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インタビュー:OpenFlowによってネットワーク業界に何が起きるか? (前編)

2012年1月10日

プログラミングによってネットワークの構成や機能をコントロールする「Software-Defined Network」がネットワーク業界の大きなテーマとなり、それを実現する技術であるOpenFlowに注目が集まっています。

Software-Defined NetworkやOpenFlowによって、ネットワーク業界はどのように変わっていくのでしょうか。

2011年10月にスタンフォード大学で開催されたOpen Networking Summit 2011で、同大学教授でNicira Networks Co-FounderのNick McKeown(ニック・マキューン)氏の講演「How SDN will Shape Networking」(SDNはネットワーキングをどう変えていくか)を記事で紹介しましたが、そのマキューン氏にインタビューする機会を得ました。

マキューン氏は、OpenFlowの標準化を行うOpen Networking Foundationのボードメンバーでもあります。

インタビューには同社Co-Founder&CTOのMartin Casado(マーチン・カサード)氏も同席、一部のコメントを補足していただきました。

OpenFlowによってネットワーク業界に何が起きる?

──── OpenFlowやSoftware-Defined Networkによって、ネットワーク業界にはこれから何が起きるのでしょうか?

fig

マキューン氏 いま、パブリッククラウドがSoftware-Defined Networkのテクノロジーで作られ始めています。こうした話はまだ広く伝わっていませんが、大きな変革や挑戦が始まっているところです。ここにはネットワークをプログラミングによってコントロールしたいという大きなニーズがあります。

そのニーズを考えると、次に私たちNiciraのような、ソフトウェアによってそれを実現するような企業や、NECのようにOpenFlow対応の機器ベンダーなどが市場に参入するのは当然のことでしょう。

これが、ネットワーク業界で起こることのステップ1です。

携帯電話のネットワーク、企業のネットワークに広がる

マキューン氏 ステップ2では、パブリックな広域ネットワークでも、ネットワークをプログラムによってコントロールするというニーズが起こるでしょう。

いまは、テレコム企業が新しいサービスを提供しようとしても、10年前に標準化されたような技術を備えた機器を用いるため、差別化が難しくなっています。

これから5年先を考えると、多くのテレコム企業やグローバル企業は、広域ネットワークでもSoftware-Defined Networkを利用し始めるでしょう。そうでないと差別化ができません。

そして多くのテレコム企業がSoftware-Defined Networkを使い始めると、それと密接な関係にある携帯電話のネットワークでもSoftware-Defined Networkが使われるようになるはずです。携帯電話市場は非常に大きく利益も大きいため、これに備えて多くの機器ベンダーはいまから投資を行っているところです。

携帯電話ネットワークへの利用はステップ2.5といったところでしょう。

マキューン氏 そしてステップ3では、一般企業や家庭でのSoftware-Defined Networkの利用が行われます。特にビデオ配信の分野は急成長しており、ネットワークの規模も複雑性も高まっていますし、家庭向けにはネットワークをリモートコントロールするという課題もあります。企業でもネットワーク管理をアウトソースすることを考えると、この先同じような課題を抱えることになるでしょう。

私たちの予想では、10年以内にどんなタイプのネットワークにもSoftware-Defined Networkが利用されるだろうと考えています。

ただ、マーチン(マーチン・カサード氏)と私が何かを予想すると、実際にはそれが予想より早く起きてしまいます(笑)。いま10年以内に、と言いましたが、実際にはそれよりも早く起きるかもしれません。

OpenFlowはネットワーク機器をコモディティ化しない

──── Software-Defined Networkを実現するテクノロジーとして、なぜOpenFlowが注目されたのでしょうか? Open Network Summit 2011の基調講演でカサード氏は「OpenFlowは特別新しい技術でもないし、設計が素晴らしいわけでもない」と発言しています。それでもなぜOpenFlowがここまで注目されたのでしょう。

マキューン氏 いちばん重要なポイントは、そこにOpenFlowが存在したからだと思います。

Software-Defined Networkを実現するにはネットワーク機器に対するオープンで標準化されたインターフェイスが必要でした。コンピュータでいえば、CPUの命令セットのようなものが必要で、まずはそうしたものがなければ先に進めなかったのです。

また、多くのOpenFlowの最初の実装は既存のネットワーク機器に対する追加機能としての実装となることから、既存のチップや機器でも使えるようなものでなければならないといった実務的な理由もあったといえるでしょう。

マキューン氏 「OpenFlowはネットワーク機器をコモディティ化する」という意見がありますが、私はそうは思いません。

OpenFlowの機能だけを備えたネットワーク機器を提供するベンダももちろんあるでしょう。しかし、製品の差別化するために拡張機能を追加していくベンダもあると思います。そうした健全な競合が起きるのではないでしょうか。

fig 同席したNicira CTOのマーチン・カサード氏(写真は昨年11月来日時のもの)

カサード氏 OpenFlowは標準化のプロセスが、ほかの標準のプロセスと大きく異なっています。一般に標準化のプロセスは、標準化団体が技術的な経験がないまま標準化を進めてしまうか、あるいはベンダーが実装したものを標準化団体に持ち込んで標準化されるかでした。

しかしOpenFlowの標準化はソフトウェアの開発プロセスに近く、新しいバージョンを発表し、多くの実装を作ることを素早く繰り返し行っています。たとえミスがあっても早い段階で発見し、それをフィードバックして検証できるのです。

OpenFlowはこうした進化によって、いずれ誰もが認めるネットワーキングのベストテクノロジーになっていくと考えています。

──── まるでアジャイル開発手法のようですね。

カサード氏 そう、その通りです。

(続きの「インタビュー:OpenFlowによってネットワーク業界に何が起きるか? (後編)」では、Software-Defined Networkを実現するプログラミング言語などについて聞きます。)

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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