お風呂とリビングの新しい関係
手間もお金も賢く使いながら、平凡な3LDKの間取りの部屋にメリハリをつけて、象徴的なお風呂を持つ住宅に大胆にリノベーションしたお客様の事例を紹介します。
リビングに真っ白な浴室がぽっかり浮かぶさまは、そこだけ異空間のようだ。設計/Open A
駅から少し歩いて、喧騒を抜けたあとの閑静な住宅街に建つマンション。もともと近くに賃貸で住まわれていたFさんはこの街をとても気に入って新たにこのマンションの一室を購入された。最上階の角で、良好な眺望と日当たりを持ち、そして室内と同じ面積ほどの広いバルコニーもついている、気持ちのよい物件だった。
そんな環境のよい住戸だが、購入当初は小さく区切られたありふれた3LDKの間取りだった。巷で売り出されている60平米~80平米ほどの3LDKは、ほとんどこれなのではないかと思ってしまうほど、本当によく見かける間取り。玄関を入ってまっすぐの廊下の左右に個室がふたつ、そこを抜けるとトイレ、洗面、浴室、キッチンなど水廻りがあり、奥にリビングダイニング、その隣にまた個室がある。誰しも一度は訪ねたり、もしくは住んだりしたことのある間取りではないだろうか。
そんな平凡な間取りがどうすれば理想の住居になるか、Fさんが熟考の末にだした答えはスマートだった。「リビングと浴室を現況より広く開放的にすること」。できるだけ既存のつくりを活かしながら、その2つを一新することとした。
浴室は、リビング側へ少し出っ張らせることで広さを確保。また躯体は区分所有の範囲外であるために新しく窓をつけることはできないので、リビングとの間の仕切りをガラス張りにした。湯船に浸かりながらリビングを眺めれば、そちらの窓を介して外の景色が見れてしまう。なんとも開放的。逆にリビング側から見るとガラス張りの前にルーバーの折戸がついているので、普段は閉めてしまえば、それは収納扉のようにしか見えない。また開ければ、お風呂の向こう側に見える洗面室の鏡への映りこみの不思議さもあいまって、真っ白な浴室はさながら異空間のような按配だ。リビング側へ少し出っ張る形になった浴室は、秘密の扉がついた特別な箱といった際立ち方で、この住居の象徴となった。
浴室からリビングを眺めた様子。もともとは窓のない浴室だがリビングの窓を通じて外を望める。 /リビング側からみた浴室。洗面室の大きな鏡に周りが映りこんで、不思議な異空間のよう。
一方、リビングは、もともとリビングダイニングと個室の2つに分かれていたものを、真ん中にあった壁を取り払って1ルームに。大きなソファーもゆったり置ける部屋となった。角部屋なので壁2面に窓があって、明るく、風も抜けて気持ち良い。冬でもブラインドを開ければ、日差しがたっぷりで暖かいそうだ。
小さく区切られたリビング(解体前)。壁を取り払い1ルームに(解体後)。
なお浴室とは対照的に黒い壁で囲われたキッチンには、ハイカウンターを置いた。調理中にいろいろモノが置けるし、コンセントもあるのでここでノートパソコンを広げたり、ちょっとした作業もできる。 カウンター上には吊り棚があるので、好きなお酒を並べてもいい。カウンター下には炊飯器や電子レンジの収納スペースもある。
真っ白な浴室とは反対に黒で囲われたキッチンスペース。床は、ブラックウォルナットの無垢フローリング。
設備機器と収納扉を新しくしたキッチン。既存の古いキッチンを使いながら、見た目も機能も一新。 /廊下は小さな光源で照度の低い照明器具をあえて細かいピッチで配置して、華やかさを出した。ガラス扉で視線も抜けていく。/洗面室。鏡には、浴室とリビングが映っている。
自分の家をつくることは人生の中でとても特別なイベントだと思う。時間やお金、たくさんのパワーを注ぎ込むものだけに、理想のすみかへ求めるものはどんどん広がっていくだろう。だがそんなたくさんの叶えたい要望の中からなにかひとつだけ「これだけは絶対譲れない」というものを見つけて欲しい。例えば、今回のFさんであれば「リビングとお風呂を広くしたい」ということ。それによって、家のデザインはブレることなく一点に向かって進んでいくことができる。そして住居の既成概念から自由になれば、決まった箱の中でもなんだか面白い、他にはない特別な家になれる可能性は見つけ出せるはずだ。そんな家をお客様と一緒につくっていきたいと思う。
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