和、経済学者の評価定まらず 「プラス」は3割
日銀は昨年末、過去25年間の金融政策を検証した「多角的レビュー」を公表しました。このうち2013年4月に始まった量的・質的金融緩和(異次元緩和)について、「現時点においては、全体としてみれば、わが国経済に対してプラスの影響をもたらした」と評価しました。
異次元緩和が「全体としてみれば日本経済にプラスの影響をもたらした」という日銀の評価は妥当である。
金融緩和の長期化が経済の生産性に与える影響はプラス面の方が大きい。
日銀による大規模な国債買い入れと低金利の継続は、政府の財政規律が緩む要因となった。
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